AIを活用した室内空間デザイン会社「生境科技（SENGINE）」は、今年始めにエンジェルラウンドで数千万元（数億～十数億円）を調達した。香港X科技基金（Hong Kong X Technology Fund）、清水湾基金、重慶智能建造研究院が出資を主導した。資金は人材採用やサービス拡大のために用いられる。

生境科技は2023年に設立され、広東省深圳市に拠点を置く。従業員数は40人ほど。設立わずか1年ですでにビジネスを確立して収益を上げており、インテリアデザイン企業向けに業務効率化を各段に後押しするAIツールを提供している。

同社の前身となったのは、劉紫東CEOが米国で博士課程履修中に立ち上げた建築系の学術組織「AAE建築自編碼研究組」だ。劉氏は「AAEには多くの投資家が関心を寄せたが、建築分野には我々の技術を活用できるビジネスモデルはなかった」と説明する。建築デザインは長い時間をかけて多くの工程を踏まなければならず、それほど効率は重視されていないため、顧客はソフトウェアにコストをかけようとは思わない。その点、インテリアデザインでは、スピーディーに図面を起こせる会社ほど顧客を掴みやすく、効率化への関心は高い。

2023年、劉CEOは画像生成AI「Stable Diffusion」が、何もない部屋の画像をもとに数秒で内装プランを生成する様子を目の当たりにし、AIを活用すれば「変革を起こし、段違いの業務効率化を実現できる」と感じた。

そこで生境科技は、インテリアデザイン企業や個人向けの生成AIデザインツール提供に焦点を当てて事業を始めた。目下、同社の主要サービスは2つある。3Dモデルを生成できる法人向けサービス「生境AI」と、レンダリング技術を用いて2D画像を生成する個人向けサービス「閃境AI」だ。

生境AIでは、見取り図をアップロードすると各部屋に家具が配置された部屋全体の3Dレイアウトが生成され、画面両側には内装工事の予想費用と、オンラインで実際に購入可能な家具の情報が表示される。顧客は好みのスタイルを選択したり、3Dのイメージ画像をすぐに見たりすることができる。

また、ワンクリックでキッチンのスタイルを変更できる機能も実装された。

同社はこれらのサービスで確たる競争力を築いてきた。目下、インテリア大手の金牌厨櫃（GoldenHome Living）や万華生態集団（Wanhua Ecological）のホテル部門と業務提携を結んでいる。劉CEOは「我々とお客様はウィンウィンの関係。プロジェクトが終わるごとに、サービスの質も向上している」と語る。

蓄積した膨大な家具のデジタルデータも同社の武器となっている。このデータをもとにAIモデルで商品画像を3Dモデルに変換することができる。EC大手のタオバオ（淘宝網）やJDドットコム（京東）などで扱っている数十万の家具も、画像をアップロードするだけで生境科技の家具データライブラリに追加され、レイアウトプランの選択肢として顧客に提示することが可能となる。

同社のツールが成し遂げたインテリア業界の効率化は、もはや数倍というレベルではない。かつて設計プランに1週間かかっていたが今はわずか20秒で完結するという。現時点では主に法人向けのオーダーメード事業がメインだが、将来的には法人向けサービスを基盤として個人向けの市場へと事業を拡大する予定だ。2024年4～6月期の成約額はすでに1000万元（約2億2000万円）近くに達しており、市場が求めるサービスを提供できているとの手応えをある程度感じているという。

＊1元＝22円で計算しています

（翻訳・井上秋奈）

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