シリコン系負極材料の中国ベンチャー、年内に1000トン規模の生産ラインを建設 全固体電池向け製品も開発中

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次世代の電池材料を開発するベンチャー企業「深圳索理徳新材料科技(Shenzhen Solid New Material Technology)」(以下、Solid )がこのほど、シリーズAで数億元(数十億円超)の資金調達を実施した。長江三峡集団(CTG)傘下の江峡緑色基金と興湘資本(XingXiang Investment)の科学技術成果転化基金が共同で出資したほか、既存株主の投控東海(Toposcend Capital)と中信建投資本(China Capital Management)も追加出資した。資金は高性能電池材料の開発や生産ライン建設、運転資金の補填などに用いられる。

Solidは2019年11月に設立されたハイテク企業で、シリコン系負極材料や固体電解質材料の開発、生産、応用、販売を手がけている。現在、100トン規模でシリコン炭素負極材料を製造する生産ラインが稼働しており、1000トン規模の生産ラインの建設も進んでいる。すでに複数のトップ企業が提携の意向を示しているという。

リチウムイオン電池に使用される負極材料のうち、シリコン系材料はこれまで主流だった黒鉛材料に比べて理論容量が大きく、急速充電性能や低温特性に優れているため、これからの負極材料として注目され、市場でも急速に勢力を伸ばしている。業界調査機関・高工鋰電(GGII)によると、シリコン系負極材料の普及率は2024年までは5%にも満たなかったが、25年には10~15%に高まる見込みで、23~29年の年平均成長率は42%に達すると予測されている。

とはいえ、シリコン系負極材料はコストや充電時の体積膨張、導電性、初回充放電効率、サイクル寿命など解決すべき問題が多くあり、大規模な商用化には至っていない。Solidをはじめとする中国のスタートアップ企業はシリコン炭素材料に着目し、シリコン系負極材料の商用化という難題に取り組んでいる。

シリコン系負極材料の調製には複数の手法があるが、Solidが採用したのは化学気相成長(CVD)法だ。膨張率が高く、安定性に欠けるシリコン系材料の欠点を克服するため、多孔質炭素へのシリコン蒸着や自己修復型コーティングといった特許技術を駆使して、高エネルギー密度と長寿命を両立させることに成功、シリコン炭素負極材料の大規模活用に向けた基礎を確立した。

この手法で中心的な役割を果たす多孔質炭素は、シリコン炭素負極材料の安定性向上やコスト改善の鍵を握ると期待されており、シリコン炭素負極材料を開発する多くのトップ企業が採用している。同社の王麓COOによると、同社は長年にわたる研究の結果、多孔質炭素前駆体やシリコン炭素負極材料の構造活性相関に精通し、シリコン蒸着のプロセスで最適な構造を作り出すことができるという。

Solidはまた全固体電池の分野でも研究を進めている。現時点ではまだ研究開発の段階だが、酸化物系固体電解質(LATP)や硫化物系固体電解質(LPS)の合成およびポリマー電解質との結合、全固体電池製造に関わる技術などに注力している。

こうした成果を支えているのは、創業チームが全固体電池とコア材料の分野で長年培ってきた技術力だ。同社は全固体電池とコア材料に関連した発明特許32件、実用新案4件を保有している。

今後の展望について王COOは、年内に1000トン規模の生産ラインを完成させ、操業を始めることが目標だとし、引き続き研究開発と製品革新に力を注いで新エネルギー産業の発展に貢献したいと語った。

リチウムイオン電池用のシリコン負極材、生産拡大に注力する中国企業が存在感

*1元=約20円で計算しています。

(翻訳・畠中裕子)

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