バイトダンスの人気AI「豆包」、初めて課金に踏み切る——“中国AI“収益化の試金石に
TikTokで知られる中国テック大手・バイトダンス(字節跳動)の開発した人工知能(AI)アシスタント「豆包(Doubao)」が間もなく、有料のサブスクリプションサービスを開始するというニュースが注目されている。
米AppleのApp Storeによると、豆包はベーシック版、スタンダード版、強化版、プロ版という4つのプランをそれぞれ無料、68元(約1600円)、200元(約4600円)、500元(約1万2000円)の月額料金で展開する予定だ。豆包は公式に、引き続き無料サービスを提供しながら、さまざまなユーザーのニーズに応えるため、さらに付加価値の高いコンテンツの提供を検討すると説明した。
豆包は中国のAIサービスのなかで最も人気があり、収益化を目指した今回の動向に注目があつまっている。AIランキングサイト・AICPBによると、豆包の月間アクティブユーザー数は2026年4月時点で約3億3600万人に上り、米OpenAIの「ChatGPT」に迫る世界第2位だった。
ChatGPTや米Anthropicの「Claude」といった海外のAIサービスが早くからサブスクモデルを導入したのに対し、中国では長らく無料提供が主流で、補助金やトラフィックを使ったユーザー争奪戦が繰り広げられてきた。そのため、人気を誇る豆包が中国のAIサービスとして初めて有料プランを導入すれば、中国のAIアプリによる収益化の試金石と見なされるだろう。
関係者によると、豆包は今年6月下旬に一部の有料サービスをリリースするという。順調なら今年7~9月に電子商取引(EC)機能との連携を進め、クーポンなどの割引を活用してECサイト・抖音商城(Douyin Mall)への誘導を図る。バイトダンスは長期的な視点で収益化に取り組む方針で、当面は有料サービスの利用率を主要な評価指標にしないという。
米ブルームバーグは今年5月、バイトダンスがAI開発に最大700億ドル(約11兆2000億円)の投資を検討していると報じた。それ以前に香港のSouth China Morning Postも、同社がAIインフラ整備の予算を1600億元(約3兆7000億円)から2000億元(約4兆6000億円)に引き上げると伝えていた。世界的にAIをめぐる競争が激しくなる中、「いかに稼ぐか」がAI開発企業にとって共通の課題となっている。
もっとも、サブスクモデルが収益化のゴールとなるわけではない。中国のユーザーはAIサービスに対するロイヤルティが高くなく、中国メディア・晩点(LatePost)によると、豆包ユーザー1人当たりの利用時間は1日約10分にとどまる。技術的な参入障壁がまだ完全に形成されておらず、競合他社が無料サービスを提供している状況で、サブスクモデルの導入はユーザー流出につながるリスクがある。OpenAIのサム・アルトマンCEOも、ChatGPTで月額200ドルのProプランが依然として赤字のままだと素直に認めているとおり、AI業界は「料金が高ければユーザーが減り、安ければコストを賄えない」というジレンマに陥っている。
テック大手は模索を重ねた結果、企業向けサービスを中心に収益化を目指す方向へと徐々にシフトしている。API連携を通じてAIサービスを提供し、利用回数に応じて課金するMaaS(Model as a Service)モデルだ。クラウドコンピューティングサービスを手がけるIT大手にとって、MaaSは収益を増やせるだけでなく、クラウド事業の成長にもつながる可能性がある。
バイトダンスはこの分野で特に急成長を遂げている。調査会社IDCのデータによると、中国企業が手がけるパブリッククラウドのAIモデル利用回数は、2025年に前年比16倍増となり、その約半数がバイトダンス傘下の火山引擎プラットフォーム経由だった。同プラットフォームの市場シェアは中国でトップの49.5%となっている。
また、AIサービスとEC機能を組み合わせたビジネスモデルは、バイトダンスにとって次の切り札になる可能性がある。中国EC大手アリババグループが大規模言語モデル(LLM)「通義千問(Qwen)」をECサイト淘宝(タオバオ)に導入したのに続き、豆包もすでに抖音商城との連携を開始している。ユーザーは2025年から豆包との対話を通じておすすめ商品や商品購入ページのリンクが分かるようになり、今年に入ってから、AIによるおすすめ商品のクリック率と商品説明ページへの遷移率は継続的に上昇しているという。
ECサイト抖音商城と連携できる豆包が目指しているのは、有料のAIアプリではなく、AIやコンテンツ、ECがつながるエコシステムの新しい入口になることかもしれない。
*1元=約23円、1ドル=約160円で計算しています。
(翻訳・大谷晶洋)