中国車載チップ大手「黒芝麻智能」、香港上場を申請。ボッシュ・テンセント・NIOなど豪華陣が出資

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香港証券取引所が上場審査基準を緩和したことにより、車載チップの開発を手がける「黒芝麻智能(Black Sesame)」がようやく新規株式公開(IPO)の入口にたどり着いた。同社は6月30日に香港証券取引所へ上場申請書を提出した。香港証券取引所は専門的なテック企業の上場審査基準を緩和する上場規則第18C章を新たに設けており、同社は同規則に基づいて申請書を提出した最初の企業となった。

香港証券取引所は上場審査基準を緩和したとはいえ、対象企業に対して一定の形式要件を定めている。収益化できていない企業の形式要件を見ると、時価総額(上場時見込み)は100億香港ドル(約1800億円)以上、直近事業年度の売上高が1億5000万~2億5000万香港ドル(約27億~45億円)の場合に販売費、一般管理費、研究開発費の合計に占める研究開発費の割合は30%以上と定められている。

上場申請書によると、同社の売上高は直近の2022年が1億6540万元(約33億円)、21年は6050万4000元(約12億円)、20年は5302万1000元(約10億円)だった。

黒芝麻智能の3年間の損益 画像:上場申請書

中国製チップを開発する有望スタートアップの同社は、自動車部品の独ボッシュ、IT大手のテンセント、シャオミ、自動車メーカーの東風汽車(Dongfeng Motor)、吉利(Geely)、電気自動車(EV)メーカーの蔚来汽車(NIO)などから出資を受けている。昨年8月のシリーズC+を終えた時点で、調達額は累計6億9500万ドル(約980億円)、企業評価額は22億1800万ドル(約3100億円)に上った。企業評価額は決して低くないが、同業の地平線機器人(Horizon Robotics)の同時期の評価額50億ドル(約7100億円)を大きく下回っていた。

黒芝麻智能は2016年の設立以来、自動運転向けチップの開発に注力してきた。売り上げの大部分は自動運転向けチップおよびソリューションが占め、昨年の売上高では「華山(Huashan)」シリーズのチップ、オペレーティングシステム、ミドルウェア、センシングアルゴリズムなどが86%を占めた。

同社の自動運転向けチップの演算性能は「華山1号 A500」が5〜10TOPS、「華山2号A1000」が58TOPS、華山2号のロースペック版「A1000 L」が16TOPS、ハイスペック版「A1000 Pro」が106TOPSに上る。この製品ラインナップは地平線機器人の「征程(Journey)」シリーズとよく似ているが、黒芝麻智能は量産化において大きく後れを取っている。地平線機器人によると、征程シリーズの出荷量はすでに300万個を超えたという。

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自動運転向けチップの研究開発には大きなコストがかかる。黒芝麻智能の研究開発費は2020~22年にかけて2億5460万元(約50億円)、5億9540万元(約120億円)、7億6410万元(約150億円)と増え、販売費、一般管理費、研究開発費の合計に占める割合はそれぞれ82.3%、78.7%、69.4%だった。このため経常損失が拡大し、20~22年にそれぞれ2億9300万元(約60億円)、7億2200万元(約140億円)、10億5300万元(約210億円)となった。

現在はNVIDIA(エヌビディア)、Mobileye(モービルアイ)、地平線機器人などが市場シェアを握る中、黒芝麻智能の車載SoCは思うほど存在感を発揮できていない。主要製品のA1000とA1000 Lは2022年の出荷量が2万5000個超にとどまった。

黒芝麻智能によると、華山シリーズのチップを搭載した江淮(JAC)、吉利、東風汽車の量産車が年内に相次いで発売される見通しだ。「今年は10万個以上のSoCを供給できる」という。

今年4月には「自動運転向けチップ」から「スマートカー向けチップ」へと事業を拡大したほか、コストパフォーマンスを重視する事業戦略を明確に打ち出した。これに伴って同社は、10台のカメラによるナビゲートオンオートパイロット(NOA)とバレーパーキングアシスト(VPA)の一体型ドメインコントローラを発表しており、同コントローラの部品コストを3000元(約6万円)以下に抑えたとしている。

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(翻訳・大谷晶洋)

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