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「Rappi」はソフトバンクがラテンアメリカで設立した新ファンドの最初の投資対象となった。
2019年3月、ソフトバンクはラテンアメリカのテック企業への出資を目的として、50億ドル(約5400億円)の新ファンド「ソフトバンク・イノベーション・ファンド」を設立し、4月末には「Rappi」へ10億ドル(約1100億円)の出資を行った。公式発表はされていないが、地元メディアによるとRappiの評価額は35億ドル(約3800億円)に達するとみられる。
Rappiの存在によって、対ラテンアメリカのベンチャー投資が少なからぬ関心を集めている。同社の資金調達履歴は以下の通り。
・ シードラウンドでは、最先端テクノロジーを活用するソフトウェア企業を中心に投資を行うベンチャーキャピタル(VC)「アンドリーセン・ホロウィッツ」(通称:a16z)が出資に参加し、同社が最初に出資したラテンアメリカ企業となった。
・ 2016年、スタートアップ企業のアクセラレーター「Yコンビネータ」から資金を調達し、プレシリーズAではa16z、米大手VC「セコイア・キャピタル」、ロシア系ファンド「DST Global」が出資した。
・ 2018年9月、シリーズDで2億ドル(約220億円)を調達し、評価額は10億ドル(約1090億円)を超え、ラテンアメリカで2番目のユニコーン企業となった。
はじめの一歩
Rappiは2015年に設立された。
サービス開始当初Rappiは、アプリ上に空白の入力フォームを用意し、ユーザーが必要とするサービスを自由に書き込めるようにした。結果は予想外で、例えば「少なくとも100回以上の犬の散歩代行」との要望があった。
地域の小売店からのアルコールと飲料のデリバリーからスタートして、Rappiは徐々に雑貨の代理購入、食品や医薬品の配達へとサービスを広げ、1つのアプリで雑貨の購入と食品のデリバリーという2つのサービスを提供することで競合相手より1歩抜きん出ることとなった。同様のサービスを提供する他の企業には単一のサービスしかなく、Mercadoniでは雑貨の購入しかできず、Domicilios.comとUber Eatsではフードのデリバリーしか利用できない。
ニーズに応じたデリバリー
中国の「美団点評(MeituanDianping)」であれ、東南アジアの「Gojek」や「Grab」であれ、いわゆる「スーパーアプリ」にとって、需要に応じたデリバリーサービスは必携だ。
ラテンアメリカは公共交通インフラが不足しているため交通渋滞が深刻で、渋滞の解消が都市の重要課題となっている。このため、ラテンアメリカでは自転車とバイクが効率的で高速な交通手段となっている。
配達時間の短縮のため、Rappiの配達員はバイク、自転車あるいは徒歩でデリバリーを行う。効率の良さに加え二輪車による配送は低コストで、Rappiの1回あたりの配送料は約1ドル(約110円)である。
Rappiは2018年9月、ラテンアメリカで先頭を切って電動スクーター、電動キックボードのシェアビジネスを始めたスタートアップ「Grin(後にYellowと合併しGrowに改称)」とパートナーシップを結んだ。これを機に、RappiはGrinのラテンアメリカでの事業拡大をサポートするとともに、Rappiのユーザーはアプリ経由でGrinの電動キックボードを利用できるようになった。
万能お使いアプリ
Rappiはアプリ内部に比較的完全なエコシステムを確立している。
「お使いサービス」はユーザーのあらゆる要求を満たすことができる。荷物や薬のデリバリーは最も一般的なサービスで、それ以外に犬の散歩、子供の送り迎え、ショップで買ったばかりのシャツのサイズ交換、さらにRappiで現金の引き出しもできる。クレジットカードを持っているユーザーならRappiのアプリで引き出したい金額を支払えば、配達員が現金を持って来てくれる。
共同創業者兼CEOのSebastian Mejia氏はブルームバーグのインタビューに対して、「Rappiの取引の大部分はレストランや雑貨店からのデリバリーで、現在2万人の配達員を抱え、5万軒の小売店と提携している」と述べている。
現在、Rappiはコロンビア、メキシコ、ブラジル、アルゼンチン、チリ、ウルグアイ、ペルーの7カ国でサービスを展開しており、ユーザー数は1300万人を超える。最近ではコスタリカでもサービスをローンチし、中米にも業務を拡大している。
金融サービスに賭ける
ラテンアメリカは世界で最も銀行のカバー率が低い地域の一つである。過去40年間、現地の金融グループは各国のマフィアに支配され、成人の半分近くが銀行口座を持っておらず、銀行カードを持っている人も41%に過ぎない。コロンビアでは、ECサイトを利用するユーザーの57%が代引きを利用している。このような状況はRappiがコロンビアで急速に成長する後押しをしている。
Rappiは金融分野にチャンスを見いだしている。
Rappiにとって金融サービスは配送サービスに次ぐ重点サービスである。Sebastian Mejia氏は現地メディアに対し「我々は単なる物流サービス企業ではなく、フィンテックや銀行業など壮大なビジョンを持っている」と語っている。
2018年9月に、Rappiは電子決済サービス「RappiPay」をローンチし、ユーザーは銀行口座がなくても、QRコードをスキャンすることで支払いが可能となり、アプリ経由で送金もでき、友人との共同注文とその支払いもRappiPayによって完結できる。
今年4月にソフトバンクグループから出資を受けた後、Rappiはラテンアメリカ諸国で電子決済、電子バンク、モバイルウォレットサービスを推進している。
5月にはモバイル振込みサービスを開始した。RappiPayでは、ユーザーがクレジットカードやデジタルウォレット「RappiCreditos」のクレジットを利用して、自分の口座から他の銀行に口座を持つユーザーへの振込みが可能となる。このサービスは便利で他行への振込み手数料が無料のため、アプリのダウンロード数は増加している。
(翻訳・普洱)
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