「職人の勘」をAIに学ばせる——中国・図速科技、研磨ロボットで製造現場を効率化

製造業の研磨工程が、人手や経験に左右される分野であることはあまり知られていない。作業環境が過酷なうえに、工作機械のパラメーターは担当者の感覚(勘)に頼るところが大きく、品質の安定が難しい分野だ。この課題に正面から取り組む中国企業がある。

産業オートメーション技術を手がける「図速科技(TOSSO Automation)」は4月10日、エンボディドAI(身体性を持つ人工知能)プラットフォーム「砺眸(LumiSander)」、ロボット用オンライン経路計画システム「図御(RouteMind) 2.0)」、AI研磨ロボット「図匠(LumiCraft)」の3製品を発表した。

同社は2016年に設立され、上海市松江区に本社を置く。製品を軌道交通、航空・宇宙、風力発電、自動車製造の四大分野に供給し、多くの大手企業と提携している。

創業者の葛旭剛氏は、産業現場で活用されているAIの現状について率直に語る。「現段階のAIは自律型と呼べるまでには発展しておらず、人間の意思決定を補助する段階にとどまっている」。この認識のもと、同社は人間の作業を一足飛びに代替するのではなく、データとアルゴリズムの積み重ねによって工程を学習し、人とロボットの協働を段階的に深める設計思想を採用した。

エンボディドAIプラットフォーム「砺眸」は、AIエージェントスペース、データ管理、アルゴリズム管理、学習管理、AIモデル管理、コンテナ管理という6つの主要機能を持つ。その中でAIエージェントスペースは、自動車や軌道交通、航空・宇宙、風力発電などの分野をカバーしており、さまざまな材質、形状、欠陥に対してリアルタイムで判断を下す、いわば研磨ロボットの「頭脳」だ。

ロボット用オンライン経路計画システム「図御 2.0」は、点群データのモデリングから研磨作業のオンライン計画、ロボット研磨に至る全プロセスの自動化を中国国内の製造業界で初めて実現した。従来の経路計画は、オフラインでのプログラミングがベースとなっていたため、複雑な曲面や形状にばらつきがあるワーク(加工品)に対応するのが難しかった。同システムはオンラインでリアルタイムに経路を計画できるため、不均一な加工品にも柔軟に対応できる。

AI欠陥検査システム「図眸(SurfaEye)」は、オプティカルフローカメラが搭載され、0.15ミリの精度で欠陥を検知。適応制御技術により、発見からわずか1分で補修を完了し、手作業と比べて検査から補修までの速度を3〜4倍に高めたという。

AI研磨ロボット「図匠(LumiCraft)」のデモンストレーション(画像は企業提供)

今回の発表で最も注目を集めたのが、AI研磨ロボット「図匠」だ。LAM(自己位置推定と地図作成の同時実行)や障害物回避機能を備え、位置決め精度2センチ、最高速度毎秒1メートルで工場内を自律移動しながら、大型かつ形状にばらつきのある加工品を研磨する。

製造現場での実用性にも配慮した。消耗品である研磨材の交換は業界共通の課題だが、「図匠」は自動交換システムにより30秒での交換を実現。交換時期を予測する機能も備え、生産コストの低減に貢献する。また、高真空集塵システムによる粉塵回収率は95%超で、劣悪だった作業環境の改善も期待できる。複数の作業ステーションにまたがる超大型加工品の研磨にも、レーザートラッキング技術による高精度な位置決めで対応する。

研磨工程の完全自動化には、なお時間を要する。葛氏はそう認めつつも、「1つひとつの研磨作業をAIの学習データに変換することで、自律型AIの実現に近づいていく」と語った。職人の経験を少しずつデジタル資源に置き換えていく、地道な取り組みが続く。

(翻訳・大谷晶洋)

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