車輪で動く家庭用ヒューマノイド、月額7万円でリース 中国新興が240億円調達
家庭用の車輪型ヒューマノイドを手掛ける中国スタートアップ「未来不遠(Futuring Robot)」はこのほど、プレシリーズAで約10億元(約240億円)を調達し、同分野の調達としては最高額を記録したという。源来資本(FountainBridge Capital)や聯新資本(New Alliance Capital)、博裕資本(Boyu Capital)といった既存株主が出資したほか、大手IT企業や匯川産投(Inovance Investment)、国方創投、徳寧資本(Dening Capital)、日用品大手の納愛斯(Nice Group)など10社近くが加わった。
創業者の張翼氏はオンライン教育サービス「掌門一対一」を立ち上げた経歴を持つ。2022年にロボット分野に参入し、3年間は主に個人資産から累計1億元(約24億円)以上を投入してきた。
未来不遠は設立当初から家庭向けの汎用ロボットを開発する道を選んだ。張氏は、産業現場に比べ、家庭には研究室や工場で再現しきれない複雑な状況が多く存在し、ロボットが周囲環境とやり取りするリアルなデータを収集する重要な場になると考えたからだ。
4年にわたる開発を通じて改良を重ね、製品は16世代にまでアップデートされた。家庭環境で求められる安全性と安定性を考慮し、二足歩行ではなく、転倒や衝突のリスクを抑えられる車輪付きのシャーシと2本のロボットアームを採用した。汎用的なタスクをこなせるように7自由度のロボットアームを搭載している。
同社のロボットはすでに約500世帯の家庭で実証実験が進められているという。主な利用シーンは3つ。まず、子どもに付き添い、お絵かきの指導や絵本の読み聞かせ、英会話練習をする役割。次に、おもちゃの片付けやスリッパを揃えるなど、物を掴んだり運んだりする簡単な家事。そして猫砂の清掃や餌やり、遊び相手になるなどペットの世話だ。
製品は依然として改良が続けられているため、現在は主に月額3000元(約7万円)のリース方式をとっている。昨年までは頻繁に訪問してメンテナンスする必要があったが、現在は1~2カ月の連続利用が可能になった。信頼性をさらに向上させてから、順次買い切り型へ移行する計画だ。

市場に出回るAIロボットの多くが数十万元(数百万円)するのに対し、未来不遠は完成機の製造コストを数万元(数十万円)レベルに設定している。そのため同社は、モーター・関節・関節トルクセンサーなどの主要部品を自社開発するとともに、社外の汎用部品を大量に採用、低コスト部品の精度不足はアルゴリズムや運動制御により補った。現在、完成機のコストは2万~3万元(約50万~70万円)程度まで下がっている。
ソフトウェアでは、主流のVLA(Vision-Language-Action)モデルをそのまま採用せず、独自に改良した「AVLA」というアーキテクチャを開発した。知覚・理解・計画・行動を一気通貫で処理するエンドツーエンド(E2E)構造で、従来の階層型制御の制約を超えることを狙う。
具体的には、複雑なタスクを数百もの短いシーケンスに細分化し、掴む、細かな動作、接触作業、経路計画などをそれぞれ担う「専門モデル」を用意する。環境やタスクに応じて、スケジューリングシステムが必要なモデルを組み合わせて実行させる。
ここに世界モデルの予測能力を組み合わせる。ロボットがタスクを実行する前に、まず世界モデルが可能な行動経路を複数生成し、経路ごとの成功率を予測する。リスクが低いと判断された場合に、AVLAが具体的な動作を実行する。簡単に言えば、世界モデルが予測と計画を担い、AVLAが実行を担うという役割分担だ。
このアプローチは今年、「Self-Evolving WAM(自己進化世界動作モデル)」へと進化した。ロボットが実際の家庭でタスクを実行する際、動作を実行するだけでなく、その予測結果や実際の実行結果、失敗例などを学習データとして蓄積し、その後のモデル更新に活用する。導入家庭や実行タスクが増えれば、「実環境での運用→データ蓄積→モデル更新→実行能力の向上」というデータのループが構築される見込みがある。

同社によると、これまでに100を超える家庭シーンでAVLAを訓練し、家庭内タスクの90%以上をロボットのスキル・動作ライブラリでカバーできるようになった。実際の家庭からは1000万枚以上の有効な画像を収集し、アノテーションやアライメント、エンコードを10TB分完了しているという。
張氏は、モデル自体の技術的な差は業界の成熟に伴い急速に縮まる可能性があるとし、家庭用ロボットで長期的な優位性を築くには、ハードウェア、運動制御、モデル、実環境のデータが揃ったフルスタックの統合力を磨く必要があると考える。特に家庭における大量の非定型の環境から生まれるデータは、産業の現場やシミュレーションで手に入れるのが難しいからだ。
未来不遠は引き続き家庭内を中心にロボットが対応できる範囲を拡大する方針だ。子どもの付き添いや簡単な家事に加え、次の重要なシーンとして高齢者介護やキッチン作業を想定している。同社は、完全に汎用化された家庭用ロボットの実現にはまだ10年ほど必要だと考えているものの、利用頻度の高いシーンでは、ロボットがすでに実際の家庭で働ける条件を備えていると判断している。
*1元=約24円で計算しています。
(翻訳・36Kr Japan編集部)