ラストワンマイルの死角をAIで監視 中国、ウェアラブル端末で物流トラブルを低減へ

中国の物流業界ではここ数年、輸送業務のデジタル化が大きく進んだ。車両の位置や運転状況、温度、燃料消費量、貨物の状態などの情報は、車載機器を通じてリアルタイムに収集できるようになっている。しかし、貨物を顧客に引き渡す最後の工程については、モニタリングが行き届いていなかった。

こうしたなか、IoT技術を手がける「北京匯通天下物聯網科技」(以下、G7易流)は6月25日、輸送・物流の展示会「Transport Logistic China 2026」で、人工知能(AI)を搭載した業界初のウェアラブルデバイス「拍拍豆」を発表した。AIの活用範囲を車両から車外の業務へ広げる試みだ。

創業者の翟学魂CEOは、輸送業務が完了するのは貨物が顧客の手元に届いた時だと説明する。しかし、荷下ろしや引渡しは人手に大きく依存する作業のため、貨物の破損や数量の不一致といったトラブルが起こりやすい。また、顧客からクレームを受けても、経緯を確認するための正確な記録が不足していることが多かったという。

この課題を解決するため、G7易流が開発した「拍拍豆」は、重さがわずか30グラムで、マグネット式スタンドに着脱可能なコンパクトなデザインを採用。ドライバーは、停車してエンジンを切った後、フロントガラスに取り付けられたスタンドからデバイスを外し、それを首から下げるだけで録画が自動的に始まる。車両に戻ってスタンドに戻すと、記録された動画は自動的にクラウドへアップロードされ、手動操作は一切不要だ。

G7易流のウェアラブルAIデバイス「拍拍豆」

リアルタイムのトラブル対応が可能に

「拍拍豆」は、AIが貨物の引渡しに伴うトラブルをリアルタイムに検知し、いち早くアラートを発する。貨物の破損は従来、顧客からのクレームで初めて発覚することが多かったが、AIが破損や数量の不一致を即座に検知することで、輸送スタッフが迅速に対処できるようになり、賠償コストの抑制にもつながるという。

クラウドにアップロードされた動画は自動で分類、保存される。ドライバーは「荷下ろし」「引渡し済み」「破損」などのキーワードを口頭で伝えれば、AIが該当する動画にタグを付ける仕組みだ。後日トラブルが判明した場合でも、該当する動画を30秒で探し出せるため、確認に手間取ることはない。

また、業務の記録だけでなく、貨物管理の機能も備える。例えば、コールドチェーンの温度異常を検知した場合には、アラートを発するだけでなく対処方法も自動生成し、責任者に伝える。トラブルの検知から対応まで一貫してサポートする設計だ。

G7易流・創業者の翟学魂CEO

G7易流は、この機能をAPIおよび「Skills」(外部システム向けの拡張機能)として公開すると発表した。これにより、物流企業は「拍拍豆」の機能を飛書(Feishu)や釘釘(DingTalk)といった主流のビジネスツール、あるいは自社の管理システムに組み込み、業務管理のデジタル化をさらに進められるようになる。

中国の物流業界ではAI導入が加速している。中国物流購買連合会(CFLP)などによると、2025年の世界の物流・サプライチェーン管理向けAI市場は340億ドル(約5兆5000億円)を超えた。26年には479億2000万ドル(約7兆8000億円)までに拡大し、年平均成長率が40.8%に上ると予測されている。中国の物流・サプライチェーン分野では、AIの普及率がすでに37%を超えたという。

*1ドル=約162円で計算しています。

(翻訳・大谷晶洋)

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