商品選びから決済まで、AIとの対話で完結 中国で始まる「AIショッピング」競争
この半年、中国の大手IT企業は、AIを活用した新たなショッピング体験を相次いで打ち出している。
TikTokを運営するバイトダンス(字節跳動)、中国EC大手のアリババグループや京東集団(JDドットコム)、中国IT大手のテンセント(騰訊控股)など、大手各社が続々と参入している。その背景にあるのは、ECにおける商品の探し方の構造的な変化だ。ECはこれまで、ユーザーが自分で商品を検索する方法から、アルゴリズムがおすすめ商品を表示する形へと進化してきた。そして今、対話型AIがユーザーの要望をくみ取り、代わりに商品を見つける新たな形が生まれようとしている。
現時点で先行しているのは、バイトダンスのAIアシスタント「豆包(Doubao)」だ。アプリのナビゲーションバーにある「帮你選(あなたに代わって選ぶ)」機能では、「予算500元(約1万2000円)で、通勤に適した革靴が欲しい」と要望を伝えると、AIが条件に合った商品情報を表示する。タップするだけで注文でき、商品の追加から決済、アフターサービスまで、すべてアプリ内で完結する。他のECサイトに移動する必要はない。
報道によると、2026年上半期に、豆包経由のECの1日平均GMV(流通取引総額)が1000万元(約2億4000万円)を突破したほか、中国のEC業界で毎年6月に開催される大型セール「618」期間中には約1億元(約24億円)に達した。AIがおすすめした商品をタップして購入に至った割合は3%に達し、従来のフィード広告の平均値を上回った。
豆包の強みは、バイトダンス傘下のサービスとの連携にある。ショート動画アプリTikTokの中国版「抖音(Douyin)」のEC機能や、決済サービス「抖音支付(Douyin Pay)」と同じ経営基盤を持つため、商品情報や決済システムなどがすでにつながっている。新たにシステムを連携させる必要がなく、商品のおすすめから購入までをスムーズに進められる。
それを追いかけるのが、アリババ傘下の大規模言語モデル(LLM)「通義千問(Qwen)」だ。同じアリババグループには、中国最大級のECモール「淘宝(タオバオ)」があるものの、これまでは別々のシステムで運用されていた。今年5月には、両者のシステムを全面的に連携させ、千問から40億点を超える商品にアクセスできるようにした。
春節(旧正月)のキャンペーンでは、巨額の販促費を投じた結果、「一言で注文」機能の利用が約2億回に達した。しかし、その後、化粧品や衣料品などで商品リンクが正常に機能しないケースが相次いだため、大半の商品が取り下げられた。
京東は、AIショッピング専用のアプリ「京東AI購」を開発する方針を取り、2025年末からテストを開始している。自社開発のLLM「言犀(ChatRhino)」をベースに、AIと対話しながら商品を選べるようにした。ユーザーは欲しいものを一言で伝えるだけで、食品や飲料、衣類、日用品などを選ぶことができる。現在はまだテスト段階で、普及に向けた取り組みも始まったばかりだ。フードデリバリーなどの生活関連サービスにも対応しており、単なるショッピングアシスタントにとどまらないサービスを目指している。
業界全体の現状を見ると、現時点でAIに適しているのは、規格が標準化されており、購入時の判断にあまり手間がかからないカテゴリだ。例えば、一部のデジタル製品や日用雑貨、定番の食品などが挙げられる。一方、衣料品のシルエットや着用感、スキンケア商品の使用感などは、選ぶ人の主観に大きく左右されるため、文字や画像だけでAIが正確に判断するのは難しい。
こうした「AIショッピング」をめぐる競争は、中国に限ったものではない。例えばAmazonでは、AIショッピングアシスタント「Rufus」を提供している(米国では「Rufus」を終了し、生成AI「Alexa+」と統合した新ブランド「Alexa for Shopping」へ刷新)。対象商品と希望価格を指定すると、条件を満たす商品があった場合に、登録済みの支払い方法と配送先を使って、確認なしに注文を完了する「自動注文」が利用できる。注文後24時間以内であればキャンセルも可能だ。
もう一つの機能「Buy for Me」では、Amazonのショッピングアプリを通じて、他ブランドサイトで販売されている商品も購入できる。ユーザーが商品、配送先、送料などを含む合計金額、支払い方法を確認して承諾すると、システムが販売元のサイトで購入手続きを代行する。「Rufus」の自動注文機能とは異なり、「Buy for Me」では注文のたびにユーザーの確認が必要となる。
AIを活用したショッピングの手法は、まだ模索が続いている段階だ。参入するプラットフォームが増えるなか、AIが消費者の購入判断にどこまで関与できるのか、また、消費者がショッピングのどの段階までAIに任せるようになるのかが、今後の注目点となっている。
*1元=約24円で計算しています。
(翻訳・HU XIN)