全固体電池だけが「次世代」ではない 清華大教授が語る「リチウム金属電池」の実用化

電気自動車(EV)向けの次世代電池として、全固体電池への期待が高まっている。日本ではトヨタ自動車と日産自動車が、2027~28年ごろの実用化を目指す。中国の車載電池大手、寧徳時代新能源科技(CATL)とEV大手の比亜迪(BYD)も量産に向けた取り組みを加速している。

一方、清華大学の張躍鋼教授はこのほど36Krの取材に対し、全固体電池だけが選択肢ではないと指摘した。液体の電解質を残し、負極にリチウム金属を使う電池の方が、先に実用化される可能性があるという。張教授は、まずドローンなどへの採用が進み、性能がさらに向上した段階で自動車向けに広がるとみている。

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「電解質」か「負極」か、次世代電池の2つのアプローチ

張教授

張教授によると、全固体電池とリチウム金属電池は、そもそも分類する軸が異なる。全固体電池は電解質を液体から固体に置き換える。一方、リチウム金属電池は、負極材料として現在広く使われている黒鉛などに代わり、リチウム金属を使う。両者は対立する技術とは限らず、将来的には組み合わせることも可能だという。

電池にどれだけのエネルギーを蓄えられるかは、正極と負極の材料に大きく左右される。全固体化するだけで高いエネルギー密度が得られるわけではない。張教授は、全固体電池の開発を難しくしている要因として、固体電解質がほかの材料と接する「界面」の問題を挙げた。

まず問題となるのが正極の内部構造だ。正極は細かな粒子状の活物質が集まってできているため、液体の電解質ならその隙間に難なく浸透できるが、固体電解質では粒子との十分な接触を保つことが難しい。イオンを通しやすくするために固体電解質を増やせば、今度はエネルギーを蓄える活物質の占めるスペースが減ってしまう。

もう一つの難所が、負極と固体電解質の境界部分にある。充放電を繰り返すうちに、リチウムが枝のように析出する「デンドライト」が生じ、内部のショートを引き起こす恐れがある。張教授は、固体電解質にも微細な欠陥があり、それに沿ってリチウムが成長し得ると説明する。このほか、材料同士の接触保持や界面の抵抗も課題だ。

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まず「空を飛ぶ」用途から

そこで、張教授がまず実用化の可能性が高いとみるのが、液体の電解質とリチウム金属負極を組み合わせた電池だ。ただ、この方式もデンドライトへの対策が欠かせない。電解液に添加剤を加え、リチウム金属の表面に保護膜を形成して、充放電で傷んだ部分を補修する方法などが研究されている。ただし、補修が続けば電解液も消費されるため、寿命を延ばすことが課題となる。

張教授によれば、重量当たりのエネルギー密度が500Wh/kg級の製品では充放電を300回超、400Wh/kg級の製品では約600回繰り返せる例が出ている。今後2~3年で400Wh/kg級のリチウム金属電池のサイクル寿命が1000回以上に延びれば、自動車メーカーによる評価に進む可能性がある。500Wh/kg級でも700~800回に達すれば、車両への搭載試験も視野に入ってくるという。

実用化の順序は、電池に何を求めるかで決まる。ドローンや電動垂直離着陸機(eVTOL)では、電池が軽くなれば航続距離や積載量の改善に直結する。張教授は、こうした航空用途が先行し、次にロボット、最後にEVへ広がると予想する。ロボットでも稼働時間と重量は重要だが、自動車に搭載するには、さらに長い寿命と信頼性の検証が必要になる。

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(翻訳・36Kr Japan編集部、校正・畠中裕子)

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