テスラ「モデルY」に対抗!中国シャオミ、初のEV「SU7」に続いて第2弾SUV「YU7」を公開

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乾電池からスマートフォン、テレビ、電動シェーバーまで幅広く手がける家電メーカーの「シャオミ」。2023年の暮れに初のクルマである「SU7」を発表して大きな話題を呼んだが、その約1年後となる2024年12月に第2弾モデルのSUV「YU7」が正式に発表された。

シャオミ SU7はファストバックのスタイリングを取り入れた4ドアセダンで、パワートレインは純電動だ。かねてからシャオミは自動車産業に参入すると噂されていたが、形として身を結ぶまで数年の歳月を要した。世界からの期待を集めて登場したシャオミ初の自動車は2024年3月に販売開始した直後、24時間で約8万9000件の注文を受け付けるほどの人気ぶりを見せた。当初は注文から納車まで最大8か月を要していたこともあったが、生産能力の増強を段階的に実施、1万台以下だった月間生産台数も現在では2万台を突破するなど、引き続きSU7の納車待ち解消に努力している状況だ。シャオミは2024年の納車台数目標としていた10万台を11月に達成し、その後は13万台へ挑戦するとしている。

生産能力がボトルネックとなっている中、シャオミは2024年12月9日に公式ウェイボーで次なるモデル「YU7」の画像をお披露目した。画像は左側に販売中の「SU7」、そして右側に新たに登場した「YU7」を並べており、画像は前と後ろを写す2枚で構成されている。ウェイボーの投稿はボディサイズやパワートレイン、その他装備の詳細に触れておらず、「2025年6~7月」という発売時期しか案内していない。だが、中国の政府機関ウェブサイトではYU7の一部スペックを確認することができた。

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この情報が判明したのは中華人民共和国工業情報化部(通称:工信部)の公式サイトだ。工信部は日本でいうところの経済産業省や総務省の業務を扱う機関となり、中国では自動車メーカーが中国国内で製造する新型モデルを発表・発売する前に、その情報を工信部に届け出る必要がある。工信部への届出情報によると、YU7のボディサイズは全長4999 mm x 全幅1996 mm x 全高1600 mm、ホイールベースが3000 mmとなる模様だ。かねてよりシャオミの第2弾モデルはテスラ モデルYをライバルに据えると噂されていたが、YU7はモデルYよりも若干長くて低い形になる。ホイールベースもモデルYが2890 mmなのに対してYU7は3000 mmで、トヨタ アルファードや韓国「ヒョンデ(現代)」のアイニック5と同じ室内空間の広さが期待できそうだ。

シャオミ YU7

エクステリアデザインはSU7に準拠しており、大きな黒いベゼルを擁する特徴的なヘッドライトも一緒だ。だが、サイドビューはロー&ワイドを感じさせるシルエットを演出しており、筋骨隆々なリアフェンダーはイタリアの自動車メーカー「フェラーリ」が2022年に発表した初のSUV「プロサングエ」を彷彿とさせるほど。リアの左右一体型テールライトも健在で、まさにSU7をそのまま大きくしてSUVにしたという印象だ。ただ、ドアハンドルに関してはSU7は手を入れて中で開けるタイプなのに対し、YU7は格納式ハンドルが必要に応じて出てくるタイプのように見えるなど、細かな違いも存在する。

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工信部によると、タイヤサイズは245/55R19、245/50R20、245/45R21、275/40R21と届け出られており、グレードやオプション装備の違いでホイールとタイヤが変わる形となる。添付された画像からはホイール周りの様子も伺えることができ、2種類のホイールデザインが判明している。

シャオミ YU7のタイヤ

ただ、同じ画像からはブレーキのキャリパー(ディスクを挟み込んで動きを抑える構成部品)がSU7と同じフロント対向4-pot・リア対向2-potのようにも見える。対向キャリパーとはブレーキディスクを前後両側から挟み込むタイプで、「pot」というのは挟み込むピストンの数を表す。SU7ではドイツの自動車メーカー「ポルシェ」のハイパフォーマンスBEV「タイカン」を超えると目標にしていたものの、ブレーキ性能はタイカン(フロント対向10-pot・リア対向6-pot)に遠く及ばない。より重量の増したSUVであるYU7がSU7と同じブレーキ構成とのことで、余裕を持ったブレーキ操作が必要となるだろう。

実際に筆者がSU7を試乗した際もブレーキ性能に関してはイマイチという印象を受けた。キャリパーの性能が足りていないだけでなく、挟み込むディスクローターの直径が小さかったり、ローター面に当たるブレーキパッドの容量も足りていないとのことだ。標準モデルのSU7はイタリアの著名ブレーキメーカー「ブレンボ」が開発したのに対し、2024年11月に正式公開されたハイパフォーマンスモデル「SU7 Ultra」では、日本の「曙ブレーキ工業」が開発したフロント対向6-pot・リア対向4-potキャリパー+セラミックブレーキディスクを採用している。自動車は加速よりも減速することが大切であり、通常のSU7の最上級グレードでは0-100 km/加速 2.78秒の加速力を有することから、シャオミにはもっとブレーキ周りにも気を遣った開発をしてほしいと願う。歴史やカリスマ性、そしてモータースポーツで鍛え上げたパフォーマンスを有するポルシェに対抗するためには、単に「ポルシェ超え」と豪語して加速性能を良くすればいいだけではないのだ。

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YU7のパワートレインに関して、工信部ではフロント308 hp・リア386 hpの合計681 hpと工信部への届出に記載されている。これは通常のSU7における最上級「Max」グレードと同等の数値で、モーターは自社開発の「HyperEngine」シリーズとなる。SU7も出力の異なる複数グレードを展開していることから、YU7も同じ形式になることだろう。肝心のバッテリーに関しても容量は不明なものの、モノ自体はCATL(寧徳時代)の三元系リチウムイオン電池となっている。SU7の下級グレードではBYD製リン酸鉄リチウムイオン電池を採用していたので、YU7のバッテリーに関してもグレード間の相違があると見られる。

シャオミがウェイボーに投稿した内容は約12時間で約1万5000いいね、2300件のコメントが寄せられており、そのほとんどが好意的なものだ。SU7の納期短縮のために奮闘したりと忙しい様子だが、より市場に好評なSUVタイプの新車種を投入すれば、さらなる生産能力の増強が肝となるだろう。SU7の購入層はクルマに疎い若者が多い印象で、表向きのわかりやすいスペック数値や装備で購入を決めているようだ。対してYU7はSUVとなるため、これまでのSU7ではターゲットとなりづらかったファミリー層に多少なりとも届くのではないかと推測する。

(文:中国車研究家 加藤ヒロト)

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