レノボからセンスタイム AIユニコーン養成所「中国科学院」の力の秘密

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世界トップクラスのパソコンメーカーレノボ(聯想)、顔認証技術では世界の先端を走る商湯科技(センスタイム)。この2社に共通するのは何か?いずれも中国最高の科学研究機関である中国科学院とのつながりによって誕生し、世界的企業に育った点だ。この2社に限らず多くのAIベンチャーやユニコーンを生み出しているのが中国科学院。イノベーティブな企業を次々と輩出する力の源泉はどこにあるのか。

次世代AIチップを開発しているベンチャー企業「寒武紀智能科技(Cambricon)」が中国のハイテクベンチャーボード「科創板」への申請を準備している。同社は創業以来、同科学院から科学研究成果と資本の両面で支援を受けてきた、「中科院」の系譜に連なる企業だ。

寒武紀

ここ数年の人工知能(AI)ブームにおいて、同科学院が生み出した企業は寒武紀一社だけではない。よく知られている業界のジャイアント企業であるパソコン大手の「レノボ(聯想)」、スーパーコンピューター大手「中科曙光(Sugon)」、AI音声技術トップの「科大訊飛(iFLYTEK)」なども同科学院と関連がある。1984年、当時40歳の柳伝志氏と十数名の中国科学院計算所研究員は同研究院が投資した20万元(約30万円)を元手に北京で「中科院計算所新技術発展公司(Institute of Computing Technology, Chinese Academy of Science)」を立ち上げた。これがレノボの前身だ。

相次ぐ科学者から起業家への転身

2019年初め、ニューヨークに拠点を置く市場調査・分析企業CB Insightsは最新リポートを発表した。そのなかにグローバルAIユニコーン32社が含まれており、中国企業は10社がランクイン。そのうち前出の寒武紀や商湯科技に加え、「雲従科技(CloudWalk Technology)」、音声認識の「雲知声智能科技(Unisound Information Technology)」の4社が中科院とのつながりがある。

この4社の創業者はいずれも中国科学技術大学の出身者である。そのうち商湯科技の創業者、湯暁鴎氏は現在、中国科学院深圳先進技術研究院副院長を兼任している。雲従科技は2015年、中国科学院緑色重慶研究院から起業した。雲知声の初期の主要メンバーは中国科学院自動化研究所の博士で構成されている。寒武紀もまた中国科学院計算所から起業した企業の一社だ。

科学研究機関の所属である研究所は各分野の最先端技術を掌握している。そのため関連ベンチャー企業を生み出しやすい環境にある。中国科学院に属する100余りの研究所はここ数年でAI関連のプロジェクトや投資を手がけている。その多くがオートメーション化、コンピューター、マイクロエレクトロニクス関連の研究所だ。

政策支援の恩恵

中国科学院自動化所が多くの企業を生み出している背景には、理念と制度面でのサポートがある。

2016年、中国が提唱した「大衆創業、万衆創新(大衆の起業、万人の革新)」の大きな流れの中で、同自動化所は産業化の品質と効率の向上を目指し、「技術チームの離職および創業に関する中国科学院自動化研究所の暫定意見」(以下「暫定意見」と略す)を制定、新たなストック・インセンティブを実施した。同「暫定意見」は、科学研究チームが自身の力で成しえた技術的成果により起業する場合、同自動化所はその技術的成果の査定出資額の85%をインセンティブとして技術チームと創業チームに与える。離職・創業後三年以内であれば、状況に基づき随時研究所に復職ができ、給与も再支給する。創業資金は相応額のプロジェクトに使用したと見なし職位も与える。

中国科学院自動化所はこのような支援を通じ、技術者が離職・創業する形で研究成果を移転・産業化することを促している。

同計算所には別の力も働いている。古参の大手企業レノボ、中科曙光、「龍芯中科技術(Loongson Technology)」、「中科天璣数據科技(Golaxy)」のほかに、AIチップに特化している寒武紀、コンピュータービジョンをメインとした「中科視拓科技(SeetaTech Technology)」と汎用プロセッサなどを手がける「中科叡芯科技(SmartCore)」などのベンチャー企業も同計算所から誕生している。自動化所と同様、計算所も相応の施策を打ち出し研究成果の産業化を促進している。

2017年5月、同計算所は「I-Tech創新創業学院」を創設した。所長の孫凝暉氏は創設記念式典で、学院が科学者の創業を手助けする役割を果たす場所であるとの認識を示している。「セコイア・キャピタル・チャイナ(紅杉資本中国基金)」のパートナーである周逵氏、レノボグループ副総裁の宋春雨氏など第一線で活躍する9人の投資家、企業家、研究者が講師を務める。一期生には中科視拓の創業者・山世光氏、寒武紀の陳天石氏など12人がいる。

このほか、中国科学院声学所出身でAI音声をメインとする「声智科技(SoundAI)」および同半導体研究所出身で医療系ウエアラブル製品をメインとする「藍色伝感(BLlueBCI Sience and Tehnology)」などもここ数年の創業ブームの中で中国科学院の膨大な研究成果を産業化した企業だ。

まさに中国科学院各研究所が推し進めている一連の創業支援計画の恩恵を受け、若い研究者たちの多くが「転職」し、従来の科学研究畑から歩み出し産業研究開発へ参入、研究者から起業家へと転身している。各研究所や中国科技大学出身の若者は、研究所の研究成果を産業化する一方で、中国AI新興市場の中で重要な立ち位置を作り上げている。

作者:「深響」(WeCha ID:deep-echo)、張遙

(翻訳・lumu)

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