3時間3600円、中国のヒューマノイドが「家政婦」としてやってくる⋯「期待外れ」とツッコまれても送り込む理由
今や、多くの人型ロボット(ヒューマノイド)が実際の工場で箱運搬やねじ締めの作業を担当するようになった。そんななか、中国のユニコーン企業「自変量机器人(X Square Robot)」は、あえて最も難易度が高いとされる家庭内の作業に着目した。
同社は今年に入り、オンライン生活サービスプラットフォーム「58到家(58 Home)」と提携して、3時間149元(約3600円)のロボット清掃サービスを打ち出した。このサービスを申し込むと、清掃スタッフだけでなく、ロボットとエンジニアも一緒にやってくる。机の上の整理や靴をしまうといった簡単な業務をロボットが引き受け、メインの作業はこれまでのように人間が担当する。
とはいっても、現時点でのロボットの働きぶりを見る限り、「家政婦」と呼べるレベルにはまだ程遠い。
多くのユーザーがサービスを利用した感想をSNSに投稿しており、「実際に試してみると、期待外れだった」との声が相次いでいる。例えば、ロボットは玄関に入るとしばらく立ったまま。机の上を片付けるときは簡単な動作ひとつに1、2分考える。靴をしまうにも、靴の種類は認識できるものの、シューズボックスの場所が見つけられない。人なら数分で終わる作業も、ロボットは30分ほど手こずることもある。結局、細かい清掃や最終的なフォローは、やはり人間がやるしかない。
こうした評価は決して意外なものではない。
家庭は人型ロボットの実用化が最も難しい環境とされてきた。工場や倉庫など標準化された環境とは異なり、室内のレイアウトや日当たり、物の配置や生活習慣などは家庭によってさまざまだ。ロボットが担う作業も書棚の整理からおもちゃの片づけまで幅広く、ペットへの対応など突発的なことも多い。
ロボットにとって最も学習しづらいのは、まさにこうした複雑かつイレギュラーの頻発するシーンだ。だからこそ、自変量机器人は清掃サービスによる収益ではなく、ロボットを実際の家庭に投入して得られるデータに価値を見いだしているのだろう。

難易度が高い家庭内の作業に着目した自変量机器人
今のロボットにとって最大の任務は、働くことではなく「働き方を学ぶこと」だ。
しかしロボットに働き方を学ばせるといっても、大規模言語モデルをトレーニングするようにインターネット上の知識をそのまま学習させるわけにはいかない。実際に働きながら試行錯誤を繰り返して学習する必要がある。あらゆる失敗や判断ミス、予想外のトラブル、すべてが重要な学習データになる。
今、業界にとって最大のボトルネックとなっているのが、まさにこのデータ不足だ。データ収集についてはすでに新たな産業チェーンが形成されつつある。EC大手の京東集団(JDドットコム)は今年、エンボディドAI用の大型データ収集センターの建設を発表した。すでに同様の施設は国内に60カ所以上あるという。ロボットを遠隔操作したり、ヘッドマウントディスプレイを装着して動作を実演するだけでなく、さらには自宅で皿を洗い、衣類を畳んだりしてロボットに学習データを提供する人もますます増えている。
自変量机器人が選んだのは、よりダイレクトな方法、つまりロボットを実際の家庭で働かせることだった。149元(約3600円)の家事サービスは、ロボット導入のハードルを極めて低くし、実環境のデータ収集をするための仕組みと言える。ユーザーはロボットに作業してもらうという新鮮な体験ができ、企業側は極めて貴重な物理的インタラクションデータを手に入れられる。
同時に、低コストのデータソリューションによって学習効率の向上を図るべく、データ収集と学習のフレームワーク「XRZero-GO」をオープンソースで公開した。公表されたデータによると、実機を使った少量のリアルデータと大量の高品質なシミュレーションデータを組み合わせることで、学習コストは従来の20分の1にまで低減される見込みだという。
ロボットを使った清掃サービスとXRZero-GOをあわせて見ると、自変量机器人の狙いが見えてくる。ロボットの学習コストを抑えつつ、ロボットが現実世界に触れる機会を広げようとしているのだ。
エンボディドAI業界では、リアルな家庭でのデータをより多く確保できた企業ほど、汎用性の高いロボットを実現できるチャンスが広がる。そう考えると、今回の試みは、家事サービスの商用化に向けた実証実験というより、ロボットが真に現実世界を理解するための「実地研修」と言うべきなのだろう。
*1元=約24円で計算しています。
文:金角財経(WeChat公式ID:F-Jinjiao)、Chester
(編集・翻訳・36Kr Japan編集部)