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4月20日に日経×36Kr Japan主催のセミナーを開催、「知られざるブラジル発フィンテックの実力~中南米市場開拓のカギは?」と題して、世界の成長企業の注目を集める中南米消費市場の潜在力と、そこでの商機をつかむカギとなりうる決済関連のフィンテックの実態、ゲーム、SaaS、Eコマース、アプリケーションなどの企業の活用例を紹介した。
中南米やアフリカでグローバル企業の成長を支援するブラジル発のフィンテック企業「EBANX」からアジア太平洋ビジネス開発部のアルベルト・モントゥファー(Alberto Montufar)氏、新興国を中心にゲーム・コンテンツの総合コンサルティングを手掛ける「ルーディムス(LUDiMUS)」からCEO佐藤翔氏、COO古里卓巳氏が登壇、現地の市場動向やZ世代の消費習慣について具体的な事例をもとに解説があった。
中南米市場の急成長を支える金融インフラ・モバイル環境の発展
EBANXのアルベルト氏からは中南米の市場について詳細のレポートとともに、人口6.7億人、GDP約7.3兆ドルの巨大ラテンアメリカ市場において現在進行形で起きている変化について語られた。同地域では、直近7年間でインターネットにアクセスできる人口が2億人増加したことに加え、過去10年で銀行口座の所有割合も39%から73%へとほぼ倍増し、2025年まで毎年30%成長を見込むほどデジタルコマースの成長が著しい。特にブラジルとメキシコは最注目となっている。
ブラジルを例にとると、ここ数年で消費者の決済習慣が劇的に変わっている。クレジットカードやデビットカードはもちろん、APMと言われるキャッシュレス決済やデジタルウォレットなど、様々な決済手段が登場。なかでもブラジル中央銀行が開発した即時決済システムのPIXは非常に画期的な決済ソリューションで、支払者、受取者双方にとって超低コストかつ便利に利用できるため、2020年に運用を開始以降すでにブラジル人口の75%以上が利用するサービスとなっている。このように便利な決済インフラが整備されたことで、例えばモバイルゲームや音楽・動画コンテンツ配信、SaaS、ECといった分野で若者を中心にオンライン消費量が大幅に跳ね上がり、消費市場を牽引している。
国ごとに対応するクロースボーダー決済でグローバル企業の海外進出を支援
しかし、ブラジルにはブラジルの、メキシコにはメキシコの規制や税制、商習慣があり、決して中南米と一括りにすることが出来ない点は依然として課題だ。中南米市場で成功するうえで重要となるのは、各国の商習慣を深く理解し、それに対応したソリューションを持つグローバル・パートナーを見つけ出すことだという。
そこでEBANXは、中南米15カ国に加え、アフリカ地域の3カ国において、クレジットカードから現地のデジタルウォレット、インスタント決済システムまで、さまざまな決済手段をカバーするワンストップソリューションを提供し、デジタル消費の成長を促進、グローバルなデジタル企業と数百万人の消費者を結びつけることに貢献している。
現状として、EBANXのような現地事情に詳しい企業と連携しながら積極的に中南米市場に攻勢をかけるのはアメリカ企業や中韓企業が中心だった。しかし日本企業にとっても事業のチャンスはまだまだ残されているとモントゥファー氏は述べている。EBANXはソニーやアリババ傘下の越境EC「Aliexpress」、Spotifyといったグローバル企業の中南米進出を金融面でサポートするパートナーとして多くの実績を出してきた。同業他社との違いとしては、国ごとに異なる情報やノウハウを持ち合わせていること、様々な課題に対する解決策を提供できること、グローバルトップ企業にサービス提供してきた経験豊かなチームがあることを挙げる。
同社では日本企業の中南米進出サポートにコミットすることを決めており、消費ブランドやゲーム、SaaS企業などと積極的に連携していきたいと、アルベルト氏は力強く宣言した。
若者が熱狂するゲーム・アニメ・エンタメ分野は日本企業にチャンス
では、具体的に中南米市場のどこにチャンスがあるのか。ルーディムスの佐藤氏と古里氏によれば世界の裏側の中南米の若者が日本のゲームやアニメといったコンテンツに熱狂している現実があり、巨大なビジネス機会があるようだ。
ここでもブラジルを例にとると、ゲーム市場は中南米最大となる3,072億円で、人口の74%が何らかのゲームを楽しみ、年齢のボリュームゾーンは20-24歳、低所得者層もゲームを遊んでいる。世界的な潮流と同様にいわゆるバトル系のゲームが人気だが、eスポーツも非常に盛んで、獲得賞金の世界ランキングでは中国・アメリカ・韓国に次ぐ世界第4位となっている。
佐藤氏によれば、本来ゲーム領域は日本にも強みはあるが、最近の中南米での成功事例というと、中国のモバイルゲームや韓国のPCゲームが存在感を放っている。また、あまり知られていない点として、同国で最も人気のあるアニメキャラクターといえば日本アニメの「聖闘士星矢」で、聖闘士星矢のゲームは非常に人気がある。ただし、日本の人気IPを活用したこのゲームの運営は実は中国企業が担っているのだという。日本のアニメや漫画が広く受け入れられ人気のIPも多数存在するが、それを日本企業がビジネスに活用しきれていない現実があるのではないかということだ。
また古里氏によれば、モバイルの普及に伴いSNSをいかに活用するかが今後のビジネスで重要な要素となる。中南米地域ではSNSやネットフォーラムを通じたアニメコミュニティが形成されるケースが非常に多く、現地のオンライン・プラットフォームも多数出現、若者の連帯感を高め、コミュニティの熱狂にさらに火をつけている。それがよく分かる事例として、「ドラゴンボール超」のファン行動をあげた。もともと東映アニメーションは同地域での映画の公開を許可していなかったが、一人の学生がパブリックビューイングでの公開を希望する運動を始めたところ、瞬く間に市長までも巻き込んだ運動へと発展、市長らの交渉によりパブリックビューイングでの公開許可を獲得し、公開日にはなんと15,000人のファンが詰めかけるほど大盛況だったという。
人気IPを抱える日本企業にとっては海賊版の心配もついてまわるが、ブラジル政府は海賊版撲滅キャンペーンを積極的に展開している。実際に海賊版サイト運営者が逮捕されるなど厳しい措置もとられており、市場の正常化に向けた動きも見られる。
このように、日本ではなかなか知ることができないブラジルをはじめとした中南米市場だが、現地の情報を詳しく知ると、金融のデジタル化、デジタルコマースの普及、若者の消費力の向上というように急速に変化・発展していることがよく分かる。もちろん国ごとに異なる政治・経済状況、規制や税制など多くの課題はあるものの、金融や物流、DXなど対応するソリューションも揃ってきている。距離的に近いアジアだけでなく中南米市場にも注目していきたい。
(36Kr Japan編集部)
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