中国「速成EV」に安全の問い。高級MPVのペダル破損が引き金に、当局は検証強化案
中国の自動車メディア「懂車帝」が実施した制動テストで、ファーウェイと江淮汽車(JAC)が共同展開する高級EVブランド「尊界(Maextro)」のMPV「V800」3台に、ブレーキペダル支持部の破損が相次いだ。原因の解明が待たれるなか、新車投入のスピードと安全性の検証をどう両立するかが、改めて問われている。
3台とも同じ箇所で破損
懂車帝が10月8日に公開した動画によると、購入した「V800」3台を使い、閉鎖された試験場で時速100kmからの急制動テストを実施。1台目は3回目、2台目は4回目、確認のため新たに購入した3台目は2回目の全力制動でペダル支持部が破損した。
3台とも破損位置と破断面の形状がほぼ一致しており、3台目の破損時に記録された最大踏力は1612ニュートンだった。懂車帝の担当者は、破断面から、材料が過大な荷重を受けて脆性的に破壊した可能性を指摘し、瞬間的な荷重への耐性が不十分だったのではないかとの見方を示した。ただし、原因が確定したわけではない。

公開された動画のスクリーンショット。現在、同動画は取り下げられている。
尊界側は、納車を始めて以来、同様の故障は発生していないと説明。そのうえで、部品設計を改善し、納車済みの車両にも無償アップグレードの選択肢を提供すると表明した。
その後の発表では、10月11日に実施した第三者機関の検査で、踏力1500ニュートンの業界基準を満たし、3000ニュートンまで負荷を高めても亀裂や損傷は生じなかったとしている。一方、この検査結果だけでは、実車テストで破損が繰り返された理由は説明できておらず、検査条件や実走行時の荷重の違いを含め、さらなる検証が待たれる。
開発期間は18カ月まで短縮
今回の問題を受け、中国では「速成車」をめぐる議論が広がった。これは市場投入を急ぐあまり、開発期間を過度に圧縮し、実車での検証を削減した車を批判する表現だ。
易車榜の集計によると、今年上半期に中国で発売された乗用車の新モデルは576車種に上り、1日平均で3車種を超えた。調査会社アリックスパートナーズによると、中国の一部メーカーは新車の開発期間を20カ月前後に短縮し、新興EVメーカーでは18カ月という例もある。従来の自動車メーカーが新車開発に3~5年をかけてきたことを考えると、そのスピードは際立っている。
人民日報系のメディアは、ある新エネルギー車メーカーがドアハンドルの試験1万回のうち、実物を使って実施したのはわずか2000回で、残りをシミュレーションで済ませていた例を紹介した。ただし、企業名や詳しい試験条件は公表されていない。
シミュレーションや設計の共通化で開発を効率化することと、必要な検証まで省くことは別の話である。もちろん、開発期間が短いからといって、必ずしも安全性が低いとは限らない。重要なのは、実際の使用環境や想定される厳しい条件を十分に検証できているかどうかだ。
「二冬一夏」の試験を求める規制案
こうしたなか、工業情報化部など4部門は10月10日、自動車の設計や開発時の検証を強化する通知案を公表した。
通知案では、環境適応性の検証期間を1年以上とし、厳寒期、高温期、再び厳寒期を経る「二冬一夏」の試験を要求。信頼性の検証では3万km以上の走行試験を求める。また、完全格納式ドアハンドルを禁止し、緊急脱出や非常制動などに関わる操作部には物理的な操作手段と明確な表示を備えるよう求めた。
新規申請車種には2027年1月1日から適用し、認可済み車種には同年7月1日までに関連資料の追加提出を求める案だ。期限を過ぎて安全上の問題がある場合は、生産停止・リコールの対象となる。現時点では意見募集の段階で、最終的な内容は確定していない。
(36Kr Japan編集部)