電力網や橋梁を巡回点検するドローン、DJIが発売。普及の鍵は操縦士育成

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ドローン世界最大手の「DJI(大疆創新)」は今年1月、救援や巡回点検向けの「Matrice 4E」と測量やマッピング向けの「Matrice 4T」という2種類の産業用ドローンを発売した。

電力網や橋梁の巡回点検、測量・マッピングなどの現場では、複雑な作業を人が担う従来のやり方に多くの課題があった。例えば電力網の点検では、作業員が高さ100メートルもある鉄塔に何度も登り、鉄塔のほかにも電線や碍子、避雷針など多くの箇所を見て回る。このような人による作業は効率が低いうえ、高所作業や高圧線による事故のリスクもある。

巡回点検の分野ではここ数年、ドローンや画像モニタリング技術の導入が徐々に進んでいる。放射温度計などの点検ツールを搭載したドローンを飛ばして、担当者がリモートで超高圧送電線設備の状態をリアルタイムに確認できるようになった。DJIのMatrice 4シリーズは、高い精度と効率が求められるこうした分野での活用を想定した設計となっている。

Matrice 4シリーズが金具を撮影する(画像は企業提供)

技術の集大成

製品の特徴を見ると、Matrice 4Tは用途が幅広く、従来の製品よりもスマート化が進んだうえに複雑な環境での適応性や安全性などが向上した。

Matrice 4Eは高精度の測量やマッピング向けに開発され、ターゲットに近づきながら自律的な近接撮影ができる。高精度測位や映像伝送が可能な多機能ステーション「D-RTK 3」が搭載されており、これが中継機の役割を果たすことで複雑な地形でも信号が途切れることはない。加えて測位の精度が、従来のメートル級からセンチメートル級に大きく向上した。

橋梁や鉄塔などの巡回点検では一般的な撮影と異なり、ボルトなどの小さなターゲットを空中の離れた所から確認するため、ズーム倍率の高いカメラやブレの少ない映像が必要になる。

Matrice 4シリーズは広角カメラに加え、焦点距離がその3倍の中望遠カメラ、同じく7倍の望遠カメラが搭載されたほか、最大112倍のハイブリッドズーム機能を備えており、最長で250メートル先のナンバープレートもクリアに撮影できる。また、測定可能な距離が前世代の製品に比べ2倍に延びたレーザー距離計を使えば、ターゲットまでの距離をリアルタイムに確認できる。

DJIはこれまでに、巡回点検などのトラブル発生時にもクリアでブレの少ない映像を表示するため、光学30倍ズームの「Zenmuse Z30」やハイブリッドズームの「Zenmuse H20」といったカメラをリリースしてきた。Matrice 4シリーズには、ズーム時にターゲットを正確に捉える機能や電子式映像ブレ補正(EIS)、視界が悪い状況でもクリアな映像を撮る機能などが搭載されている。さらに、夜間や低照度環境の撮影機能も強化され、街明かりの中でも安定した飛行が可能となった。

建物の外壁を点検する

さらに、人工知能(AI)技術の導入も積極的に進めている。DJIのドローンには、飛行中に遠くから人や車両、船舶などのターゲットを検出し、それを自動的に追跡する機能が搭載されている。Matrice 4シリーズではさらに、遠くにある小さなターゲットを検出する機能が強化され、映像レベルで最大128個、画像レベルで最大1000個のターゲットを検出できる。

Matrice 4シリーズは、DJIが独自に開発したクラウドプラットフォーム「FlightHub 2」に対応している。ユーザーは、ドローンの自動飛行中にリアルタイムでタスクの状況を確認すると共に、映像データをプラットフォームに送り、クラウドで一元的に管理や処理をすることで、データ整理の手間や紛失のリスクを減らせる。

DJIの産業活用ソリューションエンジニア・崔宇氏は、ドローン操縦士が電力網の巡回点検をスムーズにこなせるようになるには、少なくとも1~2年かかる見込みで、ドローンの普及を加速させるためには、ドローン操縦士の育成が重要なポイントになるとの見解を示した。機能のスマート化と自動化が進んだMatrice 4シリーズなら、操縦士の操作スキルに対する依存度が減って、作業の効率が向上すると同時に使用のハードルも下がるため、産業用ドローンの普及を後押しできるという。

AI時代で新たな仕事が生む、現職ドローン操縦士に直撃

(翻訳・大谷晶洋)

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