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自動運転トラック技術を開発する「図森未来(TuSimple)」は1月17日、米ナスダック市場に上場廃止を申請すると発表した。1月27日頃には米国証券取引委員会(SEC)への普通株式の登録を抹消する。同社の株価は長期にわたって1ドル(約148円)を割り込んでいたが、この発表を受けて46.33%下落し、1株0.38ドル(約60円)となった。最高値の79.8ドル(約1万2000円)から、時価総額は実に99%以上目減りした。
図森未来は2015年に設立され、中国と米国に拠点を置いて自動運転トラックの開発を進めてきた。米国では自動運転トラックを使った貨物輸送ネットワークを構築し、低コストの輸送サービスを提供した。設立当初は大きな注目を集め、10回の資金調達で総額8億ドル(約1200億円)以上を調達。2021年4月に評価額80億ドル(約1兆1800億円)以上で米国市場に上場し、世界初の自動運転分野の上場企業となる。それからわずか3年足らずで、図森未来は自ら上場廃止する道を選んだ。
これは今の自動運転分野の縮図とも言える。2023年には自動運転トラックを開発する企業の倒産が複数報道された。それら企業に共通するのは、評価額が高い反面、事業の規模を拡大できていないという点だ。
米国事業の拡大が困難
図森未来は上場廃止の理由について、一つには上場後の金利上昇や量的引き締めで、成長中のテック企業に対する投資家の見方が変わり、評価額と流動性が低下したことで株価の大きな変動につながったと説明している。これを受けて、特別委員会では上場廃止が最善策とされたという。
公表されていないもう一つの原因は、長らく事業規模を拡大できなかったことだ。
図森未来は中国と米国で異なる事業を進めてきた。中国では主に、港湾向けに自動運転車で輸送サービスを提供し、米国では高速道路で自動運転車による貨物輸送を手がけた。一時、米国市場は同社の事業の中心だった。
2020年、図森未来は米国全土をカバーする自動運転の貨物輸送ネットワークの構築を試みる。計画では、物流企業や仲介業者、自動車メーカー、サプライヤーなどを連携させて、自動運転トラックを使った貨物輸送を実現するというものだ。
自動運転輸送の成長を支える土台となるのは自動運転トラックだが、図森未来にとってはこれが事業を展開するうえで最大の障壁となった。図森未来はかつて、米商用車メーカーのナビスターに出資を呼びかけ、さらに量産可能な自動運転トラックの共同開発のために1000万ドル(約14億8000万円)を拠出した。しかし2022年12月、図森未来とナビスターは自動運転トラックの開発を中止すると発表した。
米国の図森未来に勤務していた元従業員は、両社の協業はずっと初期段階にとどまっており、何の進展もなかったと語っている。その原因として、米国市場では従来型のトラックも十分に需要が大きく、自動車メーカーは新エネルギートラックを開発する必要性を感じていないと結論づけた。
自動運転トラックの量産ができない同社は、米国で小規模に自動運転輸送サービスを展開するほかなかった。商品のスケールメリットが得られないため、長期にわたって巨額の損失を抱えることとなった。2023年前半には、大規模なリストラを実施し、昨年12月時点で北米チームに残ったスタッフはわずか30人ほどとなった。現在は、米国にある資産の売却を進めているという。
*2024年1月23日のレート(1ドル=約148円)で計算しています。
(翻訳・畠中裕子)
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