中国版テスラ「NIO」がスマホ事業参入か 業界の実力者迎え足場固め

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中国の新興電気自動車(EV)メーカー「NIO(蔚来汽車)」がスマートフォン事業を立ち上げたことが、複数の関係者の話で明らかになった。指揮を執るのは美顔アプリ運営会社「美図(Meitu)」のスマホ事業の元総裁・尹水軍氏だという。

「すでにプロジェクト始動からはしばらくたっており、現在は広東省深圳市を拠点に採用活動を展開している」と関係者は語る。求人サイトでNIOの求人情報を検索すると、確かにスマホ関連の技術職が大量に募集されていた。

求人サイトに掲載されたNIOのスマホ関連の求人

スマホ業界と自動車業界の境界線は薄れつつある。スマホ大手のシャオミ(小米)とファーウェイ(華為技術)は2021年、自動車事業の強化に乗り出した。その後、自動車大手「吉利控股集団(Geely Group)」がスマホ市場に参入することを発表し、大きな話題を呼んだ。しかし、NIOのスマホ事業参入計画は、シャオミが自動車事業強化を発表する以前から進んでいたとみられる。ある関係者は「NIOは1年余り前にファーウェイのサブブランド『Honor(栄耀)』の責任者と接触したが、物別れに終わったようだ」と述べている。

これらの情報について36KrがNIOに問い合わせると「現時点で公表できる情報はない。進展があれば発表する」との回答だった。

自動運転やEVの市場は大きな拡大が見込まれる。さらなる飛躍を目指すスマホメーカーが自動車分野に進出するのは理解できる。一方、すでにレッドオーシャンと化したスマホ市場に自動車メーカーがわざわざ参入するというのは、業界の常識に反している。

しかし、自動車業界関係者は、システムやチップ、製造能力などが整っていれば、スマホ事業参入は難しくないと指摘する。NIOはチップやOSなど基盤技術の開発を進めており、十分な設計技術やサプライチェーン管理、製造能力を有しているほか、販売網も全国に広げている。しかもブランド力があるため、スマホ事業参入のハードルは比較的低いとみられる。

吉利やNIOがスマホ市場に進出したことに、スマホ大手も警戒を強めている。情報筋の話では、シャオミは今月中旬から、専門性の高い中核人材との競業避止義務契約を進めており、規定の競合先にはNIOや「小鵬汽車(Xpeng Motors)」「理想汽車(Li Auto)」など新興自動車メーカーが含まれているという。

事業分野が重なれば、人材の争奪戦は避けられない。吉利集団はスマホ事業を立ち上げた際、「数倍の報酬を提示してシャオミから人材を引き抜いていった」とシャオミ関係者は語る。

難しいのは、リーダーのエネルギーや会社のリソースを配分するバランスだ。シャオミの雷軍CEOは自動車事業への参入を発表した後、スマホ事業の多くを盧偉冰総裁に任せ、自らは自動車事業に専念することとした。NIOが直面している問題も同様で、競争の激化するEV開発やマーケティングと、さらに過酷な戦いが予想されるスマホ事業をいかに両立させるかを考えなければならない。

NIOのスマホ市場参入について、NIO車オーナーからは「まずはクルマをきっちり作ってほしい」との声も上がっている。スマホメーカーの元幹部も「(NIOのスマホ事業は)難航すると思う」と辛口だ。果たしてNIOは業界の常識を覆すことができるだろうか。
(翻訳・畠中裕子)

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