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画像や動画用シナリオをAIで自動生成すると、マーケティング部署がこれまで2時間かけていた業務がわずか15分に縮まる。ChatGPTを使って取扱説明書などの資料を翻訳すると、パッケージ制作部署では翻訳料が年間40万〜50万元(約800万〜1000万円)も浮く。メール返信やメール支援機能にAIを導入すると、カスタマーサービス部署では業務にかかる時間を週に150時間分も省くことができるほか、広告担当部署では平均広告収入が8%増加し、開発所要時間は5時間から数分単位に短縮するという。
大規模言語モデルに代表されるAI関連技術が盛り上がりを見せた2023年、モバイル充電機器ブランドANKERなどを傘下に有する「安克創新科技(Anker Innovations)」(以下、Anker)も、社内でAI導入の取り組みを始めた。既存の職位に従事してきた従業員にリスキリングに取り組んでもらい、業務効率を上げて業務プロセスや業務連携方法を再構築することで、プロセス、方法、組織、人材など全方位にわたり「業務効率10倍アップ」を目指していく。
TikTok運営企業のバイトダンス(字節跳動)は今年3月に、自社のオフィスコラボレーションシステム「飛書(Feishu)」にChatGPTを全面導入した。Ankerも7月、マイクロソフトが企業向けサービス内で提供するGPT-4を導入し、グレーターチャイナ(大中華圏)でバイトダンスに次ぐ2社目の導入事例となった。
Ankerにとって、大規模言語モデルに関連する一連の技術は、従業員個人の業務効率を上げるだけでなく、従業員間のコミュニケーションや業務連携にかかるコストを大きく削減できるという利点がある。同社がAIを導入する狙いは業務効率を上げる以上に、業務プロセスを改善していっそう生産性を上げることだ。
AI生成コンテンツで業務プロセスを再構築
オンライン事業に重要な影響を与えるものの一つがカスタマーサービスの効率だ。Ankerには海外ユーザーも多いため対応言語も多いが、多言語対応はまさにChatGPTが活躍できる分野だ。
Ankerではすでにカスタマーサービスに関する大量のナレッジベースを蓄積してきた。同社はこの既存のナレッジを活かしてカスタマーサービスの高度なやり取りを実現し、ベクターデータベースに埋め込んで、大規模言語モデルにマッチングをさせている。
AnkerはもともとAIチャットボット「Shulex」を使っていたが、ChatGPTの多言語能力を加えれば応答の質が大きく向上することが分かった。最高品質とまではいかないまでも、業界の平均水準は達成できる。
同社は当初、初回のメールへの返信率を一つの物差しとした。しかしユーザーの習慣を考慮し、複数回のやり取りを通じて問題を解決することでユーザー体験を高める方向に転換した。一定期間の実施を経て、現在ではユーザーとの5往復以内のやり取りで問題を解決できるようになっている。 Shulexのチームと共同で取り組んだ結果、5往復以内で問題解決できる割合は92%にまで達した。
海外事業で重要な要素はオンライン広告の配信効率だ。Ankerは世界で事業を展開しており、さまざまな文化的背景を持つユーザーを惹きつける必要があるため、それぞれにターゲットを絞ったマーケティングや広告配信戦略を練らなければならない。ここでもGPTが実力を発揮する。
Ankerは3年前から広告戦略の「自動化」を目指してきた。初期にはRPA(ロボットを使った業務自動化)などを活用していたが、昨年に広告チームのメンバーらの経験を総括し、ルールエンジンをベースにした配信の意思決定システムを作り上げ、広告配信効果が10%上がったという。
GPTの機能を研究した結果、大規模言語モデルを使えば大量の関連データにアノテーション(注釈)やタグ、ディスクリプション(内容説明)が付与できる可能性があると考えた。さらに、当時注目されていた画像生成AI「Midjourney」、「Stable Diffusion」などの技術も合わせれば、広告制作や配信に使用する素材づくりも可能になり、スタッフがいくらか修正を加えるだけで広告効果がさらに上がるチャンスがあると判断した。
結果的にAnkerのこの判断が正しかったことが証明され、新システムの持つ価値が明らかになった。今年上半期、Ankerの広告はクリック率が約15%、コンバージョン(購入)率が約10%それぞれ向上したのだ。
世界的に有名な消費者向け電子機器メーカーのAnkerは現在、従業員数が3600人、年間売上高が140億元(約2800億円)を超えている。傘下に6ブランドを有し、取り扱う商品カテゴリーは20以上、サプライヤーは100社以上で、世界140カ国以上に商品を販売し、1億4000万人にサービスを提供している。同社がAIなどデジタルインテリジェンスの技術に注力しているのは、長期的な経済戦略によるものだ。
Ankerは今後3〜5年でスマートデバイスや海外進出をめぐる競争はさらに激しくなると見ている。このような環境下では組織や人材、またこれらの効率的な連携がより必要となり、デジタルインテリジェンスが重要な要素になってくると考えている。
(翻訳・山下にか)
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