東日本大震災の電力不足も支援した中国「VG Solar」、太陽光発電の追尾式架台をグローバル展開

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東日本大震災の電力不足も支援した中国「VG Solar」、太陽光発電の追尾式架台をグローバル展開

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太陽光発電が世界で規模拡大フェーズに入っている。欧州や豪州などの既存市場が安定的な成長を続けるだけでなく、中国やインド、南米などでも市場がますます拡大することで、太陽光発電は世界で最も重要な産業の一つとなった。

調査会社TrendForceは、世界における太陽光発電の新規導入量が2022年に前年比30.4%増の220GW(ギガワット)になると予想している。また中国国家エネルギー局のデータでは、中国における風力発電・太陽光発電の新規導入量は22年に1億2000万kW(キロワット)以上となり、累計導入量は7億kWを超える。風力発電・太陽光発電は再生可能エネルギー発電全体の導入量が12億kWを突破し、新規導入が着実に進む後押しとなっているのだ。

太陽光発電システムに欠かせない重要なパーツが架台(太陽光パネルを設置する構造物)だ。世界で太陽光発電所の建設が増え続けるにつれ架台産業の規模も拡大を続けており、25年には世界市場が1350億元(約2兆6400億円)規模に達すると見込まれる。そのうち追尾式架台が900億元(約1兆7600億円)を占めるとの予想だ。中国メーカーが世界の追尾式架台市場に占めるシェアは20年時点で15%にとどまっている。

2013年に設立された「VG Solar(維旺光電)」は、まさにその太陽光架台に可能性を見出した中国企業の1社だ。豪州や日本などの海外市場から事業を興し、住宅用、商業建築用、発電所用などさまざまな規模や用途に応じたソリューションを提供している。同社の製品は現在、中国、日本、タイ、豪州、ドイツ、マレーシア、メキシコ、オランダ、英国など50の国・地域に広まっている。

創業者の朱文逸氏によると、同社は13年の設立以来、3つの成長段階を経てきた。

第1段階は豪州の100万世帯を対象とした屋根用太陽光パネルの設置プロジェクトだ。プロジェクトは太陽光発電産業の最初の起爆剤となり、同社の固定式架台は対豪州取引額が1年で数千万元(数億〜十数億円)クラスに上った。

第2段階は12年、東日本大震災の翌年だ。日本国内の原子力発電所が震災後に全面稼働停止となり、短期的に電力不足となったことを受け、VG Solarは日本の商社との提携に合意し、その取引額は年5000万元(約9億8000万円)にまで伸びた。

第3段階は15年、「電気基本料金+補助金」に関する政策の影響で中国では分散型太陽光発電産業が急成長を始めた。VG Solarもその恩恵を享受する形で中国のエネルギーシステムソリューションベンダー「正泰集団(Chint Group)」と提携関係を樹立し、事業を一層拡大させ、固定式太陽光架台メーカーとして国内トップクラスに成長した。

19年にはそれまでの固定式架台に加え、追尾式架台も手がけるようになった。

追尾式架台の原理は、支柱を回転させて太陽光パネルの角度を変化させ、太陽が東から西へ移動する間、パネルが太陽光に対して常に直角になるように調節することで発電効率を高めるものだ。朱氏によると、これまでは追尾式架台の主要技術はすべて米国が確立したもので、中国企業が参入するには障壁が相当高かったという。VG Solarは数年かけて技術や製品を磨き、追尾式架台市場で一定の立ち位置を得た。

VG Solarでは追尾式架台の制御システムも開発した。天文学の数式とAIのアルゴリズムを結びつけ、より効果的に発電ができるようにするものだ。

固定式架台、追尾式架台に加え、BIPV(建物一体型発電)を構築するワンストップのサービス事業も手がけている。BIPVは建材と太陽光発電モジュールを一体化させ、建物からのCO2排出を効果的に抑える方法で、市場のポテンシャルは巨大だ。VG Solarによるこれまでの導入量は約40MW(メガワット)に達している。

競合企業は世界的大手の米「NEXTracker」、「Array Technologies(ATI)」、スペイン「PV Hardware」のほか、国内大手の「中信博新能源科技(Arcctech Solar)」、トリナ・ソーラー傘下ブランド「Trina Tracker(天合跟踪)」、「清源股份(Clenergy Technology)」が存在する。

朱氏が考えるVG Solarの優位性は、10年以上維持してきたブランドを有する企業であること、世界で事業展開していること、海外事業が伸び続けていることだ。将来的には海外が30%、国内事業が70%の比率を維持したいという。向こう3〜5年で太陽光架台企業の世界5位以内に入ることが目標だ。

最近になってプレシリーズAで資金調達も実施した。同じく太陽光発電設備を手がけ、上海のハイテクベンチャー向け市場・科創板(スター・マーケット)にも上場する「昱能科技(Yuneng Technology)」が単独で出資した。調達した資金で生産能力の増強や追尾式架台事業の拡張、事業のさらなるグローバル化を目指す。また、昱能科技が有する業界最先端の超小型インバーター技術と販売ネットワーク、VG Solarが有する豊富な追尾式架台技術と実用実績でシナジーを生み、共に国内外の顧客へサービスを提供していく構えだ。

(翻訳・山下にか)

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