設置10分、専門工事不要ーーバルコニー蓄電の中国新興、欧米の家庭用需要開拓
欧州ではエネルギー価格の高止まりを背景に、家庭用蓄電システムの需要が拡大している。一方で従来型システムは設置費用が高く、施工も複雑なため導入のハードルが高かった。こうした課題の解決策として注目されているのが、簡易設置が可能な「バルコニー蓄電システム」だ。
この分野に取り組む中国スタートアップ「臨閣能源科技(蘇州)」はこのほど、エンジェルラウンドで天空工場創投基金から数千万元(数億円規模)を調達した。同社は屋外用スマート家電ブランド「MOVA」のエコシステム企業として、プラグを挿せばすぐに利用できる家庭用蓄電システムに特化し、独自のAI(人工知能)電力管理技術で市場浸透を狙う。
設置10分、専門工事不要の「プラグ&プレイ」
臨閣能源は一般家庭のバルコニー設置を前提に技術開発を進めることで、安全性や耐候性、設置の容易さといった点で従来型システムとの差別化を図る。
最近発表した「MOVA LumeGret」シリーズは、太陽光発電と蓄電を一体化したシステムで、グリッドタイ(系統連系)型マイクロインバータを内蔵している。日中は太陽光発電によって家庭の電力系統へ直接電力を供給し、余剰電力は自動的に蓄電され、夜間や電力需要の高い時間帯、停電時などに活用できる。技術面の特徴は主に次の3点だ。
電池の選定:高エネルギー密度だが熱安定性に劣る三元系リチウムイオン電池ではなく、より安全性の高いリン酸鉄リチウムイオン(LFP)電池を全製品に採用。LFP電池は発火や爆発のリスクが低く、サイクル寿命も長いため、長期間にわたり頻繁な充放電が繰り返される家庭用蓄電システムに適している。
環境適応性:欧州の変わりやすい気候に対応し、セ氏マイナス20度から50度の範囲で作動可能。また、防じん・防水性能もIP67相当と高いため、屋根のないバルコニーやテラスでも年間を通じて安定的に稼働できる。
簡単な設置方法:欧州ユーザーのDIY(自分自身でやる)習慣に合わせた設計となっている。2本のネジだけで設備を壁に固定し、太陽光パネルを接続してプラグをコンセントに挿せば、最短10分程度で設置が完了する。
AI電力管理で競争優位性を確立
同社は、ユーザーが求めている価値は単なるハードウエア性能ではなく、導入コスト回収の可視化や電力使用の最適化にあるとみる。そのため「ハードウエア+アルゴリズム+エコシステム」を組み合わせたサービス展開を進めている。
MOVAのAIoT家電エコシステムと接続することで家庭内の電力使用データを常時モニタリングし、電気料金や利用習慣に応じてクラウド側のアルゴリズムが最適な電力利用プランを提示する。
さらにロボット芝刈り機などMOVAエコシステム内の機器に対してアプリ経由で電力配分を行うことも可能としている。
同社の沈洪錦総裁は、今後の競争の焦点は電池コストやインバータ効率ではなく、電力を効率的に分配するスマートサービスに移行すると指摘する。
欧米中心のビジネス展開
BloombergNEFは、世界のバルコニー蓄電市場は2025年に50億ドル(約8000億円)を突破し、年平均成長率は30%を超えると予測している。欧州の複数の国で規制が緩和され、米国でも州単位での市場開放が進むなか、バルコニー蓄電市場は今まさに急拡大期に入ろうとしている。
臨閣能源は複数容量帯の製品ラインを展開する計画で、2026年4〜6月期には欧州市場で「MOVA LumeGret」のほかスマートメーターや充電スタンドなど周辺機器の投入を予定している。MOVAの販売チャネルを活用し、MediaMarktやSaturn、OTTO、OBI、Bauhaus、Amazonなど欧米の主要ホームセンターやECサイトを通じて本格展開を開始するという。
*1元=約23円、1ドル=約159円で計算しています。
(36Kr Japan編集部)