ライブコマース特化型のMCNが誕生 TikToKらを主戦場に

36Kr Japan | 最大級の中国テック・スタートアップ専門メディア

日本最大級の中国テック・スタートアップ専門メディア。日本経済新聞社とパートナーシップ提携。デジタル化で先行する中国の「今」から日本の未来を読み取ろう。

スタートアップ注目記事

ライブコマース特化型のMCNが誕生 TikToKらを主戦場に

36Kr Japanで提供している記事以外に、スタートアップ企業や中国ビジネスのトレンドに関するニュース、レポート記事、企業データベースなど、有料コンテンツサービス「CONNECTO(コネクト)」を会員限定にお届けします。無料会員向けに公開している内容もあるので、ぜひご登録ください。

原文はこちら

セミナー情報や最新業界レポートを無料でお届け

メールマガジンに登録

続きを読む

新型肺炎が今年の実体経済に影響を与えた結果、近年登場したライブコマース(ライブ配信による商品販売)がより一層の盛り上がりを見せている。中国大手家電メーカー格力電器(GREE)の董事長である董明珠氏や旅行予約サイトTrip.comの創業者である梁建章氏などが次々と自社製品のライブ配信を実施しているほか、有名人の参入も始まっている。

有名人によるライブ配信には現在2種類のタイプがある。一つは有名人が自分自身で定期的にライブ配信を行なうもの(李湘氏や王祖藍氏など)、もう一つは有名人がライブ配信にゲストとして参加し、ブランドのPRまたは自身のプロジェクトの宣伝を行うものだ。

有名人のライブ配信にポテンシャルを見いだした「蘭渡文化(Lando)」と「魔筷科技(Mockuai)」は先日、有名人専門MCN(マルチチャンネルネットワーク)「魔碟伝媒(Modiechuanmei)」を共同設立した。

蘭渡文化は2014年に設立され、女性向けのショート動画から始まり現在はシリーズCでの資金調達も終えたクロスメディア・コンテンツマーケティング会社だ。映画・テレビ会社、番組制作会社、芸能プロダクションまたはスタジオに対してエンタメコンテンツのマーケティング、ファン運営、ニューリテールにおけるマーケティングサービスを提供している。2018年にはアイドル選抜番組「創造101」が大ヒットした。

また魔筷科技も同じくシリーズCでの資金調達を終えており、ショート動画アプリ「快手(Kuaishou、海外版はKwai)」、電子商取引(EC)大手「唯品会(VIP.com)」およびテンセントなどが同社に戦略投資を行っている。魔筷科技は2015年に創業した当初、主にeコマースのSaaSシステムやサービスを提供していたが、2018年に快手のプラットフォームに進出し、インフルエンサーのeコマースにSaaSシステムを提供した上で商品供給も手配しており、現在は一定のサプライチェーン能力を獲得している。

こうした背景のもと、魔碟伝媒は潤沢な有名人リソースおよび強力なEC運営・商品供給能力を獲得している。

とはいえ、MCNは今日、サクラ疑惑や収益性という問題に直面しているほか、非常に激しい競争にさらされている。あるデータによれば、中国のMCNは昨年2万社を突破し、過去3年間のMCNの総和をはるかに上回った。なぜこの期に及んでこの業界に参入する企業が多いのだろうか。

蘭渡文化の創業者兼CEOの陸婷婷氏によれば、MCNに参入した2019年当時、同社はアイドル以外で初の有名人となった薇婭(viya)にサービスを提供し、そうしたインフルエンサーによるライブ配信の巨大な商業価値を実感したという。タオバオ(淘宝)でのライブコマースはすでに非常に成熟している一方、快手や「抖音(douyin、海外版は「TikTok」)」をはじめとするその他eコマースは発展初期の段階にあると陸氏はみている。

「一見するとMCNの競争は激しいが、よくよく見ると快手や抖音を扱うMCNはほとんどライブコマースを手掛けておらず、ほとんどがコンテンツ中心」であると陸氏はいう。

コンテンツを扱うMCNとライブコマースを扱うMCNでは手法も異なる。コンテンツでは商品の紹介や宣伝が主となり、広告費用を収益としている。一方、商品を売りたい顧客はいずれもMCNに対してCPS(Cost Per Sale)を要求するが、数字の達成は容易ではないため、MCNは総じて焦りを感じている。陸氏は、快手や抖音で本格的にライブコマースを手掛けるMCNは依然として少数であり、現在は参入の大きなチャンスだが、この時期は長くは続かないとの考えを示した。

魔碟伝媒は具体的に以下の三点に力を入れている。

・スーパーインフルエンサーの育成:蘭渡文化は本来有名人やインフルエンサーのPRに長けているため、魔碟伝媒はトップクラスのインフルエンサーと契約し、彼らがスーパーインフルエンサーになるサポートを行う。

・アイドルのライブ配信ルーム作成:ライブ配信に協力的で販売能力が高く、ファンの年齢や好みなどの属性とも合致しており、長期的なライブ配信に前向きなアイドルを選び出し、専門のライブ配信ルームを作成する。

・ライブコマース専用バラエティ番組の立ち上げ:バラエティ番組3本の立ち上げを計画しており、中には1億元(約15億円)超を投資する番組も。今年中に放送開始を予定している。

魔碟伝媒は現在3~5人のトップインフルエンサーと契約し、快手で毎週3~5回のライブ配信を行なっており、いずれも黒字だという。このほか、李維嘉、汪東城、張芸京、陳翔、弦子、王菊、厳屹寛、杜若溪(敬称略)といった有名人も獲得しており、うち一部有名人とは年間独占枠組契約を結んだ。

商品のサプライチェーンに関しては主に魔筷科技が担当しており、販売商品は食品、コスメ、日用品を中心に数十万SKUに達する。販売効率向上のため、魔筷科技は専門技術チームを立ち上げ、ユーザー属性や商品属性、ライバーの特徴および過去データを分析し商品選定に生かしているという。

MCNが長期的な発展を遂げるには、事業者に対しホンモノの価値を提供することが欠かせない。魔碟伝媒は初期段階において快手にウエートを置く計画であり、今年はviyaや李佳琦に並ぶ超有名ライバーの育成に加え、ランキングトップ5に入るインフルエンサーを最低2~3人は育成したいと考えている。今年の同社の売上高は5000万元(約7億5000万円)を超える見込みだ。(翻訳・神部明果)

36Kr Japanで提供している記事以外に、スタートアップ企業や中国ビジネスのトレンドに関するニュース、レポート記事、企業データベースなど、有料コンテンツサービス「CONNECTO(コネクト)」を会員限定にお届けします。無料会員向けに公開している内容もあるので、ぜひご登録ください。

原文はこちら

セミナー情報や最新業界レポートを無料でお届け

メールマガジンに登録

関連記事はこちら

関連キーワード

セミナー情報や最新業界レポートを無料でお届け

メールマガジンに登録