スペースX式の「箸」回収に挑む 中国・深藍航天、大型ロケットで2027年初飛行へ
再使用型ロケットを開発する中国企業「深藍航天(Deep Blue Aerospace)」はこのほど、2回の資金調達で総額20億元(約460億円)近くを調達した。出資は、無錫市高新区創業投控集団(WNDVC)、無錫市創新投資集団(Wuxi Capital Group)など地方政府系ファンドに加え、毅達資本(Addor Capital)、海松資本(Oceanpine Capital)、上海自貿区基金(Shanghai FTZ Fund)、宝通科技(Boton)などが参加した。資金は再使用型ロケットの開発・商用化をはじめ、エンジン量産体制の構築、地上試験施設の建設、人材拡充などに充てられる。
ロケットの回収と再使用を安定して実現できる企業は、世界でも限られる。先頭を走る米スペースXの「ファルコン9」は、同じ第1段ブースターを数十回使用するなど、豊富な運用実績を持つ。中国では2026年8月19日、藍箭航天(LandSpace)の「朱雀3号」が打ち上げ用ロケットとして初めて陸上回収に成功し、商業宇宙開発の進展を示した。
深藍航天は2016年11月に設立され、液体酸素とケロシンを燃料とする再使用型ロケットに注力している。現在は2機種を中心に開発を進めている。
1つは中型ロケット「星雲1号(Nebula-1)」だ。低軌道への打ち上げ能力は4~6トンで、顧客の需要に応じた専用打ち上げや、複数の衛星を同時に搭載する相乗り打ち上げに対応する。2024年9月には、第1段の高高度からの垂直着陸を検証する飛行試験を実施したが、着陸の最終段階で異常が発生し、機体の一部が損傷した。回収技術の検証を目的とした試験で、軌道投入は伴っていない。

ロケット「星雲1号」1段目の200秒燃焼試験
もう1つは、低軌道衛星コンステレーションの構築を想定した大型ロケット「星雲2号(Nebula-2)」で、25トン級の打ち上げ能力を備える。2027年に初飛行を予定しており、箸のようなアームを使った回収方式で、1段目の回収と再使用を目指す。この回収方式は、スペースXの「スターシップ」が採用したことで広く注目を集めるようになったが、中国ではまだ技術検証の段階にある。

星雲2号の1段目には、推力130トン級のエンジン「雷霆(Thunder)-RS」を11基搭載する設計だ。推力の大きいエンジンを少数使うのではなく、多数のエンジンを組み合わせる方式を採用した理由について、創業者の霍亮氏は帰還時の推力を調整しやすくするためだと説明する。帰還時には機体が大幅に軽くなるため、11基のうち1~3基だけを稼働させれば、必要な推力に細かく合わせられるという。また、1基に不具合が生じても残りのエンジンで推力を補えるため、冗長性を確保できる利点もあるとしている。
一方、この方式はシステム統合の難易度を高める。複数のエンジンを連携させて始動・制御するほか、故障時には異常のあるエンジンを停止し、残るエンジンの出力を調整する必要がある。エンジン単体の試験が順調でも、機体全体で安定した飛行と回収を実現するには、さらに検証を重ねなければならない。現在、雷霆-RSは100秒、200秒クラスの燃焼試験を複数回実施している。単基での200秒試験では、想定する飛行中の燃焼時間をカバーする性能を確認したという。

雷霆-RSエンジンの燃焼試験
製造工程には3Dプリントなどを導入し、開発期間の短縮を図っている。関連する試験施設も自社で整備している。
霍氏は、投資家の評価軸が技術そのものから運用能力へ移りつつあると指摘する。「技術的なマイルストーンは入場券にすぎず、実際に顧客へサービスを提供できる能力で企業価値が決まる」と語る。
同社の当面の目標は、再使用型ロケットの安定した打ち上げ体制を確立することだ。打ち上げと衛星コンステレーションの両事業を展開するスペースXとは異なり、まずは打ち上げ事業に集中し、低コストで信頼性の高いサービスの実現を目指す。
*1元=約23円で計算しています。
(翻訳・畠中裕子)