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ここ数年、新エネルギー産業の活況に伴って、リチウムイオン電池分野で多くの上場企業が生まれたほか、水素エネルギー分野でも企業の資金調達や上場が相次いでいる。
燃料電池を手がける億華通(SinoHytec)は今年1月に香港証券取引所へ上場し、国鴻氫能(SinoSynergy)と中鼎恒盛(GDHS)も新規公開(IPO)を果たした。また、国氫科技(Spic Hydrogen Energy Tech)は昨年、シリーズBで45億元(約900億円)を調達し、企業評価額が130億元(約2600億円)に達している。
最近では「中科富海(Fullcyro)」もシリーズCで8億元(約160億円)を調達した。同社の資金調達は2016年以降で6度目となる。
中国科学院が育成する水素エネルギーのユニコーン企業
2016年に北京市で設立された中科富海は、中国科学院理化技術研究所(IPC)が実質的に支配する国有企業だ。極低温20~2K(ケルビン)のコア技術を有し、大型低温冷却装置の関連事業を手がけ、液体水素、大型ヘリウム冷凍機、水素液化装置、LNG(液化天然ガス)・BOG(ボイルオフガス)ヘリウム抽出装置、希ガス分離精製装置などの先進的な低温機器のほか、水素エネルギー活用システム、高純度ガス、産業ガス、ガスエンジニアリングなどのサービスも提供している。
同社の製品開発はここ数年で大きく進展した。2019年に初の中国製となる冷凍能力[email protected]ヘリウム冷凍機を韓国に輸出、中国初となるキロワットクラスのヘリウム冷凍機内蔵コールドボックスの納品、1日1.5トンの液化水素を生産できる中国初の水素液化装置内蔵コールドボックスの製造に成功した。20年にはLNG工場BOGヘリウム抽出プロジェクトを落札したほか、1日の生産能力1.5トンの水素液化装置の輸出を受注した。
水素エネルギー産業のネックはコスト
水素エネルギーは環境にやさしく高効率で、多様な貯蔵・輸送方法に対応でき、活用シーンが幅広いという特長があり、大きなポテンシャルを秘めたクリーンエネルギーの1つとなっている。
中国は現在、世界最大の水素製造国で、2021年の製造量は3300万トンを超えた。中国水素エネルギー聯盟の予測によると、中国の水素需要は政府が炭素排出ピークアウトを目指す30年に年間3715万トン、カーボンニュートラルを目指す60年に年間1億3000万トン前後に拡大する見込みだ。
水素エネルギー産業は川上の製造、川中の貯蔵・輸送、川下の活用という3つの部分からなる。中国では現在、化石燃料を使った水素製造が主流だが、二酸化炭素排出量やサステナブルの観点から、将来的には電解水からの水素製造が主流になると見られている。
また水素は危険物のため輸送に高い安全性が求められ、貯蔵や輸送が水素エネルギーの発展を阻むボトルネックとなっている。中国の水素供給システムは比較的後れており、貯蔵、輸送、充填など川中のコストが高い状態だ。中科富海は、水素の大規模な貯蔵・輸送に注目し、特に液体水素の製造、貯蔵・輸送、活用に重点を置いている。
川下の活用において、水素はエネルギー密度がリチウムイオン電池よりも高いため、交通分野では一部リチウムイオン電池に取って代わることができ、自動車、船舶、航空機、家庭用蓄電池、化学工業などでの活用が見込まれる。また、水素エネルギーで走る燃料電池自動車(FCV)は、これから産業チェーンが発展していく重要な方向となっている。
水素エネルギー分野は、トヨタに代表される日本の自動車メーカーがリードしてきた。 トヨタは1992年に水素技術の研究開発に着手し、2014年に初の量産型FCVとなる初代「MIRAI」を発売、20年には第2世代を市場に投入した。しかし、FCVの販売台数は伸びていない。エネルギー産業関連のポータルサイト国際能源網(IN-EN.com)によると、22年末時点でMIRAIの世界販売台数は累計2万2000台に満たないという。
水素エネルギーの大規模な活用が進まないのは、コストの高さが大きな要因だ。水素エネルギー産業はまだ発展の初期段階にある。水素は製造、貯蔵、輸送のプロセスが複雑で、研究開発コストが高い上、巨大なインフラを建設する必要があるため、燃料電池のコストが高止まりし、価格面ではリチウムイオン電池に太刀打ちできない。
中国は近年、FCVを水素エネルギー開発の足がかりとして製造、貯蔵・輸送、充填、燃料電池、システムインテグレーションなどの主要な技術と生産工程を確立しており、一部の地域ではFCVの小規模な実証実験を行った。しかし、中国の水素エネルギー産業は複数の先端技術やコア材料において、世界の先進的なレベルには届いていない。
現時点で、世界のFCV市場はまだ規模が小さい。統計によると、2022年の世界販売台数は約1万7900台、うち中国は18.8%に当たる3367台だった。
水素エネルギーを手がける企業は、研究開発に多くの資金を投じているにもかかわらず、受注量が少ないため、ほとんどが採算の取れない状態に陥っている。ここ数年に提出された目論見書を見ても、水素エネルギー関連企業は赤字になっていることが多い。
作者:格隆滙新股(WeChat公式ID:ipopress)
(翻訳・大谷晶洋)
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