採用から組織設計まで 中国HRテック「Moka」、人事業務を担う「AI同僚」を発表
中国発のHR SaaS企業「Moka」は今年5月、AIエージェント製品「採用Eva」「人事Eva」「BP(人材マネジメント)Eva」を発表した。いずれもAIを「同僚」と位置づけて活用するものだ。さらに、自社のHR SaaSサービスを「Moka AI」へと全面的にアップグレードさせた。2015年の創業以来、最大規模の製品戦略の刷新となり、人事ソフトウエアが「受け身で対応するツール」から「主体的に協働する同僚」へと変貌を遂げつつあることを示している。
採用・労務・人材配置を担う3人のAI
今回発表された3つのAIエージェントは、それぞれ採用、人事、人材マネジメントに特化している。
まず採用担当エージェントは、求人内容を理解したうえで候補者の検索、一次審査、面接のスケジュール調整、面接結果のフィードバックや内定通知まで、一連の業務を自動で行う。最大の特徴は、企業ごとの採用基準を学習し続け、選考結果を基に求める人物像を柔軟にアップデートしていく点だ。オンライン面接では、面接官へリアルタイムで追加の質問を提案し、終了後には議事録や評価レポートを自動で作成する。
人事担当は、「人事が設計し、エージェントが実行する」をコンセプトに、勤怠管理、給与計算、シフト作成、入退社手続き、従業員からの問い合わせ対応といった日常的な人事業務を行う。Mokaの共同創業者の李国興CEOは、人事担当のエージェントが人事スタッフの業務の70%から80%を肩代わりできると説明する。
そして人材マネジメント担当は、最も複雑な人材管理や組織の意思決定に対応する。アクセス権限に基づき会議記録や業務文書などのデータを読み取り、従業員のスキル情報をリアルタイムで更新することで、人事部が社員の適性度や離職リスクを早期に把握できるようにする。新たな人材ニーズが生じた際には、組織全体から最適な候補者を自動でリストアップし、部署の枠を超えて適任者を見つけ出す。
これらのAIエージェントの基盤となっているのが「Moka AI Studio」である。専門的なコードの知識やIT部門の支援を必要とせず、普段の言葉で要件を入力でき、数時間で運用を開始できる。標準仕様からカスタマイズして自社専用の仕様へと最適化も可能なほか、サンドボックス環境での検証や履歴復元機能により変更作業を安全に進められる。
HRは「管理」から「組織設計」へ

李CEOは新製品の発表会において、現在のHRが大量の事務作業に追われ、人材戦略や組織設計、従業員との対話といった本質的な業務に十分な時間を割けていない現状を指摘した。この現状こそが、AIエージェントをHR分野で活用する最大の動機であり、人事担当者が「組織を作るプロ」としての仕事に専念できるようにすることが目的だ。
AIが定型業務を引き受けることで、HRの価値は再び「人」や「組織」そのものへと回帰していくと李CEOは考えている。今後のHRの役割は、人との信頼関係を構築するためのコミュニケーションを担う存在と、企業の戦略に基づいて人材配置の妥当性や組織改編の必要性を判断する組織の設計者という、2つの方向に収束していくという。
組織のあり方に関して、李CEOは「AIネイティブ組織」の評価枠組みを提唱し、「AI人材の密度」と「AIによる組織連携の深さ」の掛け算が企業の競争力を左右するとの考えを示した。さらにAIツールの普及で職種の境界が曖昧になり、AIを使いこなして一連の業務を完結できる複合型人材、「スーパー社員」の需要がいっそう高まると予測している。
(36Kr Japan編集部)