0.1mmまで曲がる“柔らかい触覚”ーー中国発「繊維センサー」、ヒューマノイド・自動車・介護に応用拡大

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近年、人工知能(AI)や5G通信技術などの進展により、データ収集に欠かせないセンサーの需要が世界的に拡大している。その需要を満たすべく、2024年初めに設立された中国の新興企業「矩僑工業(JQ Industries)」は、繊維型フレキシブルセンサーの開発と生産に注力し、ロボットの皮膚センサーやロボットハンド向けの触覚センサーをはじめ、ヘルスケアや自動車分野向けのソリューション、センサー用ソフトウエア、開発ツールなど幅広い製品群を展開している。

従来のフレキシブルセンサーは、ほとんどがフィルムタイプの圧力センサーで、柔軟性や伸縮性、抗干渉性、通気性、耐久性などに限界があった。また、サイズの大きな製品を量産すると、品質のばらつきや良品率の低下が生じるという問題があり、量産化や商用化が進まなかった。

同社はこうした問題に対応するため、第四世代の繊維型フレキシブルセンサーを独自に開発した。導電性やピエゾ抵抗効果を持たせるためのコーティングと基材を完全に繊維化し、ナイロンを芯にピエゾ抵抗効果と導電性を持つ繊維を被せた三層構造とすることで、柔らかくて折り畳める画期的な素材となっている。数十万回に上る車載レベルの衝撃試験に合格したほか、最小曲げ半径が0.1ミリ以下で、長時間の使用後でも元の状態に戻り、伸縮性や引張強度に加え、さまざまな環境に対する抗干渉性、耐久性にも優れている。また、通気性が良く肌に優しい柔らかな素材のため、衣類と同じようにさまざまなシーンで使える。

創業者の張景淇氏は、「当社はとくに人型ロボット向けの皮膚センサーの量産に注力している」と語る。センサーの搭載により、ロボットは周囲をより正確に把握でき、足裏に装着すれば地面の硬さや傾斜を検知して安定した歩行を実現できるという。

矩僑工業のセンサーを装着した人型ロボット

同社は、宇樹科技(Unitree Robotics)の人型ロボット「G1」向けに、ロボットハンド・上半身・足裏用の3種類のセンサー製品を提供。いずれも高い柔軟性と耐久性が特徴だ。特にロボットハンド用手袋は、全面に触覚センサーを配置/指が完全に折り曲げ可能/モーションキャプチャーで遠隔操作/0.01N〜3500kPaの力を検知/といった高性能を備える。触覚AIはNVIDIAのシミュレーション「Isaac Sim」で学習している。

ロボットハンド用の手袋

他にも、介護分野や自動車シートなどで活用されている。介護用のマットレスは、寝ている高齢者にストレスをかけることなく、体圧分布や姿勢、睡眠の質、呼吸状態などをモニタリングし、微弱なシグナルを正確に捉えて床ずれを防ぐほか、脳卒中やベッドからの転落といったリスクのアラート機能もある。

自動車分野では、大手メーカーと共同でセンサー付きシートを開発した。このシートは、乗員の姿勢に合わせたリクライニングの自動調整や、シートにかける圧力でレースゲームの操作もできるといった新しいドライビング体験をもたらし、複数の車種向けに量産化が進んでいる。

介護用製品のイメージ

同社は、自社工場の建設や数千回に上るサンプリング試験、紡績機の改造、染色・仕上げ方法の改良など生産工程や装置のアップグレードを通じて、生産コストを80%下げると同時に品質の安定性を大幅に向上させた。工場はロール・ツー・ロール方式で、生産能力は年間20万枚、良品率は95%を実現した。

今年5月にはプレシリーズAで数千万元(数億円)を調達し、すでに次の資金調達計画を進めているという。

*1元=約21円で計算しています。

(翻訳・大谷晶洋)

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