メモリ不足が直撃、中国スマホ市場で値上げ連鎖ーー「起動しない廃スマホ」が4万円超

世界的なメモリ不足を背景に、中国のスマートフォン市場で値上げの動きが広がっている。

今回の値上げの根本にあるのは、メーカー側の供給構造の変化だ。AIサーバー向け需要の高止まりを受けて、メモリメーカーはHBMやDDR5といった収益性の高い製品に生産リソースを優先的に振り分けており、消費者向け電子機器に使用されるDRAMやNANDの供給が縮小している。

中国の調査会社・群智諮詢(Sigmaintell)によると、消費者向け電子機器用メモリの価格は、2025年10~12月期に比べ60%以上も上昇し、NANDに限っては70%を超える値上がりとなった。トレンドフォースなどの予測では、26年1~3月期に従来型DRAMの契約価格が前期比で90~95%上昇、NANDフラッシュも55~60%上昇する見通しで、異例の高騰となっている。

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中国スマホ市場、低価格帯への打撃が深刻

世界最大のスマホ市場・中国では、その影響が特に強く表れている。現地メディアによると、OPPO、vivo、シャオミ、Honorといった主要ブランドはいずれも値上げに踏み切っており、中低価格帯モデルで300~800元(約7000~1万8000円)、一部のハイエンドモデルでは1000~2000元(約2万3000~4万6000円)の値上げとなっている。韓国サムスンも10~30%の値上げを実施し、一部の人気モデルでは上げ幅がさらに大きいという。価格競争の激しい低価格帯市場では特に打撃が深刻で、利益の薄い1000元クラスの機種はほとんど市場から「姿を消しつつある」との情報もある。

一方で、アップルとファーウェイはそれほど大きな動きを見せていない。両社はいずれもサプライチェーンに対する強力な交渉力と高い利益率という強みを持っており、特にチップを自社開発しているファーウェイは、サプライチェーンで一定の主導権を握っている。これにより首尾よく価格転嫁を回避できている。

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中古品の相場も高騰

値上げの波は中古スマホ市場にも押し寄せている。使い古されたスマホでも、内蔵メモリを取り出して再利用できるため、その価値が高まっているのだ。深圳市の電気街・華強北でスマホの買い取りを行う業者によると、2025年10月ごろから市場が一気に過熱し、買い取り価格はすでに以前の3倍前後にまで跳ね上がっているという。

「愛回収(Aihuishou)」や「転転(Zhuanzhuan)」といった大手リユースプラットフォームでも同様の傾向がみられる。大容量メモリを搭載したアンドロイド端末の買い取り価格は、2025年下半期以降で40~60%上昇した。一方、アップルの旧モデルの上昇幅は1割未満にとどまっている。

これまで見向きもされなかった旧型機種が一転して引っ張りだことなり、なかには1日の買い取り台数が十数台から30~40台へと急増した業者もいる。SNSアプリ「小紅書(RED)」では、端末の査定価格をシェアする投稿も増えており、例えば24GB+1TBのREDMAGICゲーミングスマホの場合、本体が故障して起動しない状態でも1900元(約4万4000円)以上の値がついたとの報告もある。

ただし、使用年数が長くなるほどメモリは劣化し、データの安全性も低下する。仮に正常に読み書きできたとしても、残余寿命の面では新品に遠く及ばない点には注意が必要だ。

メモリ価格、一転して急落へ

もっとも、今回の値上げの波は早くも転換点を迎えている。3月27日頃を境に、メモリの現物価格が急落した。32GのDDR5メモリは、米AmazonやNeweggなどのECプラットフォームで最大100ドル(約1万6000円)超の値下がりとなった。中国でも16GB 3200MHzメモリが、昨年12月の約980元(約2万3000円)から3月末には700元(約1万6000円)前後にまで下落、1日に100元(約2300円)も下がるケースもあった。米MicronやSanDiskなどメモリ大手の株価も下落が続いている。

急落の背景には複数の要因が重なった。まず、AIアルゴリズムの技術進化が挙げられる。3月22日に米NVIDIAが圧縮技術「KVTC」を発表、同月26日にはGoogleが「TurboQuant」をそれぞれ公開した。いずれも、精度を維持したままAIモデルのメモリ使用量を最大20分の1に圧縮できるもので、ひっ迫していたメモリ需要が大幅に改善された。

加えて、これまで買いだめしてきた流通業者や投機筋が、値下がりの気配を受けて一斉に売りに転じ、売りの連鎖が生じたことだ。さらに、価格高騰による消費者の購入意欲減退で最終需要が伸び悩み、市場が在庫を消化しきれなくなったことも下落に拍車をかけた。。

アナリストの見方では、生産が安定し需要の過熱が収まるにつれ、メモリ価格はらに下押しされる可能性があるという。

*1ドル=約158円、1元=約23円で計算しています。

(編集・36Kr Japan編集部、翻訳・畠中裕子)

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