「感覚密度は人の指先の800倍」 中国・Xense Robotics、触覚センサーでロボットハンドの限界に挑む

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ロボット向け触覚センサーを手がける中国スタートアップ「千覚機器人(Xense Robotics)」がこのほど、新たに数千万元(数億円超)を調達した。出資者は元禾原点(Oriza Seed)、戈壁創投(Gobi Partners)および小苗朗程(Langcheng Capital)。資金は技術開発、製品の改良、量産・納品の加速に充てられる。

千覚機器人は2024年5月に設立。マルチモーダルな触覚センシングと制御技術の研究開発に注力し、高解像度のマルチモーダル触覚センサーのほか、触覚センシング・制御のスマート化モジュールなどを提供している。創業者の馬道林氏は上海交通大学の准教授で、ロボット制御における「触覚と接触による空間センシングの構築」を提唱し、触覚に基づく把持物の高精度モーショントラッキングを初めて実現した人物である。

従来、視覚センサーに依存する手法は、光の強度や遮蔽物、視点の歪みなどの影響を受けやすく、取得データの精度に課題があった。一方、触覚ソリューションはこうした制約を克服し得るため、近年はエンボディドAI(身体性を持つ人工知能)の研究分野においてその優位性が注目されている。

触覚センサーは接触力の分布と大きさをリアルタイムに検知し、即座に高精度のフィードバックデータを提供する。これにより、ロボットハンドの把持力の調節、指の動きの最適化、運動軌道の調整などが臨機応変にできるようになり、操作の安定性と精度が向上する。

千覚機器人が開発したマルチモーダル触覚センサー「G1-WS」は、ロボットハンド専用に設計されたもので、マルチモーダルかつ高解像度の触覚情報を提供する。感覚受容器の密度は人間の指の800倍で、物体の微妙な特徴や変形を検知できるため、ロボットハンドのより細やかな作業を実現する。G1-WSは先に向かって細くなるくさび形で、先端の厚みはわずか5ミリ、狭小空間での複雑な作業にも対応可能だ。

たとえば試験管を運搬する際は、G1-WSが試験管の平滑度や脆性(ぜいせい)を検知し、中身の液体の動きをモニタリングする。それに基づいて把持力や角度を最適化して、液体の揺れを抑え、容器の破損や内容物の漏出リスクを軽減する。

中国の人型ロボットユニコーン企業・智元機器人(Agibot)がロボット学習データセット「AgiBot World」を構築した際も、G1-WSは高い性能でデータ収集に貢献した。

高精度触覚センシングアルゴリズムのテスト(画像提供:千覚機器人)

さらに注目すべきは、同社がこのほど発表した世界初の触覚シミュレーションツール「Xense_Sim」である。高精度な触覚データの取得には高コストが伴うことから、従来はデータ不足が触覚制御アルゴリズムの学習上のボトルネックとなっていたが、近年はシミュレーションによって生成された合成データがその突破口となっている。

Xense_Simは、曲線運動や接触時の力学特性を正確に再現でき、瓶のふたをひねる、ケーブルを抜き差しするなど、実環境に即した場面にも対応する。これにより、学習モデルの汎化能力の向上が大きく期待されている。

実測では、Xense_Simは毎秒50ヘルツの高速処理を維持した上で、シミュレーションの精度と即時性を確保しており、すでに米NVIDIAのロボット向けシミュレーター「Issac Sim」にも導入されている。

親指触覚センサー(画像提供:千覚機器人)

G1-WSおよびXense_Simはすでに智元機器人のロボットに実装され、精密組立やスマート製造、サービス現場といった分野で活用が進んでいる。また、小型化・モジュール化された視触覚センサーの量産出荷も始まりつつあり、実装現場へのデータインフラ提供に寄与している。

両社は今後も、「ハードウェア+シミュレーション+データ」の統合によるイノベーションを推進し、ロボットの精密制御や複雑環境への適応、合成データの活用に取り組んでいく方針だ。

*1元=約20円で計算しています。

(翻訳・田村広子)

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