スタートアップへの投資でわかる原神のmiHoYoの目指す先

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中国ゲーム大手miHoYoの人気ゲーム「原神」が快進撃を続けている。2020年にリリースして以来、現在までの売上高は40億ドル(約5200億円)を超えたという。国別の売上では、全体の34.6%の約14億ドル(約1800億円)を占める首位の中国に続き、日本が約9億6000万ドル(約1200億円)で23.2%を占めて2位となり、日本でもロングセールを記録している。

miHoYoはゲームを開発運用するだけではなく、様々なスタートアップに投資をしていて、ゲーム企業や周辺の関連企業に少なくとも20社、24件の投資をしている。

最も早期の投資が2016年で、同年以降毎年企業に投資をおこなっている。2016年というと、同社が世界的に知られるようになった「崩壊3rd」をリリースした年だ。それまでに「崩壊学園」「崩壊学園2」をリリースし、売上額を投資に回したといえる。

ゲーム開発に重要な企業にmiHoYoは投資している。ゲームエンジンの「Unity中国」、イラストレーターマッチングプラットフォーム「米画師(北京綺心科技)」、声優プロダクション「奇響天外(上海奇響天外文化伝播)」がそれにあたる。Unity中国は同社の大中華圏事業の運営を行っていて、miHoYoは2022年にエンジェルラウンドの投資に参加。他にはアリババなども投資している。奇響天外は2016年に設立され、「崩壊3rd」の音声を担当した。2019年にはmiHoYoがエンジェルラウンドで投資している。アニメーション制作会社では「神猫企画」や「吾立方」に投資。神猫企画についてはエンジェルラウンドに投資し、同社の約8%の株式を保有している。

美少女3Dアクションゲーム「崩壊3rd」

miHoYoの今後を予測する投資もある。以前からmiHoYoはメタバース参入への意欲を語っている。投資においてもVRやARなどのテクノロジーにも注目していて、「青島同歌」という企業に1億元(約19億円)を投資した。同企業へはバイトダンス(字節跳動)傘下のPICO VRが投資している。

また、脳科学を活用したテクノロジーやサービスのブレインテックにも関心を持つ。同社は上海交通大学と共同で「零唯一思(上海零唯一思科技)」を設立したほか、上海交通大学医学部付属の瑞金病院と戦略的協力協定を結び、「瑞金病院脳疾患センターmiHoYo共同研究所」を共同で設立することを発表している。

周辺産業に投資しIPを展開

昨今中国ではIPを活用した商品展開や事業展開をよく見るようになった。その流れでmiHoYoもキャラクターグッズの開発企業を含め、IPを活用する企業など少なくとも5社に投資を行っている。

miHoYoが株式の17%を所有し第2位の株主となっている「湃思文化(APEX INNOVATION、上海湃思文化科技)」は2018年に設立されたフィギュアメーカーだ。原神や崩壊3rdのフィギュアの他、アズールレーンや、アークナイツといった人気のコンテンツのキャラクターをフィギュア化している。

一方miHoYoが投資する「Suplay」は、POP MARTなどで知られる頭身の低いコレクショントイ系のグッズをリリース。同社は原神、サンリオやディズニーとも提携している。各種IP製品を販売する店舗運営の「IPSTAR潮玩星球」にもmiHoYoは投資し、現在10.39%の株式を保有している。ちなみに同社株式は他社ではビリビリが約15%保有している。ほかにもJKファッションで知られる「十二光年」や、マッチングアプリ「Soul」にも投資を行っている。

各種IP製品を販売する店舗運営の「IPSTAR潮玩星球」

ゲーム企業へも投資を行っている。具体的には「心動網絡(xd.inc)」「奥秘之家(omescape)」「魔剣網絡(上海魔剣網絡科技)」「阿佩吉(上海阿佩吉網絡科技)」の4社で、いずれもゲーム事業ではモバイルゲームをリリースする。このうちの心動網絡は特に研究開発力と流通力を兼ね備えており、人気タイトルとしては「香腸派対」「籠中窺夢」「悪果之地」といったタイトルがある。加えてゲームコミュニティの「TapTap」をリリースする企業としても頭角を現している。miHoYoのほか、アリババやビリビリなども心動網絡に出資している。「奥秘之家(omescape)」は中国全土でリアルな脱出ゲームを展開していて、ゲームアプリについても脱出ゲーム同様の謎解き系ゲームをリリースする。

以上のようにmiHoYoの投資を見てみると、同社の方針が見えてくる。MiHoYoのエンターテインメント投資は主に初期か中期ラウンドで、その多くのシリーズA以前(プレA、エンジェルラウンド、シードラウンド)、株式保有比率は20%以下だ。バイトダンス、アリババやビリビリなどの競合他社と共に投資し、周辺産業を育てているのだ。

無名だった「原神」が中国トップクラスのゲームとなった理由

(作者:山谷剛史)

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