消費電力3割・コスト5〜7割 中国新興、完全国産の航空電子システムで欧米大手に挑む
世界の航空電子システム市場ではこれまで、米ハネウェルやコリンズ・エアロスペース、GEエアロスペース、仏タレスといった欧米大手がシェアの大半を握ってきた。
一方、中国では民間航空機や電動垂直離着陸機(eVTOL)など新たな航空産業が台頭するのに伴い、サプライチェーンの安全性を確保しつつ商業化を実現するうえで、完全国産の航空電子システムが欠かせない要素となっている。
こうした背景のもと、設立4年足らずの「雲際航電(Ynuji Avionic Systems)」が完全自社開発の航空電子システムを武器に、欧米大手のシェアに食い込もうとしている。
同社は2025年末に実施したエンジェルラウンドに続き、このほどプレシリーズAとその追加ラウンドで計数千万元(数億円)を調達した。出資者は、天津市海河産業基金や北京亦荘新城実業、厚天資本など。資金は主に、技術開発、主力製品の耐空証明取得、生産能力の拡大に充てられる。
創業者の李貝氏は、同社の資金調達ペースの速さは、単に低空経済ブームによるものではないと強調。航空電子システムは10年単位の投資が必要な長期事業であり、「実際の成果物を出さなければ、投資家は動かない」と述べた。
完全国産の総合航空電子システムを目指して
雲際航電は設立当初から、完全国産の総合航空電子システムの開発・統合に注力してきた。中心メンバーは中国民航大学および瀋陽航空航天大学の出身で、各大学の研究成果を基盤に事業を推進している。
現在は「YJ-500E」「YJ-1000E」「YJ-3000E」と3種類の総合航空電子システムを打ち出しており、軽スポーツ機や一般小型機、19席以下の旅客機のほか、固定翼機やヘリコプター、eVTOLなどに対応する。ミドルレンジのYJ-500Eは、すでに各種航空機で実機搭載テストを終えており、2026年下半期にも最初の耐空証明を取得し、小規模納入を開始できる見通しだ。
事業化を進めるため、すでに複数の国家プロジェクトと戦略的パートナーシップを結んでおり、国家プロジェクトの民間機でシェア8割を目指す。李氏は、航空電子システムの開発には巨額の資金が必要となるため、標準化を進め、航空機メーカーと深い連携関係を築かなければならないと指摘する。サプライチェーンシステムの中で安定的な地位を確立できれば、継続的なキャッシュフローを確保できる上、業界標準の策定でも主導権を握ることができる。
強みは低消費電力と低コスト
中国政府が低空経済を政策として推進する中、eVTOLなどの新型航空機が急増しており、国産の航空電子システム市場も拡大している。航空電子システムはナビゲーション、飛行制御、通信など8つのサブシステムで構成されるが、雲際航電はすでに全てを自社開発。部品の90%を国内調達することで、全体のコストを海外の競合製品の50〜70%に抑えているという。
コスト面だけでなく、消費電力の低さも強みとしている。バッテリー容量が限られる中・小型の電動航空機向けに、業界で主流のCPU+GPUアーキテクチャではなく、MCUチップを中核とする計算プラットフォームを採用した。MCUチップを内蔵メモリチップと背中合わせに積層してパッケージングすることで、チップ8個を1パックに集約し、消費電力を集積前の10%にまで下げたという。こうした取り組みにより、消費電力は同種の競合製品の約30%に抑えられているとしている。また、このソリューションは熱管理を最適化できる上、基盤ソフトウエアとの適合性でも他社の追随を許さない。
2026年は小規模納入が始まる重要な1年であり、売上高は2000万元(約4億8000万円)前後を見込んでいる。今後10年間は引き続き研究開発に資金を投じ、中国の航空産業で重要な役割を担えるよう努め、将来的には「中国のハネウェル」を目指す方針だという。
*1元=約24円で計算しています。
(翻訳・田村広子)