中国で「中性原子」量子計算が加速、2310量子ビット実現 商用機の受注も

中性原子を用いた量子計算に注力する「原子矩陣(MatriQ)」がこのほど、シリーズAの追加ラウンドで数億元(数十億円)を調達した。雲鋒基金(YF Capital)や三七互娯(37 Interactive Entertainment)、普華資本(Puhua Capital)、上海半導体産投(SSEMF)などが出資に参加したほか、既存株主の民銀国際(Minyin International)も追加出資した。

同社は2025年下半期に初の資金調達を実施してから、1年足らずの間に4回の資金調達を完了、調達額は累計で10億元(約230億円)近くに達している。

原子矩陣は2025年に設立され、本社を浙江省杭州市に置く。中性原子を用いた量子計算ソリューションに注力しており、コアチームには独マックス・プランク研究所や英インペリアル・カレッジ・ロンドン、英ケンブリッジ大学といった一流機関や名門校の出身者が集まっている。

目下、量子計算には超電導、イオントラップ、光量子、中性原子など複数の方式が存在する。中性原子方式は、レーザーで作った「光ピンセット」で原子を捕捉し、制御する手法だ。量子ビットの数を増やしやすく、量子状態を長時間にわたって維持できるほか、超電導量子コンピューターのような極低温環境を必要としないため、大規模な量子計算を実現する有望技術と見なされている。

原子矩陣は、最大2310個もの欠陥のない物理量子ビットを配列し、安定して動作させることに成功している。同社は2024年に300物理量子ビットを備えた量子コンピューターのプロトタイプを完成させ、25年には欠陥のない1000ビットの配列を実現。現在は、量子ビット数を増やすことよりも、システムの安定性、メンテナンス性、動作の一貫性を高めることに重点を置いた開発を進めている。

原子矩陣が開発した中性原子方式の量子コンピューター

同社のもう一つの中核技術は、量子ビットの「保持」と「もつれ」を分離する構造だ。量子ビットを保持するエリアと、2量子ビットのもつれ状態を作るゲート操作のエリアを分離し、可動式の光ピンセットを使って原子を異なるエリアに配置することで、目的としていない操作による誤差を抑えるとともに、量子エラー訂正のための基盤を整える。

同社のシステムはルビジウム87原子を使用しており、1量子ビットゲートの忠実度は99.9%以上、2量子ビットゲートの忠実度は99.2%以上に達し、量子状態の準備と測定の正しさを示すSPAM忠実度も99.7%を超える。

原子矩陣は量子ビット数を拡大することに加え、技術の実用化や商用化に重点を置いて開発を進めている。上海で開催された2026年世界人工知能大会(WAIC)では、独自開発の大規模な中性原子方式量子コンピューターを公開。システムに真空や光学、観測・制御、放熱などのモジュールを統合し、これまでの量子実験装置が抱えていた設備の分散や導入・メンテナンスの複雑さといった課題の解消を目指している。さらに、同社初の商用量子コンピューターもすでに技術仕様が固まり、顧客からの受注を獲得しているという。

また、量子計算と従来型のスーパーコンピューターを連携させる取り組みも進んでいる。WAICで初公開された量子・スパコン混合演算装置「Shanghai Cube Pro」の開発には同社も参画し、量子計算とAI向け計算リソースを組み合わせる新たな方法を模索している。

原子矩陣は今回の資金調達を受け、引き続き量子コンピューターの実用化や量子エラー訂正技術の開発に注力するとともに、量子計算クラウドプラットフォームの構築を目指す考えだ。

計画によると、2026~27年に3000個の物理量子ビットの連続補充と、30個以上の論理量子ビットの実現に取り組む。27~28年には物理量子ビットを8000~1万個に、論理量子ビットを100個以上に引き上げ、高速の量子エラー訂正技術やフォールトトレラント量子計算の実現を進めるという。

*1元=約23円で計算しています。

(翻訳・畠中裕子)

日本企業のDXを促進するプラットフォーム「CONNECTO」
無料コンテンツ公開中

最新記事