中国ベンチャー、注目の材料POEの国産化に成功。太陽光発電のコスト削減にも期待

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中国ベンチャー、注目の材料POEの国産化に成功。太陽光発電のコスト削減にも期待

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新材料を開発する中国スタートアップ企業の「貝欧億(BeyondPoly)」が2023年末、中国山東省で新製品ポリオレフィンエラストマー(POE)の発表会を開催した。その中で、中国初となるPOEの工業的生産設備が稼働を開始したと発表し、POE国産化元年の幕開けをしるした。

貝欧億はPOEやアルファオレフィンを中心とする複合新材料サプライヤーで、山東省と海南省に生産拠点を持ち、山東省博興市と青島市、江蘇省杭州市の3カ所に研究開発センターを設置している。年産3万トンの特殊ポリオレフィン生産設備と関連設備が2023年12月15日に稼働を始めている。同社は、化学工業大手の京博控股集団(Chambroad Holding Group)の起業支援を受けて設立された。今回POEの工業的生産に成功した背景には、京博が培ってきた材料産業に関するノウハウとリソースがあったとみられる。

POEはゴムのような弾性を有する複合材料で、高い機械的強度や優れた再加工性を持つほか、耐衝撃性・耐老化性・耐薬品性に秀でており、太陽電池用封止シートや自動車、ケーブルなどの分野で広く活用されている。

華経産業研究院によると、2021年に中国で消費されたPOEは太陽光発電分野が40%、自動車分野が26%を占めた。特に太陽光発電分野では、太陽電池用封止シートの主原料として使用され、封止シートの生産コストのうち80%を占めている。

2021年中国のPOE消費分野(華経産業研究院のデータをもとに作図)

公表されている情報によると、世界のPOE生産技術や生産設備は、米ダウ・ケミカル、韓国LG化学、三井化学、SSNC(サウジアラビア石油大手SABICと韓国SKジオセントリックの合弁会社)、米エクソンモービル、アラブ首長国連邦(UAE)のブルージュ(Borouge)の化学大手6社に集中している。中国ではこれまで、POEの供給を全て国外企業に頼っており、2019年から22年にかけては輸入量が16万600トンから80万2200トンへと増加し、年平均成長率は70.9%に達した。

POEの国産化を実現するには、メタロセン触媒、アルファオレフィン、溶液重合という技術的難度の高い3つの壁を攻略する必要がある。

中国ではここ数年、貝欧億のほかにも万華化学(Wanhua Chemical)や衛星化学(Satellite Chemical)など複数の企業がPOEの国産化を模索してきた。最終的に貝欧億が頭角を現し、POEの工業的生産に成功した最初の中国メーカーとなった。

POEの国産化で輸入品からの代替が実現すれば、川下企業に十分な量の原材料を安定供給できるようになり、太陽光電池用封止シートのコスト低減につながる。業界関係者によると、国産化でPOEの価格は20%以上引き下げられ、間接的に太陽電池用封止シートのコストも下がる見通しだという。

太陽電池用封止シートを手がける中国メーカーは、エチレン酢酸ビニル(EVA)やPOE樹脂を主な原料としているが、現時点では国産化率が高く廉価なEVAが主流となっている。しかし、次世代のN型セルを使用した両面発電モジュールの普及が進むに従い、POE樹脂に対する需要も急速に伸びてきた。

招商銀行研究院は、太陽光発電の分野では今後2年間でPOE樹脂に対する需要が爆発的に増加する見込みだが、海外からの新たな供給は限られているため、POE封止シートの供給不足が続くと予想する。このような状況で、いち早くPOEの国産化に成功した貝欧億は、市場拡大に伴う恩恵に浴することができるだろう。

貝欧億の趙永臣社長は、今後は山東省と海南省の二大生産拠点体制を整えて生産能力を拡大し、一日も早く上場を果たしたいと語った。

(翻訳・畠中裕子)

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