SiC切断の素材ロスを半減 中国新興、「8枚分から9枚取る」レーザー装置を開発
電気自動車(EV)やデータセンター、産業電化が急速に進むのに伴い、パワー半導体の需要も拡大している。次世代の半導体材料として炭化ケイ素(SiC)が注目を集めるようになっているが、製造コストの高止まりにより大規模な普及は思うように進んでいない。
この課題の解決に挑むスタートアップ企業がある。産業用レーザー加工機を開発する「中微精儀」(深圳市)だ。同社はこのほど、追加のエンジェルラウンドで創維投資(Skyworth Venture Capital)から数千万元(数億円規模)を調達した。資金は主に市場開拓や生産能力の拡大、新製品の開発に充てられる。
2024年設立の中微精儀は、SiCインゴット(結晶の塊)の切断やダイヤモンドの加工、超精密加工に使うレーザー加工機を手がけている。創業者の陳景煜氏は特定用途向け集積回路の開発に長く携わってきた。チーフサイエンティストの孫洪波氏は、中国科学院の院士で清華大学の教授を務める。
中微精儀は一般的なレーザー加工機メーカーとは一線を画す。装置の製造にとどまらず、「レーザー精密加工の技術基盤を提供する企業」と自社を位置づける。基礎原理の研究からプロセス開発、製品化までを網羅しており、すでに複数の顧客による製品検証の段階に入った。
主要事業は、SiCウエハー向けレーザー切断装置だ。SiCウエハーは主流が6インチから8インチへと移行しつつあるが、従来の切断方法では産業の高度化を実現するのが難しいうえ、レーザー加工機の市場も、長らく欧米や日本の大手メーカーが独占してきた。
半導体業界がコスト削減を進めるうえで大きな課題となっているのが、ウエハー切断時の素材ロスだ。ダイヤモンドに近い硬度を持つSiCは加工が極めて難しく、これまでは切断工程で大量の素材ロスが生じ、製造コストを押し上げてきた。
中微精儀は独自に開発したパルス・プログラマブル技術とクラック誘導技術によって、切断工程の素材ロスを40マイクロメートル(㎛)以下に抑えた。業界平均の約80〜120μmを大きく下回る水準だ。つまり、同じインゴットから、より多くのウエハーを切り出せる。同社によると、従来の方法でウエハー8枚分のインゴットから9枚を作れるといい、SiCの価格競争が激しさを増すなか、大きなコスト削減につながるという。
同社のレーザー切断装置は、設置後すぐに量産を開始できる。1枚の切り出しにかかる時間は6インチで15〜20分、8インチで25〜30分という。陳氏によると、開発部門はすでに、12インチの超薄型ウエハーの切断時に素材ロスを1μm以下に抑える技術の検証を終えた。

自社開発のSiCレーザー剥離装置で加工した6/8/12インチのSiCウェハーを掲げる中微精儀のチーム
レーザー加工技術は切断工程のほかに、SiCウエハーの薄化工程にも活用されている。従来は一般的に研削や研磨によって材料を除去していたが、レーザー剥離技術なら材料の再利用につながる可能性があり、製造コストのさらなる削減が期待できる。
また、ダイヤモンド加工機も手がけており、単結晶・多結晶ダイヤモンドの切断、剥離時に黒鉛化させない加工技術を開発した。これにより、黒鉛化した表面を研磨する工程を省けるという。
さらに、レーザー精密加工技術を量子コンピューター分野にも広げようとしている。量子チップ向けの加工装置はすでに複数の顧客が購入の意向を示しており、6月から生産と試験を進め、今年後半に納品を始める計画だ。
*1元=約23円で計算しています。
(翻訳・大谷晶洋)