「自ら考えるAIカスタマーサポート」提供、清華大発スタートアップが資金調達

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カスタマーサポート向けの人工知能(AI)エージェントを提供するスタートアップ「馴鹿AI(Xunlu AI)」(全称、北京馴鹿智能科技)がこのほど、6000万元(約12億円)の戦略的資金調達を完了した。出資者は、IDGキャピタルと盛大資本(Shanda Capital)。資金は技術開発やハイレベル人材の獲得などに充てられる。

馴鹿AIは、清華大学とスタンフォード大学の出身者らによって設立され、汎用大規模言語モデル(LLM)ベースの高度にカスタマイズされたAIアプリケーションの開発に注力する。現在は、さまざまな業界の企業にカスタマーサポートやセールスに特化したAIエージェントを提供し、コストダウンと業務効率化を後押ししている。

同社は、電子商取引(EC)や金融サービス、電気通信・インターネットサービス、教育・研修、物流、医療・ヘルスケア、観光、ホテルなど、各種業界向けのAIエージェントを開発。すでに複数の業界大手と提携し、目覚ましい成果を上げている。

オンライン消費が増加する中国では、AIカスタマーサポートのニーズも増え続けている。その市場規模は2023年に39億4000万元(約830億円)となり、27年まで年平均成長率22.6%で拡大する見込みだという。

AI技術、とくにLLMの成熟は、AIカスタマーサポート市場の拡大を後押ししている。LLMは優れた自然言語処理能力を備え、新たなシーンを学習して対応することができるため、AIカスタマーサポートが思考しながら対話することが可能になり、サービスの質が大幅に向上する。

馴鹿AIの共同創業者で最高戦略責任者(CSO)を務める周爽氏は「2022年11月にChatGPTが公開されてから、私たちはLLMを音声認識に活用するため、研究開発と投資を続けてきた。すでに、100%AIエージェントによるオンラインセールスやカスタマーサポートを企業に提供できるようになっている」と説明する。

周CSOによると、同社のAIエージェントは、語気やテンポ、用語選択が最適化されているため、人間同士に近い自然な対話が可能。突発的な状況が発生しても、企業ごとに高度にカスタマイズされたモデルとナレッジベースを基に、臨機応変な対応ができるという。

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また、ビフォーサービスからアフターサービスまで効率的に対応できるだけでなく、プリセールスの段階で自律的に顧客開拓もできる。馴鹿AIは、各企業の業務プロセスやオペレーションルール、プライベートデータなどを深く分析し、専用のAIモデルをオーダーメードすることで、それぞれの企業のニーズに完全に合致するソリューションを提供している。提供までの時間は、わずか1カ月以内と短い。

LLMは目覚ましい進歩を遂げたが、正答率の向上やハルシネーション(もっともらしい誤答)の解消が課題として残されている。これらの課題を解決するため、同社はビジネスシーンで繰り広げられる対話を自動的にテストするシステムを開発。すでに1000万件以上のデータをテストし、AIエージェントが複雑な問題に直面した場合でも、信頼できる回答を安定的に提供できるようにした。また、自動テストシステムやデータ管理システムには、AIアプリケーションの開発を最適化するツール「Prompt Flow」を組み込むことで、ハルシネーション問題解消にも成功した。

馴鹿AIのセールス特化型AIエージェントによって、すでに多くの企業が毎月数十万元(数百万円超)の売り上げアップを実現。また、カスタマーサポート特化型のAIエージェントも多くの企業に採用され、数百人のスタッフに代わって1日あたり数十万件の顧客データを処理している。

周CSOによると、同社のAIエージェントを採用した企業は業務効率が大幅に上がり、スタッフをAIエージェントに代えたことでカスタマーサポートのコストが4分の1以下に低減。激しい市場競争を勝ち抜く上で、AIエージェントが大きな力を発揮しているという。

馴鹿AIはこのほど、AIユニコーン企業の「百川智能(Baichuan Intelligent)」と戦略的提携を結び、カスタマーサポートやセールスに特化したAIエージェントの顧客獲得や市場展開を両社共同で進めていくと発表した。同社は今後も技術開発とプロダクトの改良を続け、より多くの企業の業務効率化とコスト削減を後押ししていく。

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*1元=約21円で計算しています。

(翻訳・田村広子)

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