ロボットの「見えない手」、永久磁石でサブミリ測位 Ommoが数十億円調達

空間知能を手がけるスタートアップ「Ommo Technologies」はこのほど、シリーズAで数千万ドル(数十億円)を調達した。香港鼎珮集団(VMS Group)などが出資を主導し、康君資本(Bayland Capital)も参加。資金は主に、位置決めシステムの技術改良や量産体制の構築のほか、エンボディドAI(身体性を持つ人工知能)・先進製造・医療分野などでの商用化に充てられる。

Ommoはテキサス州に本社を置き、永久磁石を使った3次元位置決め技術を開発する。創業者兼最高経営責任者(CEO)の鄭敏傑氏は、米セントルイス・ワシントン大学の出身。中核メンバーには米アップルやインテル、韓国サムスン電子などの出身者が名を連ねる。

ロボットが稼働中に狭い空間に入ったり、ロボットハンドの指同士が重なると、視覚や力覚のセンサーが十分に機能しなくなり、自分の手の位置を認識できなくなることがある。同社はこの課題に対処するため、永久磁石を使う位置決め技術を独自に開発した。

これまで一般的だった電磁式位置決めはコイルによって生まれる磁場を利用するが、同社は永久磁石を回転させて特徴的な磁場を作る技術を開発し、コイルのサイズやコストの問題を解決しただけでなく、金属干渉や電磁機器が位置決め精度に及ぼす影響も大きく低減。独自の磁場エンコード技術やアルゴリズムを組み合わせることで、環境からの干渉をリアルタイムで認識しながら誤差を補正する高精度な位置決めを可能にした。

このシステムは、小型磁気センサーが回転する永久磁石から生じる磁場信号を検知し、それをアルゴリズムが6自由度(6DoF)の位置・姿勢データとして処理する。位置決め精度はサブミリメートル級で、磁気センサーのサイズは最小約0.8ミリメートルと極めて小さく、ロボットのエンドエフェクタやウェアラブルデバイス、医療機器などに組み込み、遮蔽空間や狭小空間、干渉の多い環境で活用できる。

この基盤技術をベースに、磁場解析から空間認識、センサー、精密機械、電子システム、量産化までの技術をカバーする総合的な開発体制も構築した。創業者の鄭敏傑氏によると、設計の初期段階から生産コストも考慮しており、磁石の材料は電気自動車(EV)のサプライチェーンを活用して量産を実現し、センサーの開発にも民生用電子機器の成熟したサプライチェーンを活しているという。

製品の商用化ではまず、医療用ナビゲーションシステムに参入した。手術室は環境が高度に管理され、極めて高い精度が求められるため、位置決め技術の性能を検証するのに適しているという。医療機器産業の国際規格ISO 13485に準拠した品質管理体制を構築し、すでに世界で脳神経外科や整形外科、歯科向けの医療機器メーカー100社以上と提携している。複数の製品が医療機器認証の段階に入っている。

医療分野のほか、ヒューマノイドなどのロボットを対象としたエンボディドAI向け製品の開発にも力を入れている。ロボットが物をつかむ、差し込む、ひねるといった作業を担うようになるなか、エンドエフェクタの位置や姿勢の誤差が作業の成否を大きく左右するため、ロボットメーカーの間では高精度な位置決め技術への需要が高まっている。今年に入り、複数のAI企業との提携も進み、データ収集向け製品の展開を加速している。

一方、品質の高い実機データの不足も課題だ。同社は動画や慣性計測ユニット(IMU)、モーションキャプチャなどの手法ではなく、永久磁石を使う医療用グレードの位置決め技術を使って、ロボットに連続的かつ高精度な6DoFデータを収集させることを目指し、磁気センサー搭載のデータグローブをリリース、さらに複数のAI開発企業とも提携した。

鄭氏は、大規模言語モデル(LLM)がロボットの「脳」で、ロボットアームやグリッパを「身体」とするなら、位置決めシステムはセンサーと動作をつなぐ「神経」の役割を担っていると説明。将来的には、低コストで安定した空間知能が、エンボディドAIを発展させる重要なインフラになるとの見方を示した。

*1ドル=約160円で計算しています。

(翻訳・大谷晶洋)

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