中国Violoop、PCにAIの「目と手」を外付け API不要で既存ソフトを操作
生成AIの役割が、「質問に答える」ことから「人に代わってPCを操作する」ことへと広がりつつある。AIエージェントは、ユーザーの目的を理解してタスクを分解し、さまざまなツールを使い分けながら、メール処理や資料整理、データ入力などをこなせるようになってきた。
こうした流れのなか、中国のあるスタートアップは、既存のPCにAIを「外付け」するという独自のアプローチを選んだ。
AIハードウェアを開発する深圳発メーカー「本惟無界科技」はこのほど、新たに数億元(数十億円)を調達した。出資には聯想創投(レノボ・キャピタル)、藍馳創投(Lanchi Ventures)、中金保時捷(CICC Porsche Fund)などが参加した。
同社は9月中旬に初のAI端末製品「Violoop」を海外市場に投入し、クラウドファンディングを通じて販売している。中国市場でも小規模な販売を予定している。現在、すでに約1万2000人の海外ユーザーが予約金を支払っているという。
Violoopは、携帯ゲーム機ほどの大きさのデバイスだ。HDMIとUSBでPCやディスプレイに接続でき、ドライバーのインストールは必要ない。画面から視覚情報を取得し、キーボードやマウスを使って操作を実行する。つまり、一般的なPCにAIの「目」と「手」を取り付けるようなものだ。
これまでのソフトウェア型AIエージェントとは異なり、Violoopは、AIがPCの画面を理解して既存のソフトウェアを操作する。そのため理論上は、外部連携用のAPIを持たない従来型ソフトウェアや企業の社内システムでも、画面とキーボード、マウスで操作できるものであれば、AIによる自動操作の対象にできる。
ユーザーの指示を待たずに動く「自律型AI」

現在、多くのAIエージェントは、ユーザーから指示を受けて初めてタスクを実行する。Violoopはさらに一歩進み、AIがユーザーの作業状況を把握し、次に必要なタスクを先回りして提案することを目指している。
具体的には、表示されている画面や作業履歴、操作パターンを継続的に把握し、次に必要な作業を先回りして準備する。例えば、メールや表計算ソフト、CRM(顧客管理システム)の間で情報を転記している場合、現在のタスクを認識し、実行可能な提案1〜2件を前もって提示する。複数のソフトウェアを使う複雑なタスクでは、アプリ間を行き来しながら操作を続けることも可能だ。
長期的には、AIを3段階で進化させる構想だ。まず、ユーザーやプロジェクト、ファイルに関する長期記憶を形成する。次に、ユーザーの情報検索やタスク処理、判断の下し方を学習し、繰り返し行われる操作をワークフローとして蓄積する。最終的には、こうしたデータを使って学習を重ねることで、「使うほど進化する自分専用のAI」を実現する。
Violoopはすでに「作業履歴の取得→長期記憶の形成→ユーザーに合わせて進化」という流れを構築。タスクの理解・分解やPC操作などに特化した独自AIモデルの開発も進めているという。
物理ボタンでAIの操作を承認

一方、AIがPCを直接操作するようになれば、誤操作や情報漏洩などセキュリティー面のリスクも大きくなる。
Violoopは「ローカル優先」で処理するよう設計されており、画面の元データや長期記憶は主にデバイス上で処理する。複雑なタスクの場合は、ユーザーが選択したClaude、GPT-5、Geminiなどのクラウド型AIモデルに、処理済みのコンテキストのみを送信し、画面の元データを継続的にアップロードしないようになっている。
さらに特徴的なのが、AIが勝手に操作を実行しないよう、ユーザーの承認プロセスを加えた点だ。デバイスには独立したセキュリティチップと確認用の物理ボタンを搭載しており、AIが操作内容を準備しても、実行するにはユーザーが物理ボタンを押して承認する必要がある。これにより、AIがユーザーの知らないうちに操作を完了することを物理的に防げる。
初代デバイスは海外で699ドル(約11万円)で販売する予定で、中小企業の経営者や専門職、テックユーザーを主なターゲットとする。ソフトウェアは複数のAIモデルとのAPI接続に対応するほか、独自のAIモデル利用プランも提供する。
発売後には、PC操作に特化した独自AIモデルも投入する計画だ。Violoopが目指すのは、単なる外付けAIデバイスではない。「ハードウェア+デバイス上で動くAIモデル+個人の作業データ」を組み合わせ、使い続けるほどユーザーに適応する「自分専用AI」の実現を狙う。
1ドル=155円で計算しています。
(編集・36Kr Japan編集部、翻訳・HU XIN)