中国格安EC「拼多多」、越境EC事業「TEMU」が急成長。1日の流通取引額は2億円超

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中国で共同購入型の格安ECを運営する「拼多多(Pinduoduo)」が、同じく格安を売りとした越境ECアプリ「TEMU」をローンチし、大きな注目を集めている。事業の成長具合は当初の予想通りではないようだ。

複数の情報筋によると、TEMUのGMV(流通取引総額)は現在、1日平均150万ドル(約2億2200万円)。出店業者は3万に迫り、取扱商品は24の大カテゴリーに及び、SKU(最小管理単位)は30〜40万にもなるという。

TEMUの取扱商品カテゴリー(TEMU公式サイトより)

関係者によると、現状のGMVは社内で想定した額をやや下回っているというが、これから「ブラックフライデー」を挟むことを考えると、年末までの成長に関しては比較的楽観視されているという。これまでは年末までのGMVを3〜5億ドル(約440〜740億円)、向こう1年のGMVを30億ドル(約4400億円)に目標設定してきたが、これは中国発ファストファッションEC「SHEIN」の現在のGMVのわずか10分の1の数字だ。SHEINのGMVは今年上半期、前年同期を50%以上上回り160億ドル(約2兆3700億円)を突破。年間GMV300億ドル(約4兆4400億円)という目標を前倒しで達成できそうな勢いだ。

TEMUの成長が予想ほどではなかった理由は多岐にわたる。そのうちの一つは、米国のEC市場がすでにレッドオーシャンであることだ。アマゾンやウォルマート、eBayなど自国の大手企業に加え、中国発のSHEINも米国の消費者の心を掴んでおり、同じく低価格で勝負するTEMUが顧客を獲得するのは決して簡単ではない。

現在、TEMUの顧客獲得経路はインスタグラムが30%、フェイスブックが30%、グーグルが約20%を占め、その他はTiktok、Youtube、アフィリエイト広告サービスなどが合わせて約15%。この比率はほぼSHEINと同じだ。しかしある越境EC業界の関係者によると、今年上半期の米国市場でフェイスブックを通しての顧客獲得費用がSHEINは約35ドル(約5200円)、TEMUはさらにこれを30〜40%上回るという。

関係者によると、TEMUが9月に投じた予算は10億元(約200億円)に上り、向こう1年間の予算は70億元(約1400億円)を超えるという。主にパブリックトラフィック(誰でもアクセスできるサイトやネット媒体)を通じた顧客獲得と、コンテンツ広告(インフルエンサーとの提携など)に用いるが、具体的な投入額は市場の状況を見ながら決めるという。拼多多が今年上半期、マーケティング費用として220億元(約4500億円)以上を使っていることから見れば、TEMUの投入額は決して大規模ではない。

また、現在TEMUに出店する業者数と取り扱い商品のSKU数も、米国の消費者を満足させられる規模ではない。しかし、アップルのアプリストア「App Store(米国)」では、ショッピング系アプリの10月26日時点のランキングでTEMUは5位に食い込んだ。上位4位はアマゾン、SHEIN、ウォルマート、ShopifyのECアプリ「Shop」だ。

App Store(米国)」のショッピング系アプリのランキング

中国「拼多多」の越境ECアプリ「Temu」、米App Storeのショッピングカテゴリで5位に 

36Krの調べでは、TEMUで取引を行うユーザー数は1日あたり約6万人、TEMUのアプリをダウンロードしたユーザー数は約80万人だ。また、新規登録者向けに多くの割引サービスを提供しているため(初回注文時は30%オフ、配送料無料、「0.01ドル(約1.5円)特売コーナー」などのキャンペーン)、現在は30日以内のリピート率が約10%となっている。しかし客単価はこうした割引サービスが足を引っ張り、25ドル(約3700円)となっている。SHEINの75ドル(約1万1000円、4〜6月期)には遠く及ばない。

商品カテゴリーの構成を見ると、TEMUが現在主に取り扱っているのはレディースファッション、キッチン用品、インテリア用品などで、レディースファッションの売上高が全体の45%、キッチン用品やバス用品などの雑貨・小物が35%を占めている。対してSHEINは4〜6月期、レディースファッションの売上高が全体の60%を超えた。

TEMU公式サイト、浙商証券研究所より

あるTEMUの出店業者は、自社商品のTEMUでの販売価格は卸価格にたった1元(約20円)上乗せしただけだと明かした。そのため「商品は飛ぶように売れる」という。しかし、当初からTEMUに出店する多くの業者が「価格優位をいったん失えば受注数は見る間に減る。長期的に低価格を続けて利益を得るのは簡単ではない」と話し、そのうちの複数の業者がTEMUからの撤退も視野に入れて様子見をしている状態だという。

フルフィルメント(受注から配送、アフターサービスまで)に関してはTEMUの流れはSHEINとほぼ同じで、中国国内の倉庫から米国へ商品を発送し、通関手続きを終えるとアメリカ郵政公社(USPS)やDHL、FedExなど米国の業者が配達を担う。配達所要日数は10〜14日だ。フルフィルメントはTEMUが最も重要視するプロセスの一つで、現在抱える700人のスタッフのうち大部分が倉庫業務を担当する。

なお、新規登録時の割引や配送料無料などのサービスにより、TEMUは現時点で取引1件あたり30ドル(約4500円)の赤字を出している状況だ。

新規ユーザー対象のTEMUの割引サービス(TEMU公式サイトより)

TEMUはすでにアフリカ市場への進出も始め、カナダでもアプリのダウンロードができるようになったという。関係者によると、TEMUはSHEINの今年の目標GMV300億ドル(約4兆4400億円)を5年で超える長期計画を立てている。300億ドルはSHEINが14年かけてようやく達成した数字だ。

(翻訳・山下にか)

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