中国話題のLLM開発「Moonshot AI」、アリババなどから10億ドルを調達 設立わずか1年でトップクラスへ

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中国で今最も話題の人工知能(AI)スタートアップ企業「月之暗面(Moonshot AI)」がこのほど、10億ドル(約1500億円)を調達した。出資者は、アリババグループや紅杉中国(HongShan、旧セコイア・チャイナ)、小紅書(RED)、美団(Meituan)、礪思資本(Monolith Management)など。

2023年に実施した前回の資金調達では、紅杉中国と真格基金(Zhen Fund)から2億ドル(約300億円)を調達した。今回の資金調達後、同社の評価額は約25億ドル(約3800億円)に達し、大規模言語モデル(LLM)を手がける中国AI企業のトップグループに入った。

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2023年3月に設立された月之暗面は、中国のLLM分野の鍵を握る企業だ。中心メンバーには、米グーグルの「Gemini」(旧Google Bard)や中国ファーウェイの「盤古NLP(Pangu NLP)」、北京智源人工智能研究院(BAAI)の「悟道(Wu Dao)」など数々のLLMの開発に参画した人物がそろう。

創業者の楊植麟氏は、中国で自然言語処理(NLP)を手がける35歳以下の研究者のうち、最も多くの論文が引用されており、LLMの中核技術「Transformer-XL」と「XLNet」に関する論文2本の筆頭著者にもなっている。共同創業者の周昕宇氏と呉育昕氏の論文も、グーグルの論文検索サービス「Google Scholar」で計1万回以上引用されている。

楊植麟氏

月之暗面は、設立から1年足らずで汎用的なLLMの開発からアプリの展開までを完了した。自社開発した1000億パラメータ級のLLMは、すでに訓練が終わっている。2023年10月には、最初の消費者向けプロダクトとして、漢字20万字の長文入力に対応するAIアシスタント「Kimi」を打ち出した。長文対応を支えるのは、過去の対話の「記憶」を保存する大容量のコンテキストウィンドウだ。

Kimiの発表により、コンテキストウィンドウの拡大をめぐる競争が巻き起こった。中国のAI企業各社は後を追うように相次いで関連技術を更新。米OpenAI(オープンAI)と米Anthropic(アンソロピック)も2023年11月、それぞれのプロダクトのコンテキストに新たな進展があったと発表した。

汎用LLMを手がける中国AI企業のトップグループはすでに鮮明になっている。月之暗面のほか、智譜AI(Zhipu AI)、MiniMax、百川智能(Baichuan Intelligent)および零一万物(01.AI)がすでに、評価額10億ドル(約1500億円)を突破した。

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月之暗面に出資した企業を見ても分かるとおり、汎用LLMを手がけるAIスタートアップに出資する投資機関の顔ぶれも変化しつつある。2023年はベンチャーキャピタル(VC)による出資が多かったが、24年に入ってからは大手企業の戦略投資が目立ち始めている。

大手各社は、複数のAIスタートアップに投資する戦略のようだ。例えば、アリババグループは月之暗面のほか、智譜AIや百川智能、零一万物にも出資。テンセントも智譜AI、百川智能、MiniMaxなどに出資している。

ここ1年でLLMのアルゴリズムが最適化され、訓練コストが大幅に低下したとはいえ、LLMの開発に巨額のコストがかかることに変わりはない。トップグループのAIスタートアップは、さらに多くの資金調達を目指している。

AI開発の焦点は現在、テキストだけでなく画像や音声など複数種類の情報を処理できる「マルチモーダルモデル」に移りつつある。グーグルは2月15日(米国時間)、最新のマルチモーダルモデル「Gemini 1.5 Pro」 を発表した。そのわずか数時間後にOpenAIが動画生成AI「Sora」を発表、60秒の動画が生成できるとあって再び世界を驚かせた。

テキスト主体のLLMに比べ、マルチモーダルモデルの訓練コストは高い。巨額の資金や多くの人材も必要になる。中国のAIスタートアップ各社がより多くの資金を獲得しようと努力しているのも、今後に備えてのことだ。月之暗面は現在、汎用マルチモーダルモデルの開発を水面下で進めており、2024年中の発表を予定しているという。

*2024年2月22日のレート(1ドル=約150円)で計算しています。

(翻訳・田村広子)

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