中国ペットテック、「話せない患者」をAIが診る 世界最軽量のスマート首輪も

中国のペットテックスタートアップ「綺算法」がこのほど、啓賦資本(QF Capital)と聚恒創投(Juheng Investment)から数千万元(数億円)を調達した。資金は主に、製品の改良、AIモデルの性能向上および市場拡大に充てられる。

綺算法は2022年7月に設立され、ペットのヘルスケア向け大規模言語モデル(LLM)の開発・活用に取り組んできた。中国トップクラスのAI企業「智譜AI(Zhipu AI)」の開発者支援プロジェクト「Z計画」の一員として、智譜AIの医療AIモデルをベースに、ペット医療に特化したシステムを構築する。

数千万件のカルテで学習、診断根拠まで示すペット特化AI

ペット医療の分野では長年、体系的なエビデンスデータの不足や、ペットが自ら症状を訴えられないことなどが課題となってきた。

綺算法は、数千万件にのぼるペットのカルテ、医用画像および行動データに基づいて、AIモデルの訓練を実施。その結果、同社のAIモデルは、ペットの品種による差異や症状の現れかたに応じた診療ロジックを、汎用LLMよりも深く理解できるようになった。診断結果の出力だけでなく、診断の根拠やリスク、意思決定の道筋の提示も可能だ。

また、同社は「クラウド上のAIモデル」と「エッジ側のNPU(A処理専用のプロセッサー)」を組み合わせたソフト・ハードウエア一体型のソリューションを採用。ペット病院やウェアラブルデバイス、そしてペットと暮らす家庭にも、AIの機能を浸透させていこうとしている。

同社のAIアシスト問診システムは、すでにペット病院の獣医師向けに無料公開されており、サービス提供回数は延べ100万回を突破。提携病院は200カ所を超え、登録医師は約3000人、1日当たりのアクティブユーザーは5000人に迫る。

獣医師はAI問診モデルを利用することで診察効率を高めることができるうえ、利用中に生成されたデータはモデルの訓練用に継続的にフィードバックされる。ユーザー(飼い主など)への問診が終わると、インターネット病院の資格に基づいて、プラットフォームが医薬品の推薦や転院先の紹介などを行う。これにより、「問診ー診療ー投薬ーデータ還流」のサイクルが形成される。

世界最軽量のスマート首輪で市場拡大

ペット、とくに飼い犬のヘルスケアに特化したデバイスも打ち出している。スマート首輪「帕奇寵AI智能項圏」は、すでにバージョン3.0まで進化。重さはわずか19グラムで、世界最軽量のペット用AIウェアラブルデバイスをうたっており、すでに累計2万個近くを売り上げている。ペットの位置、姿勢、運動、食事、睡眠などの自動モニタリングが可能なため、特別な操作をしなくても基本的な健康データを取得することができる。

「帕奇寵」アプリ(ペットの運動、食事などを自動モニタリング)

このほか、AI給餌機の販売予約はすでに1000台を達成、ペットの見守り用機器「AI ICU」なども30カ所以上のペット病院に導入されている。また、スマホ大手OPPOと提携し、API連携を生かして提供する「AIペット壁紙機能」は、利用者が数十万人にのぼる。

AI給餌機

創業者の陳立氏は、競合他社の多くは単一機能の提供にとどまっていると指摘。綺算法は、データ収集から健康分析、診療推奨、医療データの還流までを手がけ、高い技術障壁を築いていく方針だ。次のステップとしては、ペット業界向けのQ&A検索エンジンを開発し、ペットのヘルスケア分野のインフラとなるプラットフォームを目指す計画だという。

*1元=約23円で計算しています。

(翻訳・田村広子)

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