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中国の大手電気自動車(EV)メーカー「BYD(比亜迪)」は2023年1月に日本でも乗用車を販売して以来、これまでにEV3車種を販売してきた。今後の車種展開については「毎年1車種ずつ」を予定していると明かしていたが、この度、次に日本で販売される可能性のある1台が横浜で目撃された。
2023年、BYDは全世界で302万4417台を販売し、EV販売台数においてトップに躍り出た。うち157万4822台がBEV、143万8084台がプラグインハイブリッド車(PHEV)となる。2024年は1〜8月期で前年比29.92%増の232万8449台を販売した。ここ数ヶ月は月間販売台数が30〜35万台を記録していることから、2024年の累計も400万台に迫る勢いとなる。
日本市場においては2015年より電気バスや電動フォークリフトを販売していたが2022年に乗用車も投入することを発表した。その際に発表された日本導入モデルは小型SUV「アット3」、コンパクトカー「ドルフィン」、そしてセダン「シール」の3車種で、それぞれ2023年1月、2023年9月、2024年6月に発売を迎えた。
BYDは発売初年である2023年に1446台を販売し、これまで日本で乗用車を販売してこなかった輸入車メーカーにしては上々な滑り出しを記録した。2024年はアット3のマイナーチェンジに加えてシールも発売しており、販売台数は大幅な伸びを記録している。日本自動車輸入組合(JAIA)の統計によると、2024年1〜8月期で1485台のBYD製乗用車が登録されており、8月末時点ですでに前年の累計を超えている。BYD Auto Japanは主にシールの販売が好調であるからとしており、セダン市場への逆風が吹く中でも8月末までに425台を受注したという。
2024年3月に開催されたアット3 2024年モデルの発表会にて、BYD Auto Japanは「新型車種を毎年1車種以上、継続的に導入」すると明かした。つまりは、シールに次ぐ日本導入第4弾がもうすぐ発表を迎えるということだ。ではいったいどんなクルマが来るのか気になるところだが、その「答え」に筆者は先日、たまたま遭遇した。
2024年9月中旬、神奈川県横浜市に所在する国土交通省関東運輸局神奈川運輸支局の敷地内にて、自動車メーカーの開発用として出される臨時運行許可(通称:仮ナンバー)を装着した真っ白いテストカーを目撃した。2023年11月の広州モーターショー2023で発表した「シーライオン07(中国名:海獅07)」となる。中国では2024年5月10日に発売を迎えて以来、毎月5000台前後、8月末までの累計で約1万7000台を売り上げている最新純電動SUVとなる。
簡単にシーライオン07のスペックを見ていこう。ボディサイズは全長4830 mm x 全幅1925 mm x 全高1620 mm、ホイールベースが2930 mm。日本で乗るにはかなり大きいサイズだが、ドルフィンが仕向地によってボディサイズを若干変えているように、シーライオン07も日本の道路事情に合わせて若干の設計変更がなされる可能性は高い。パワートレインは現時点で純電動のみで、バッテリーは子会社「フィンドリームズ」が製造するリン酸鉄リチウムイオン電池を搭載する。容量71.8 kWhと80.64 kWhの2種類のバッテリーを用意しており、それぞれ中国独自のCLTC方式での航続距離は550 kmと610 km(四輪駆動モデルは550 km)を誇る仕様だ。モータ出力278 hpのベースグレード、308 hpの中間グレード、そして523 hpの最上位四輪駆動グレードの主に3つが中国で選択可能だが、シールを例にとると、日本で展開されるのは308 hpの後輪駆動モデルと523 hpの四輪駆動モデルの2モデルとなるだろう。
話を目撃したテストカーに戻そう。真っ白のシーライオン07にはエンブレムや装飾の一部を隠すための白いテープが貼られているが、独特なヘッドライトとボディ形状が確実にシーライオン07であることをものがたる。中を覗くとハンドルは右側に位置するだけでなく、「左のワイパーレバー、右のウィンカーレバー」というJIS規格に沿った設計になっていることがわかる。これに加え、トランクの下部には「トランクオープナー」とカタカナで記載されたステッカーも貼られていることから、シーライオン07は九分九厘、日本で発売されると言って良いだろう。装着している仮ナンバーも自治体が個人や整備工場などに交付する自治体名入りのものではなく、運輸支局(国土交通省)が自動車メーカーや架装業者に主にテスト用として交付するものとなる。
BYD Auto Japanによれば、シーライオン07が次なる日本導入車種とは断言しないものの、日本導入に向けて様々な車種をテストしている最中ではあるとのこと。シーライオン07のテストカー自体は2024年5月ごろから日本国内で目撃されており、その日本発売にも期待が膨らむ一方だ。
中国本国での価格帯は18.98万元(約389.5万円)から23.98万元(約492.2万円)ととても安価だが、日本でも同じ価格で販売できるわけではない。参考までに、日本で販売されているシールのメーカー希望小売価格は後輪駆動モデルで528万円、四輪駆動モデルで605万円となる。中国で販売されている同じ仕様がそれぞれ21.98万元(約451.1万円)と24.98万元(約512.7万円)となるので、単純計算で80〜90万円ほど高くなる。
シーライオン07の上位2グレードはシールと同じ価格なため、もし日本で発売されるなら価格はシールとほぼ同じ、もしくは僅かに高めに設定されるだろう。日本でシーライオン07がどのような名前で販売されるかも不明なものの、「シールのSUVモデル」として展開することでシールと同等のキャンペーン価格や購入特典も期待できそうだ。なんにせよ、これが2025年に投入する車種であれば何かしらの発表は近い。引き続き続報に期待したいところだ。
(文:中国車研究家 加藤ヒロト)
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