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自動車メーカー大手からも新エネルギー車(NEV)が相次いで発売されており、車載電池確保の競争がすでに始まっている。
昨年12月、米ゼネラル・モーターズ(GM)が韓国のLG化学とオハイオ州で車載電池の工場を建設することを発表。双方で合わせて23億ドル(約2500億円)投資する。これに先立つ11月、独アウディが中国の電気自動車(EV)製造最大手のBYD(比亜迪)と車載電池の調達について合意に達したことを発表。独BMWは中国のEV用リチウムイオン電池メーカー「寧徳時代(CATL)」、韓国サムスンSDIの2社と総額100億ユーロ(約1兆2000億円)に上るEV用電池の調達契約を結んだと発表している。
車載電池はNEVにおける中核的な部品だ。しかし自動車用の高規格リチウム電池を提供できるサプライヤーは多くはない。そのためサプライヤーのほうが立場が強く、サプライヤーの生産能力が自動車メーカーの生産計画にブレーキをかけることにもなっている。そこで、自動車メーカーは、自社で、もしくは合弁会社を通して電池工場を建設して自社使用分を確保し、車載電池のもたらす収益にも期待をかけるつもりのようだ。
リスクの分散
車載電池サプライヤーのネットワークを拡大する必要があることは自動車メーカーの間で共通認識になりつつある。
それを受け、サプライヤー拡充戦略を取っているのがトヨタと独フォルクスワーゲン(VW)だ。昨年1月、トヨタはパナソニックと車載電池の合弁会社を設立すると発表。また6月にはCATL、BYDとも電池調達で提携すると発表している。VWはCATLと大規模な調達契約を締結することで中国市場における電池の調達を確保したほか、昨年5月には独ニーダーザクセン州に車載電池工場を建設すると発表している。
中国のある車載電池メーカーの関係者によると、自動車メーカーが車載電池の調達先を拡大するのは安定供給を確保する以外に、自社の価格交渉力を高めるためでもあるという。
現在、車載電池の供給源は少数のトップサプライヤーに握られている。自動車メーカーにとって、選択肢は多くない。中国の調査機関「高工産研鋰電研究所(GGII)」によると、2018年の全世界での車載電池出荷容量は106GWhだったが、生産量は上位10社がそのうち81.24%を占めている。
車載用電池が調達できてもまだ安心はできない。高品質の電池は今なお不足しているからだ。「航続距離が500キロメートルの車を作ろうとしたらエネルギー密度の高い電池が必要となるが、国内でこのような電池を製造できるメーカーは多くない」という。前出の関係者によると、CATLやBYDのようなトップメーカー以外には自動車メーカーの選択肢はないという。
入手困難ならば自社で生産を
車載電池の調達問題を解決し、発言権を増すため一部の自動車メーカーは自社で製造に取り組み始めている。
サプライヤーの生産能力問題はすでに自動車メーカーの生産ペースに影響を及ぼしている。仏経済紙レゼコーによると昨年3月、VWはサムスンSDIとLG化学からの供給不足により車載電池の段階で生産が行き詰まった。アウディはベルギーのブリュッセルにあるEV工場が2019年の予定生産台数を従来の5万5800台から4万5200台に下方修正し、電動クーペSUV「e-tron スポーツバック」の発売を延期している。
その後VWは調達計画を修正し、新しいサプライヤーと契約するとともに自社でバッテリーのセルの開発と生産に乗り出した。
自動車メーカーが車載電池の自社製造に乗り出した理由は安定した供給量を確保する以外にもある。車載電池の市場は巨大な「パイ」だからだ。車載電池のコストは完成車の35%を占める。現在車載電池の市場規模はすでに1000億元(約1兆6000億円)を超えている。自動車メーカーのEV化が加速するにしたがい、将来的にはこの市場もさらに大きくなるだろう。
自動車メーカーがこの大きなパイをみすみす見逃すはずがない。完成車部品の利益は5%にも満たないが、車載電池の利益は30%を軽く超える。自動車メーカーは利益の大半をバッテリーサプライヤーに取られている計算だ。
しかし車載電池で利益を上げるのは容易なことではない。前出の車載電池メーカー関係者によると、自動車に使用できるレベルのリチウム電池の研究開発及び生産のハードルは高く、エネルギー密度の高い電池は開発に成功しても量産化までの道のりは非常に長いという。
車載電池の製造には精密な技術が必要とされる。普通の企業なら開発チームを丸ごと買い上げたとしても、自動車に使用できるレベルの電池を量産化するのには2年前後かかる。そのため自動車メーカーのEV化の進展はバッテリーサプライヤーにかかっているのだ。
現時点で車載電池の生産を発表している自動車メーカーが量産を実現できるのは2023年以降になるはずだ。自動車メーカーは車両のEV化がもたらすリチウム電池の需要拡大によるメリットを享受できないかもしれない。自動車メーカーが車載電池の自給自足を実現できるようになる頃には、電池の利益率は現在ほど高くなくなっているはずだからだ。
作者 未来汽車日報 李梓楠
(翻訳・山口幸子)
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