中国無人配送ロボット「Yours Technologies」が数億円調達 ヤマト傘下CVC出資

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無人配送ロボットの開発を手掛ける「優時科技(Yours Technologies)」が、シリーズAで数千万元(数億円)を調達した。出資者はヤマトホールディングスと独立系VCのグローバル・ブレインが共同設立したCVCファンド「KURONEKO Innovation Fund(KIF)」と「上海索道投資管理(Shanghai seekdource Investment Management)」のほか、既存株主の「英諾天使基金(Innoangel Fund )」「馳星創投(AISTAR FUND)」「Plug and Play China」「平陽復輝投資管理(Pingyang Fuhui Investment)」など。同社は2018年のシードラウンドで数百万元(数千万円)、19年のエンジェルラウンドで数千万元(数億円)を調達している。

優時科技は2018年3月に設立され、コンピュータビジョンを活用した低速自動運転ソリューションの開発を手掛けてきた。同社が開発した配送ロボットは、次世代物流や新小売(ニューリテール)の現場における「ラストワンマイル」で活用されている。市場参入の足がかりははティードリンク専門店の商品配達だった。商品の注文者はQRコードをスキャンして配送ロボットの扉を開錠し、商品を受け取る仕組みだ。事業者は人手に頼らず商品を配達できるだけでなく、来店客以外にもアプローチできるようになり、累計客数や売り上げの増加だけでなく付加価値づくりにもつながっている。

同社の配送ロボットは屋内外問わずに利用できる低速自動運転を実現し、走行可能範囲は半径3キロにおよぶ。45度の傾斜や10センチの段差を上ることもできる。

優時科技の配送ロボット

創業者の林錇森CEOによると、優時科技はここ3カ月で北京市内の商業施設や商店街など計50カ所余りへの配送ロボット導入契約を獲得している。また「鹿角巷(THE ALLEY LUJIAOXIANG)」や「本宫的茶(BEN GONG’S TEA)」をはじめ多くのティードリンク専門店とも独占契約を結んでいるという。

同社のコアコンピタンスは自社開発したコンピュータビジョンとIMU(慣性計測装置)およびGPS/INS(全地球測位システム/慣性航法装置)を組み合わせたシステムだ。光の強弱に関わらず、従来型の3D LiDARに替わって物体の3次元的輪郭の特徴を検出できる上、高精度な地図作成と自己位置推定機能によってレベル4クラスの低速自動運転を実現する。またワイヤレス充電を採用しているため、高温多湿などの悪環境下でも安全に給電することが可能で、安全性の確保とメンテナンスコストの低減を両立できる。

配送ロボットを手掛ける企業としては、米国の「Starship Technologies」や「Marble」「Nuro」などが知られている。中国国内では「普渡科技(PuduTech)」や「真機智能科技(Zhen Robotics)」「YOGO Robotics」「新石器(NEOLIX)」などがしのぎを削っている。

林CEOは「低速自動運転技術を採用した配送ロボット導入における最大の課題は、導入コスト、コンピューティングの負荷および消費電力をいかに抑えるかにある。導入コストの高いマルチレイヤー LiDARを利用した配送ロボットを中小企業に浸透させるのは難しい。一方、屋内向けの配膳ロボットに利用されているシングルレイヤー LiDARは、屋内外にまたがる地図作成と自己位置推定が難しい」と指摘する。

優時科技の配送ロボットはコンピュータビジョンを採用することで、技術的にもコスト的にも優位性を発揮している。マルチレイヤー LiDARに代わって高精度3D地図を作成でき、大型商業施設や商店街など広範囲にわたっての自己位置測定が可能になった。それに加えて価格は1万元(約16万円)と低く設定されている。

林CEOによると、優時科技は今回の資金調達後、現行の運営モデルを北京市のほか上海市、広東省広州市および深圳市などへも広げ、2021年には配送ロボット3000台の納品を目指すという。

優時科技は、グローバル・ブレインが初めて出資した中国スタートアップ企業となった。今回の出資決定についてグローバル・ブレインは「同社が実現したコンピュータビジョンによる低速自動運転ソリューションはコスト面で明らかな優位性があり、物流と小売におけるラストワンマイル市場でさらに事業を拡大する可能性を評価した」としている。(翻訳・田村広子)


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