中国版ネトフリ「愛奇芸」、アリババ・テンセントによる出資交渉が棚上げ 香港重複上場の道も

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「中国版Netflix」と呼ばれる動画配信プラットフォーム「愛奇芸(iQiyi)」を巡り、親会社バイドゥ(百度)とアリババとの出資交渉がストップしていることが分かった。11月27日付けでロイター通信が報じた。TikTokの運営会社バイトダンス(字節跳動)も愛奇芸の株式取得の可否を検討中だが、バイドゥがこれに応じる可能性は低いとみられる。愛奇芸は数カ月中にも最低10億ドル(約1040億円)を調達する計画だという。

今年6月、愛奇芸の株式56.2%を保有するバイドゥに対し、テンセント(騰訊)が愛奇芸の筆頭株主となることを目指して株式の取得を打診しているとロイター通信が報じた。その後、アリババも株式取得の交渉に加わった。

ロイター通信が伝えた情報筋の話では、テンセントとアリババはそれぞれ自社の動画配信サービスを展開しているため、独占禁止法に基づく当局の審査が入ることになったという。これにより交渉は行き詰まり、近いうちに再開される見込みはほぼなくなった。現時点で中国の長編動画は、テンセントの「テンセント・ビデオ(騰訊視頻)」、バイドゥ傘下の愛奇芸、アリババ傘下の「優酷(Youku)」が市場を三分割している。

テンセントが提示した金額はバイドゥが希望する額の半分だったとの情報もある。

この件について各社に問い合わせたところ、テンセントは交渉に関するコメントを拒否、アリババからは回答が得られていない。バイドゥは「うわさは事実ではない。愛奇芸はバイドゥのコンテンツ戦略において重要な位置を占めており、今後も変わらず愛奇芸を支えていく」と回答した。バイトダンスは「そのような事実はない」と株式取得の可能性を否定している。

バイトダンスは既出の大手三社のような長編動画プラットフォームを傘下に持たないため、愛奇芸を買収できればバラエティーやドラマ、映画にまで勢力を拡大することが見込める。しかしバイトダンスとバイドゥはこれまでデジタル広告市場で確執を抱えてきたため、バイドゥが交渉に応じるとは考えにくい。

愛奇芸には香港に重複上場するという選択肢もある。今年8月にブルームバーグは、愛奇芸が香港での重複上場に関してクレディスイス証券と協議を進めていると報じた。協議は初期段階で、スケジュールや調達額は未定だという。

愛奇芸が2018年3月29日に米国上場を果たしてから2年半余りたつが、いまだ黒字を実現できないでいる。先ごろ2020会計年度第3四半期(7~9月)の財務報告書(未監査)が発表された。第3四半期の売上高は、前年同期比3%減の72億元(約1140億円)だった。純損失は12億元(約190億円)で、前年同期の37億元(約580億円)から大幅に縮小した。

愛奇芸は11月に、9年間据え置いた有料プランの値上げに踏み切った。新価格は、1カ月自動更新19元(約300円)、1カ月25元(約400円)、3カ月自動更新58元(約920円)、3カ月68元(約1100円)、1年自動更新218元(約3400円)、1年248元(約3900円)。

愛奇芸の龔宇CEOは、会費が主要な収入源であり黒字転換を果たす上でのカギでもあると強調し、9年前に設定された価格は低すぎてコストをまかなえなくなっていると語った。

ロイター通信の報道を受けて、愛奇芸の株価はプレマーケットで5.31%下落して21.2ドル(約2200円)をつけ、時価総額は164億2600万ドル(約1兆7000億円)となった。
(翻訳・畠中裕子)

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