靴製造で受注96億円超、鉱山の危険作業にも。中国CASBOT、「働く人型ロボ」の実用化へ【動画あり】
中国の人型ロボット(ヒューマノイド)ブランド「CASBOT(霊宝)」を展開する中科慧霊機器人(以下、中科慧霊)がこのほど、シリーズA++で知来投資(Zhilai Investment)、涌鏵投資(Yonghua Capital)、茂天投資(Maotian Investment)などから数億元(数十億円)を調達したと発表した。同社は2025年6月にも、アップルのサプライヤーの藍思科技(Lens Technology)が主導するシリーズAで約1億元(約24億円)を調達していた。新たに調達した資金は、フィジカルAIの頭脳の開発、製品の量産・納入、および市場開拓に充てられる。
中科慧霊は2023年に設立され、本社を北京市中関村に置く。主にロボット本体、フィジカルAIの頭脳、およびロボットハンドを開発しており、フルサイズの人型ロボットや車輪式ロボット、およびハーフサイズロボットなどの製品を展開している。24年11月には、初の二足歩行人型ロボット「CASBOT 01」を発表し、その後、軽量版の「CASBOT 02」を発売した。

顧客には、藍思科技、レノボ(聯想)、中信重工(CITIC Heavy Industries)、招金集団(Zhaojin Group)、中国黄金集団(China National Gold Group)などが含まれている。
靴工場で受注96億円超、リピート購入も
同社は早い時期から靴やアパレルの製造向けに事業を展開してきた。靴のソールやアッパーなどは形状が多様で、生産工程では把持、ロゴなどのプリント、貼り合わせなどの作業が必要となるため、固定されたプログラムや専用設備では、工程の変化に対応しきれない。
中科慧霊は2025年8月に、初の靴製造ロボットを福建省莆田市の靴工場に導入し、生産ラインでの検証を開始した。同社によると、26年の靴製造ロボットの受注額はすでに4億元(約96億円)を超え、数千台規模の生産を予定している。
創業者の張正涛氏によると、テストではアウトソールへのスタンプ作業が1個当たり7秒、靴底の圧着作業は1足当たり18秒を達成した。現在の導入事例をもとにした試算では、2年以内に投資を回収できる見込みで、すでに複数の工程ではリピート購入にもつながっている。
現場に投入するうえでは、作業環境に適応させることも重要になる。生産ラインの照明条件が変わるだけでも、AIモデルを調整し直さなければならないこともある。開発チームは、遠隔操作や装着型デバイスを通じてデータを収集し、高品質のデータを取得できるよう収集方法を繰り返し改善してきた。これにより、特定の条件下でのみ動作するのではなく、実際の作業現場に適応できるようになった。
鉱山にも進出、まずは危険作業を代替
中科慧霊が注力するもう一つの分野は鉱山だ。2025年6月に、山東招金集団(Shandong Zhaojin Group)および山東中鉱集団(Shandong Zhongkuang Group)と合弁会社「中科深鉱」を設立し、坑内での装薬や安全巡回など、危険な作業を対象とした開発を進めている。
坑内は粉塵や湿気が多く、通信も不安定になりやすい。そのため、設備の防護性能や遠隔操作、安全対策にはより高い水準が求められる。中科慧霊は、現場での訓練と検証を通じて、人が担う危険作業を段階的に減らすことを目指している。
今年の上半期には、山東省煙台市にある採掘を終えた廃鉱で、掘削から装薬、発破、積み込み・運搬に至る一連の工程を一通り実証した。最も困難だったのが装薬作業で、100本以上の薬包と、その後方につながる導線を扱う必要があった。また下半期に、現在も作業員が働いている深さ約1000メートルの鉱山から業務を受注した。張氏によると、これは金属鉱山では初となる坑内無人採掘の実証実験であり、半年ほど安定して稼働できれば、業界全体への普及が期待できるという。
演奏で磨く「器用な手」、競争は安定稼働へ
張氏は、用途に応じてロボットの形を決めるべきだと考えている。開放的な環境では二足歩行の人型ロボットを採用でき、積載量や稼働時間、効率を重視する鉱山や倉庫では、車輪式や移動式の作業ロボットが適しているという。
鉱山、靴工場など、さまざまな現場での作業を支えているのが、器用に物を扱う能力だ。今年2月には、4台のCASBOT 02で構成されるロボット楽団が披露され、青島市の体験型店舗で定期的な公演を行うようになった。楽器を演奏するにはリズムに合わせて指を動かさなければならない。公演を通じて蓄積されたデータは、ロボットハンド用基盤モデルのトレーニングや改良にも活用されている。
中科慧霊は今年7月、藍思科技、湖南華夏投資集団(Hunan Huaxia Investment Group)と共同で、ロボットハンドの開発を手がける「中科慧思」を設立した。藍思科技は精密製造およびサプライチェーンの面でサポートする。翌8月に、ロボットハンド「L1」「D1」「M1」の3モデルを発表し、37自由度を持つワイヤ駆動式バイオニックロボットハンド「F」シリーズを先行公開した。

張氏は、現段階で人型ロボットの主な用途はデータ収集、教育、商業パフォーマンスに集中しており、産業現場の需要による成長が本格化するのは、2027年から28年になると分析する。さらに、業界の競争軸が「ロボットを作る」ことから「ロボットを安定稼働させる」ことへと移行しつつあるとも指摘。ロボットハンドの中には、数週間から1、2カ月で故障したり、長期間稼働させると不具合が生じたりするものがあるとしたうえで、こうした問題は実際の現場で段階的に解決していく必要があると語った。
*1元=約24円で計算しています。
(翻訳・浅田雅美)