美団の生鮮ECが加盟店エリアを拡大 アリババも注視する地域密着型の小売サービスが新たな激戦地に

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美団の生鮮ECが加盟店エリアを拡大 アリババ・京東も注視する地域密着型の小売サービスが新たな激戦地に

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フードデリバリーを中心とした生活関連サービスを提供する「美団点評(Meituan Dianping)」の新たな主力事業がその姿を現しつつある。

生鮮食品の即時配送を行う「美団閃購(Meituan Instashopping)」の新サービス、生鮮EC「菜大全(Caidaquan)」が再び加盟店募集を開始した。募集計画によれば、今回加盟店を募集するのは南京市、鄭州市、天津市、長沙市、重慶市、東莞市、珠海市の7都市。すでに武漢市、佛山市、広州市、南通市、成都市、深圳市などに220店近くを展開している。

菜大全はいわば生鮮食品市場の運営代行だ。市場にブースを構える各販売業者の商品を統合し、品質管理や包装を行った上で、独自ブランドとしてデリバリープラットフォーム上で販売するというもの。運営に不慣れな販売業者の負担を軽減することができる。美団が展開するもう一つの生鮮食品EC「美団買菜」が自前のサプライチェーンと自社倉庫を利用しているのに対し、菜大全は加盟店方式を採用しており、配送の部分を美団が受け持つことになる。

加盟店方式といっても加盟金は不要。必要な支出は保証金3000~8000元(約4万5000~12万円)、出店費用や設備費などの固定費2~3万元(約30万~45万円)のほか通常の経費などで、初期投資は総額5~7万元(約75万~105万円)だという。菜大全は、美団系列の複数のアプリにリンクが貼られていることから、その戦略的な位置づけをうかがい知ることができる。

菜大全の開店に伴う初期投資 作図:36Kr

地域密着型の小売スタイルは、フードデリバリー、ホテル・旅行予約サービスに次ぐ三つ目の成長分野と見込まれている。中国のニュースメディア「晩点(LatePost)」によれば、美団閃購は今年の成約額1000億元(約1兆5000億円)を目指しており、傘下の重要事業である菜大全は目標達成に向け大きな役割を担うとみられるという。

事情に通じた人物によれば、美団閃購で昨年急成長したのが生鮮食品市場カテゴリで、その増加率は200%を超えているという。美団の2020年第1四半期決算を見ても分かるとおり、新型コロナ流行期に閃購を含む新事業グループの売上高は前年同期比4.9%増の41億7000万元(約630億円)となり、美団の事業グループの中で唯一増収となった。

オフラインの小売業は巨大な市場規模を誇るが、オンラインショッピングの浸透率は低く、既存事業の規模拡大も頭打ちに近づいている。今年に入りアリババや京東(JD.com)などの大手企業がこぞって地域小売の分野に力を注ぎ、新たな成長分野をつかもうとしている。

2020年4月、アリババ傘下のネットスーパー「天猫超市(Tmall Mart)」の事業グループが地域小売事業グループに格上げされた。フードデリバリーなどを行う地域生活サービス「餓了麽(ウーラマ)」のニューリテール事業も統合して、配送代行サービス「淘鮮達」が提携する地元スーパーと天猫超市をメインに、1時間以内・当日・翌日配送エリアで構成される「立体的な20キロ生活圏」を作り上げる。関係者によれば、同事業はアリババの張勇CEOがとくに関心を寄せるトッププロジェクトの一つだという。

同月、京東も既存のネットスーパー「京東超市」、消費財事業部、新チャネル事業部、生鮮スーパー「7FRESH」およびオンラインスーパー「1号店(YHD.com)」を統合した新たな事業グループを立ち上げている。それ以前から行っていた30分配送サービス「物競天択」と合わせて「30分で届く生活圏」の構築を目指している。

各社の戦略から明らかな通り、大手企業にとって地域小売は今年攻略すべき重点分野だ。菜大全が多くの都市で加盟店を増やし続ける中、小売業界にはまさに一触即発の緊張感が漂っている。
(翻訳・畠中裕子)

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