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中国ではACGN(アニメ、漫画、ゲーム、小説)など、いわゆる「二次元」の愛好者は「95後」(1995~1999年生まれ)、「00後」(2000年以降生まれ)の若者が中心だ。だが、ACGN分野で活躍する声優の年齢層は30~40歳台とさほど若くはない。二次元文化と共に発展してきた彼らが声優業界をけん引してきたが、業界はいまだに成熟しているとはいえない。
中国では、二次元作品の声優業界と伝統的な映画・ドラマの吹き替え声優業界とがいまだにはっきりと分かれていない。
WEBアニメ「羅小黒戦記」などの代表作がある声優事務所「北斗企鵝(TrioPen Studio)」の共同創業者、藤新氏は「中国ではアニメやゲーム産業がそもそも十分に成長しておらず、いつでも二次元作品にありつけるわけではない。生活のために、映画やドラマの吹き替えをすることも必要になってくる」と明かす。また、映画・ドラマ業界はここ2年ほど不振が続いていることから、二次元作品に関心を寄せる吹き替え声優も多いとみている。
藤氏は日本の声優業界について、ガイドラインが整備されており、次々に新人が現れる成熟した業界だと指摘。それに比べ、中国の二次元作品の声優業界はまだ産業と呼べる段階に達していないとの見方を示した。
産業として発展の先行きやポテンシャルを示すには、少なくとも常に新人が参入するような業界でなければならない。だが、現状を見る限り、知名度のある声優はキャリア10年弱、もしくは10数年や20年のベテランであり、年齢が若く、出演機会が多い声優はごく少ない。
声優のギャラのランク分けや金額の基準も明確ではない。藤氏の取引先の日本企業は、声優のギャラに20~30倍の開きがあることに驚いたという。その背景には、トップクラスの声優に人気が集中し過ぎているため、声優事務所としては極めて高額なギャラを提示することで取捨選択せざるを得ず、また、そのついでにギャラがぐっと安い新人を推薦しているという状況がある。さらに、業界の規模が小さすぎるため、最小限の競争しか行われていない。現在、声優業界には前出の北斗企鵝のほか、「729声工場(729voice)」「声音気球」「上海領声文化伝媒(Shanghai Listen Media Communication)」「北京冠声文化伝媒」など大手が数社存在する。彼らは十数年を共に歩んできた同門の士であり、声優業界ではこうした「ベテラン勢」が幅を利かせ、お互いに融通し合うのが常となっている。
二次元作品の声優文化が中国に入ってきたのは2003年。声優事務所第1号が設立されたのは2014年だった。業界は新しいが、業界内で発言力のあるリーダーの年齢は30代が中心で、資金やファン獲得に関しては明るくない。
2017年頃、アニメやゲーム産業の追い風を受けて、二次元作品の声優業界に資金が続々と流れ込んだ。多くの事務所が数百万元から1000万元(数千万~約1億5000万円)の資金を調達した。だが、投資家はすぐにこの業界が従順ではないことに気づく。業界は今でもコンテンツありきの考え方に甘んじており、制御可能性が低く、アクセス数でインフルエンサーを誕生させる新業態とも相容れない。その後、2度目の資金調達を実施する声優事務所は出てこなかった。
北斗企鵝共同創業者の郝祥海氏は「この業界はハードルが非常に高い。即席のインフルエンサーでは業界のニーズに応えることはできない」と語る。声優は「5年は下積み、7年で一人前」と言われる。「守旧派」が築いた業界基盤と育成モデルから離れ、声優業界を刷新することは不可能なのだ。
二次元作品の声優業界では、コンサルタントや専門経営者を招き、時代の流れに乗ろうという話が出たこともあったという。だが、低年齢化する二次元作品のファン層に詳しいだけでなく、ベテラン勢が死守するこの業界にも精通した適任者はまだ現れていない。
(翻訳・池田晃子)
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