中国新興、AIでハード設計を自動化 図面から物理検証・製造まで

産業用の設計AIを開発する中国スタートアップ「設序科技(Design Order)」はこのほど、シリーズBで1億元(約23億円)余りを調達した。深圳新産投私募股権基金管理や合鼎共投資のほか、既存株主の涌鏵投資(Yonghua Capital)などが出資した。資金は市場開拓や事業の中核を担うAIモデルの開発に充てられる。

近年、オフィス業務やソフトウエア開発ではAIの活用が広がる一方、ハードウエア開発は依然として専門のエンジニアに大きく依存している。製品を量産するまでには、形状設計に加えて構造強度や放熱、流体、磁場などの物理特性を検証し、最終的に量産が可能な設計かどうかを確認する必要がある。従来はCAD(コンピューター支援設計)やCAE(コンピューター支援エンジニアリング)、CAM(コンピューター支援製造)など複数のソフトウエアを使い、設計と検証を繰り返すのが一般的だった。

設序科技は、この一連のプロセスをAIで自動化することを目指す。従来の3D設計や2D製図ツールをAIエージェントへと進化させ、設計からシミュレーション、製造までをカバーした産業用AIシステムを構築。ハードウエア設計向けAIエージェント「則形AI」としてリリースした。

「則形AI」のプロセス全体は3つのステップに分かれている。まず「形状設計AI」が要件に応じた3D構造を生成し、次いで「物理AI」が製品の強度や剛性、流路、磁場などの物理特性を解析。最後に「製造AI」が生産工程の実現可能性を判断し、そのまま生産現場で利用できる製造図面を作成する。

特に注力しているのが物理AIだ。産業用AIには「図面を書く」だけでなく、その設計が成立するか「正しく判断できる」ことが求められる。同社は物理法則や工学的な知見をAIモデルに組み込み、設計案の物理特性を計算・検証できる仕組みを構築した。

同社によると、2026年上半期の契約額は前年同期比で約70%増加し、年間では前年比ほぼ倍増の2億元(約46億円)近くに達する見込みだ。このうち、最終的な成果物を提供する「RaaS(Result as a Service)」モデルが売上高の約3分の1を占めており、多くの企業が設計ツールを導入するだけでなく、AIが生成した設計成果そのものを直接調達する段階に移っていることを示している。

現在、「則形AI」は自動車や電子機器、エネルギーなどの分野で導入が進んでおり、宇宙産業やエンボディドAIなど新興分野でも導入が拡大している。顧客には中国自動車大手の東風汽車(Dongfeng Motor)や宇通客車(Yutong Bus)、鉄道車両大手の中国中車(CRRC)、自動車工場の設計などを手掛ける中汽工程(China Automobile Industrial Engineering)などがある。

車の図面設計に生成AI、数分で100枚 中国・設序科技

今後の重点分野として、海外展開を強化する方針だ。設序科技は26年を海外展開の本格化に向けた年と位置づけ、最初の市場としてドイツに進出した。欧州連合(EU)のデータ規制に対応し、すでに顧客を獲得したという。26年下半期にはEU内で約10社の新規獲得を目指し、27年は日本や韓国、東南アジア市場への展開も開始する計画だという。

創業者の呉泳栄CEOは、AIがエンジニアの仕事を奪うのかという問いに対し、今後考えられるのは「エンジニアがAIを活用して仕事を進める」ことであり、「AIがエンジニアに取って代わる」わけではないとの見方を示す。

AIはモデリングや製図、シミュレーションなど定型的な作業を大量にこなすことができるが、コストや性能、公差などを踏まえた最終的な決定については、やはり経験を積んだエンジニアの判断が欠かせないという。呉CEOは、今後3~5年で産業データの蓄積とAIモデルの性能向上が進めば、ハードウエア開発でもAIエージェントの活用が本格化するとみている。

*1元=約23円で計算しています。

(翻訳・畠中裕子)

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