BYD、海外メーカー初の軽EV「RACCO」を199万円から 「装備」強みに年内1万台受注目標

中国電気自動車大手の比亜迪(BYD)は7月28日、日本市場向けに開発した初の軽自動車EV「RACCO(ラッコ)」を発表した。海外メーカーが日本独自の軽規格に合わせ、一から設計したEVは初めてとなる。

焦点となった価格は、最も安い「RACCO 200」が214万5000円、中間の「300 Plus」が239万8000円、最上級の「300 Premium」が249万7000円(いずれも税込メーカー希望小売価格)。全モデルがCEV(次世代自動車)補助金15万円の対象で、これを差し引くと実質199万5000円からとなり、200万円を切る。競合の日産「サクラ」と比べ、希望小売価格では30万〜50万円ほど安くした。

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BYDは2026年内に1万台の受注という野心的な目標を掲げた。2023年1月の日本乗用車市場参入から累計販売は間もなく1万台に到達する見通しで、新型軽EVを成長の新たな柱に位置付ける。

狙うのは軽EVではなく、ガソリン車

BYDが価格設定で照準を合わせたのは、日産「サクラ」などの既存の軽EVユーザーではない。ホンダ「N-BOX」が牽引し、国内で最も売れているガソリンの「スーパーハイトワゴン」からの乗り換え客だという。

BYDオートジャパンの東福寺厚樹社長は「ガソリンのスーパーハイトに乗っている人に振り向いてもらう。それがベースの考え方だ」と語った。既存客をほとんど持たないBYDにとって、販売拡大には他社ユーザーの取り込みが欠かせない。だからこそ、最も母数の大きいカテゴリーを正面から狙う必要がある。

200万円台という価格の妥当性を、同社は市場データで裏付ける。日本自動車工業会が今春公表したパッケージ車の使用実態調査で、スーパーハイトワゴンの平均購入価格が「ついに200万円を超えた」(東福寺社長)。2年前の調査では196万円だった。長く使う生活必需品として、多少高くても良いものを選ぶ消費者心理が定着しつつあるとの読みだ。

価格でなく、「装備」で差別化

差別化の柱に据えたのが標準装備の充実である。国産勢の基本グレードはカーナビを備えず、運転席側は手動スライドドアというケースも少なくない。これに対し、RACCOはカーナビを標準装備し、両側を電動スライドドアとした。アダプティブクルーズコントロール(ACC)などの先進運転支援を全グレードの車両に標準装備し、最上級の300プレミアムには360度パノラマ映像で周囲を確認できる「アラウンドビューモニター」も付く。

中国車に詳しいみずほ銀行の湯進上席主任研究員は、最上級グレードにはサクラの最上級よりも60万〜70万円分の装備が上乗せされていると語った。価格ではなく、装備を含めた商品価値で勝負する。

車内の様子

「200」「300」は航続の目安

グレード名の数字は航続距離を示す。最廉価の「RACCO 200」は容量22.4kWhの電池を積み、一充電走行距離は210km。「300 Plus」「300 Premium」は35.8kWhの電池で、軽EVとして最長となる320kmを実現した。

東福寺社長によると、開発は「チャイニーズ軽貨(CK)」というコードネームで進め、本社側には当初から「200キロを200万円で、300キロを300万円で売れる車を作ってほしい」と要望していた。円安や資材高で開発は難航したが、「200キロを200万円で出せる領域で仕上げてもらえた」と振り返る。プラグインハイブリッドや660ccエンジン版を出す考えはなく、電池とEVのコスト優位性で勝負する。

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残価50%の据置ローンで月々1万9300円から

装備に対する割安感を金融面でも補強する。頭金・ボーナス払いなしの5年均等払いの据置型ローン「楽々プラン」では、据置率を50%に設定し、月々1万9300円から利用できるとした。

据置率50%はファイナンス会社のジャックスと協議して実現したもので、リセールバリューが読みにくい軽EVでこの水準を提示できる背景には、リン酸鉄リチウムイオン電池の耐久性への自信があるという。保証は、軽として最長をうたう電池保証に加え、車両保証を6年・15万キロとした。バッテリーメーカーとして創業したBYDの強みを、価格・保証・残価の三方向から訴える設計とした。

年内に1万台受注、販売網は年内100拠点へ

BYD RACCOの販売目標

BYDは、年間約400万台の日本国内乗用車市場のうち軽が約3割(約130万台)を占める市場で、まず2026年内に1万台の受注獲得を目指す。東福寺社長はこの目標を「気合です」と率直に認めつつ「一番おいしいときにたくさん受注を取りたい」と語った。翌年以降は1店舗あたり月20台の受注を前提に、年間1万台の安定販売を描く。

販売網は準備中を含め全国77拠点(正式ショールームは56拠点)で、年末までに約100拠点への拡大を目指す。国産大手に比べ手薄な地方・郊外には、比較的小規模な投資で出店できる「サテライト店」を開設。福岡県久留米市に1号店を開き、今週末に2号店を出す。店舗の多くはボルボやフォルクスワーゲンなど輸入車を扱うディーラーが兼営する。

BYDは価格競争だけに依存せず、装備や保証、金融サービスまで含めた総合的な商品力で軽市場に挑む構えだ。一方で、日本の軽EV市場では補助金制度が実際の購入価格を大きく左右する。希望小売価格では最安水準となったRACCOも、補助金を反映した実質価格では日本メーカーが優位となるケースは少なくない。

この制度をどう受け止め、どのような販売戦略を描くのか。次稿では、BYDの価格戦略と補助金制度への見方を詳しく追う。

BYD、補助金15万円でも日本の「軽EV」に挑む理由

(36Kr Japan編集部)

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