「低空経済」の心臓部を狙う——中国新興、電動航空機モーターの製造コストを3分の2に

中国で「低空経済」が政策上の構想から産業化の段階へと移行する中、航空機の心臓部である「推進システム」の開発競争が水面下で進んでいる。

航空機向け電気推進システムを開発するスタートアップ企業「羽嘉動力科技(Yujia Power Technology)」がこのほど、2度にわたる追加のエンジェルラウンドで合わせて数千万元(数億円超)を調達した。出資には益華投資(Yihua Investment)や元禾控股(Oriza Holdings)、常州市政府系ファンドの常高新などが参加。昨年7月に実施したエンジェルラウンドも含め、調達額がこの1年ほどで1億元(約23億円)近くに上った。資金は主に技術開発や生産ラインの拡大に充てられる。

製造コスト、従来手法の3分の2以下に

2024年2月に設立された羽嘉動力は、中・大型の電動航空機や特殊機体向けに、軽量で信頼性と性能の高い推進システムを供給する。創業者の劉業氏は、南京航空航天大学で学士〜博士の学位を取得した。企業としては設立2年だが、関連する技術開発には2017年から取り組んできた。

劉氏は創業のきっかけについて、この2年間に「低空経済」の概念が広がる中、推進システムに対するニーズが急増したことでサプライチェーンの川上部門が活況となっており、市場が拡大する可能性が高いと判断したと説明する。

航空機向け電気推進システムは、コストを抑えつつ軽量化と信頼性の向上をどのように実現するかが課題となっている。モーターは製造コストの40~60%を原材料費が占め、うち耐熱合金とチタン合金の割合が計60%を超えているという。

同社は設立当初から、貴金属やコストがかかる複雑な製造手法の採用を極力避け、顧客が求める性能を最もシンプルかつ直接的な方法で実現するという2つの原則を貫いてきた。今では製造技術・製品設計の改善や原材料コストの最適化を通じて、製造コストを従来手法の3分の2以下に抑えられるという。

軽量化に向けては、トポロジー最適化や熱管理、冗長設計などの技術を高めた。モーターは一部が故障しても安全に動き続けるフェイルセーフ機能を備え、航空機搭載レベルの安全基準を満たす。

今年、航空機メーカー約10社と提携

製品は推進システムと発電システムの大きく2つに分かれ、12~500キロワット(kW)の航空機向け電気推進モーターとコントローラー、25kW~1メガワット(MW)の航空機向け高出力・高速発電機とコントローラーを展開している。推進システムは出力に応じて全空冷式と油冷式の2種類あり、顧客は一体型か分離型を選べる。

500kWクラスの航空機向け高速発電機

主要顧客は、低空モビリティ分野の電動垂直離着陸機(eVTOL)メーカーのほか、高原や極寒地など特殊な環境でプロジェクトを手がける企業だ。今年に入り、航空機メーカー約10社と提携した。

需要の拡大は受注に表れている。劉氏は「昨年は多くの顧客が部品の製造段階だったが、今年はほぼ全社が初号機の製造に入り、初飛行を準備する企業も出てきた」と話す。主要顧客の開発が順調に進み、今年の受注は4〜6倍に増える見通しだという。

今年1月、江蘇省常州市の産業パーク・錦程科創園に入居し、受注対応のために生産ラインの建設を急いでいる。常州工場の生産額が年間3億元(約70億円)に達する見込みで、将来的にはさらに生産能力を引き上げ、推進システムを年1000セット生産する目標を掲げている。

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市場は拡大しつつあるがまだ初期段階

受注が順調に増えても、劉氏は冷静だ。「技術面では必要な水準をほぼ満たしたが、安全性、信頼性、耐空性などすべての要件を満たす製品にはまだ時間がかかる」と語る。同社は今後も推進システムの開発に集中し、性能・信頼性・コストの最適なバランスを目指す。

国際航空運送協会(IATA)など複数の調査機関によると、世界の商用航空機向け電気システム市場規模は、2025年の約147億ドル(約2兆3000億円)から30年には208億ドル(約3兆3000億円)へと拡大する見込みだ。中国市場の年平均成長率は世界平均を上回り、8.5%に達すると予測されている。

*1元=約23円、1ドル=約159円で計算しています。

(翻訳・大谷晶洋)

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