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中国でEコマース業界が急成長するにつれ、商品の真贋鑑定や権利保護が大きな問題になってきている。消費者の間でも「高級品を買うなら鑑定が必須」との共通認識が広まった。中国最大のEコマースプラットフォーム「淘宝網(タオバオ)」の創業者ジャック・マー(馬雲)氏は過去に「偽造品は中国インターネット経済にとっての『がん』であり、アリババは必ずこれを克服する」と述べている。
大手プラットフォーム各社では近年になって商品の鑑定件数が伸びている。ソーシャルコマースプラットフォームの「得物(Dewu)」が実施したオンライン鑑定は累計3億6000万件に上り、昨年同時期から現在までの1年間だけでも1億件以上になる。美術品・骨董品のオークションプラットフォーム「微拍堂(Weipaitang)」が昨年10月末に発表した白書によると、商品の鑑定件数とサービス提供人数はいずれも年々倍増しているという。
現在、こうした鑑定作業は専門の鑑定士に頼っている状況だが、スキルの高い鑑定士の不足は業界全体の課題となっている。
2018年に設立された「図霊深視(TURING SENSE)」はAIを使った鑑定に取り組む。独自に開発したニューラルネットワークとデータ生成アルゴリズムで法人ユーザーや個人ユーザーにソリューションを提供する。コアプロダクトの「図霊鑑定(TURING AI)」はこれまでに500万点近い商品の鑑定を実施してきた。
現段階では法人ユーザーを中心に提携しており、フリマアプリ「閑魚(Xianyu)」、アリババのデジタル決済サービス「Alipay(支付宝)」、中国版TikTokのEC機能「抖音電商(Douyin EC)」、Eコマース大手JDドットコム(京東)のオークションサイト「京東拍売(JD Auction)」、高級品専門Eコマースプラットフォーム「寺庫(SECOO)」、鑑定・認証機関「中国検験認証集団(CICC)」などのプラットフォームにAI鑑定・査定機能を実装している。フリマアプリ大手の閑魚は21年8月から同社のTURING AIを品質検査の公式サービスに指定している。
プラットフォーム側からすると、鑑定サービスには2つの価値がある。1つはプラットフォームのブランド価値を高め、正規品にプレミアムがつくこと、もう1つは取引成立の確率が上がり、返品率が下がることだ。
TURING AIはミニプログラム(ミニアプリ)として個人ユーザーに向けてもリリースされた。商品を撮影してアップロードすると数秒で真贋を判定できるうえ、利用料も鑑定士に頼むよりはるかに安い。
図霊深視のAI鑑定機能は主要商品カテゴリーで99%の精度に達している。AI鑑定のあとに鑑定士が照合する方法を採れば精度は100%だ。商品のコンディション(劣化具合)や偽造商品とのすり替えが生じていないかも判定できる。
図霊深視は中国品質協会(CAQ)が主導する初の業界標準「人工知能商品鑑定団体標準」の起草にも参画している。また、中国検験認証集団深圳有限公司からAI鑑定機関として公式認定されると同時に、国家市場監督管理総局情報センター(SAMRIC)の子会社「中質信維(China Quality Information Maintenance)」などとも提携している。さらに同社は化粧品やスポーツウェア、スポーツシューズなどの商品カテゴリーで鑑定ミスがあった場合、鑑定料の100倍の額を補償金として支払うと定め、中国保険大手の中国人民保険(PICC)と共同で業界初のAIによる正規品保障保険を打ち出した。
図霊深視が鑑定するのは化粧品、スニーカー、スポーツウェア、バッグ、美術品・骨董品、ジュエリー、白酒(中国の蒸留酒)、腕時計などで、今後は漢方薬なども手がけていく計画だ。
鑑定事業を通じて取得した膨大な画像も新たなビジネスに活かせる可能性がある。それは生成系AIだ。同社のデータライブラリーは約5億枚の商品画像を収録しており、衣料品やアクセサリーのデザインに利用できる大規模モデル事業を展開するのに十分なデータ基盤を有している。すでに事業立ち上げに向けた模索が始まっているという。
図霊深視を創業した唐平中氏は科学畑から起業した代表的存在で、清華大学の准教授(テニュアトラック)であると同時に、米科学技術誌MITテクノロジーレビュー主催の「Innovators Under 35(35歳未満のイノベーター)」にも選出されており、大手企業のバイトダンス(字節跳動)やファーウェイでアルゴリズム部門のシニアアドバイザーなどを務めてきた。図霊深視の従業員数は約40人で、研究開発人員が60%以上を占める。
唐氏によると、図霊深視は設立からの数年は開発事業を重点としていたが、サービスが成熟し法人顧客との協業が進んだことで、昨年末には黒字に転換したという。近く、新たな資金調達を開始する予定だ。
(翻訳・山下にか)
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